198章Side:大樹④ 君に絶対に超えさせない一線
「話には聞いておったが、君が芽依ちゃん…?」
「…そう、私は芽依。そして、エイプリル。バドスン・アータスのヒューマン・デュラハンよ。」
大樹は改めて眼前にいるエイプリルを見直した。
「芽、芽依…?本当に芽依なのか…?姿が…?何で…?」
深也の父親も容姿が変わった芽依を見て驚いていた。
「そこをどいて、大樹さん!私はそいつを消して過去と決別するの!」
「何を言っておるんじゃ、芽依ちゃん!?この人は君のお父さんなんじゃろう!?」
「…そうだよ!正気を取り戻して、芽依ちゃん!バドスン・アータスの呪縛に囚われちゃ駄目だよ!」
潤奈も深也の父親の怪我を治癒し終え、立ち上がって芽依を見た。
「あなたたち、二人にはわからない…!この人のせいで私と深也は…!」
銃口を向ける芽依の前に大樹が両手を横に出して立ち塞がった。
「芽依ちゃんの言う通りじゃ!俺らは深也や君の家の家庭事情は知らんぞい…!でも、君が親に手を掛けるのだけは絶対に阻止してみせるぞい!君みたいな良い子に絶対そんな事はさせんぞいっ!」
「くっ…!」
エイプリルはレーザー銃を握り直した。
「…聞いてくれ、芽依ちゃん。俺は両親を事故で亡くしておるんじゃ…。」
「えっ…?」
エイプリルはレーザー銃を少し下ろした。
「今は爺ちゃんと一緒に楽しく暮らしておるが、それでも父ちゃん母ちゃんを恋しく思う時もある…!君はそんな悲しい気持ちを自分から味わいに行こうと言うんかっ!?」
「…それは…。」
「…芽依ちゃん、私もね、バドスン・アータスにお父さんを殺されたの…。」
エイプリルは大樹の横に立った潤奈を見る。
「…それだけじゃない…!私は故郷を採掘星に変えられ、道人のお父さん…豪の仲間たち、家族同然の人たちまでバドスン・アータスに奪われた…!私、こんな悲しい気持ちを…芽依ちゃんに同じ目に遭って欲しくないの…!」
「あっ…!」
エイプリルは潤奈の流す涙を見てレーザー銃を持つ右手を震わせる。
「…お願い、芽依ちゃん…!バドスン・アータスに振り回されないで…!親殺しなんて、絶対にしないで…!」
「わ、私は振り回されてなんかいない!これは私の強い意思なの…!あなたたちの両親は良い人だったかもしれない!でも、この人は私の医療費を後回しにしようとした…!そんな奴にぃっ…!」
「…! 芽依、すまない!」
深也の父親は大樹と潤奈の前に立った。
「今の話…知っているという事はお前は間違いなく芽依なんだな…?すまない、芽依…!俺は今までどうにかしていたんだ…!」
「うっ…!?」
「母さんを…倫子を失った哀しみで変な事ばかりしてしまって…!深也にも芽依にも迷惑を掛けてしまった…!お前の誕生日も台無しにしてしまった…!俺は父親失格だ…!」
深也の父親は地面に膝をつき、両拳を地面に叩きつけた。
「…そう、そうだよ!私たち家族はお母さんを失ってからおかしくなった…!もう元には戻れないと思ってた…!でも、違う!私は生まれ変わった!私はもう病弱な芽依じゃない!自分の足で色んな場所を歩く事ができる新しい芽依なの!あははっ、そうだよ!あははっ…!」
エイプリルは深也の父親に向かってレーザー銃を撃った。
「させないさぁっ!」
カサエルが三度笠を展開し、レーザーを弾いて見せた。
「そうだよねぇっ?こんな素敵な身体をくれたバドスン・アータスには感謝しかない…!パートナーのグレリースとだって出会えた…!そうなれたのも何だかんだで狂った家族関係には感謝しないとだよねぇっ…!あははっ…!」
「…感謝じゃと?それなら、芽依ちゃん…。お前さん、何で今泣いておるんじゃ?」
「…えっ…?」
エイプリルは頬に涙を流しながら笑っていた。
エイプリルは震えた左手で涙に触れた。
「そこまでです。これ以上、エイプリルの心を揺るがせる事は私が許さない。」
グレリースがエイプリルの前に立った。
「…揺るがせてるのはどっちじゃ、全く…。潤奈ちゃん、頼みがある。この闘い、俺とカサエルに任せてくれんか?」
大樹は真剣な眼差しで潤奈を見た。潤奈も涙を拭き、大樹を見た。
「俺とカサエルが今から挑むのは芽依ちゃんじゃない。今のバドスン・アータスの在り方そのものじゃ…!偽りの幸せに囚われた芽依ちゃんの心に俺らは訴え掛けてみせる…!」
「…わかった。深也のお父さんは私とフォンフェルに任せて。」
「すまんの…!恩に切るぞい、潤奈ちゃん!」
大樹はデバイスを手に持ち、カサエルと共にグレリースと面と向かった。
「…さぁ、深也のお父さん。ここは危ないですから、避難を…。」
フォンフェルは深也の父親を抱え、潤奈と共に隠れる。
「芽依!すまない、芽依…!」
深也の父親はずっとそう言い続けていた。
「…そこをどいて、大樹さん。私の邪魔をしないで。」
「いいや、そういう訳にはいかないぞい!俺とカサエルは君が元の優しい芽依ちゃんに戻るまで何度でも君の前に立ち塞がってみせるぞい!」
「わからず屋だね…。しょうがない、カウンター・ディサイド・デュラハンの力でねじ伏せてあげるから…!」
エイプリルはカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。
「ディサイドヘッド、シェルターエンプレス。」
グレリースはSEグレリースに姿を変え、周りに色んな形の貝殻を浮遊させる。
「行くぞい、カサエル!狸!芽依ちゃんに本当の『夢』を見せてやるぞい!」
大樹がそう言うと『皆』=狸夢操士デバイスが出現し、左手に持つ。
「ビーストデバイス…合体じゃ…!」
スマホと合体させたデバイスから更に『皆』=狸夢操士デバイスを合体させ、ディサイドビーストデバイスへと姿を変えた。
「ビーストヘッド・エヴォリューション…!」
『ビーストヘッド、承認。狸夢操士、皆極上達師超有の装。』
ディサイドビーストデバイスを前に出すと一筋の光が掃射され、前にいるカサエルの背中に当たる。
カサエルは空高く飛び、カサエルの上空に狸夢操士がドロンと煙を立てて姿を現す。
「皆極上達師超有=狸夢操士、変化!」
狸夢操士がそう叫ぶとカサエルと合体を開始し、『皆』=狸夢操士カサエルに姿を変えた。
「さぁっ!」
『皆』=狸夢操士カサエルは手に持った傘と周りに三度傘を三つ宙に展開した。
闘いを始める前から貝殻と三度笠がぶつかり合う。
「待ってろ、深也…!俺が必ず、芽依ちゃんを元に戻して見せるぞい!」
大樹は今日本にいない深也に誓いを立て、『皆』=狸夢操士カサエルと共に身構えた。




