25章 さっきぶりの戦い
海音が人魚騎士伝説の末裔と聞いた道人たちは海音の住む神殿へ向かう事になった。大人数で押しかける事になるのだが、海音は
「まぁ!構いませんよ?今日はお客様がいっぱいで嬉しいですね!」
と歓迎してくれた。商店街の方には虎城と潤奈が残る事になった。フォンフェルが捜索の最中に発作を起こし、苦しそうに帰ってきたので心配し、潤奈は側にいる事にした。
「…犯人は現場に戻るって聞いた事がある。だから私は残るね。」
どこでそんな言葉覚えたんだ、という言葉を潤奈は使い、道人たちに手を振って見送った。道人、愛歌、深也、博士の四人がジークヴァルとトワマリーのボディを積んだトラックで神殿へ向かう。
「わぁ〜っ…!普段見慣れた風景がすごい勢いで流れていきます…!風も気持ちぃ〜っ…!」
海音はあまり車には乗った事がないみたいでかなり浮かれていた。
「お、おい…。あんまりトラックのサイドウインドウから上半身を出すと危ねぇぞ…!」
海音の顔の横に海音の尻が近いので道人と共に照れていた。
「あ、ごめんなさい、深也。…あ、見て下さい、深也!カモメさんです!」
「聞いてねぇな、おい!」
運転席にいる博士と愛歌はその光景を見て笑った。
「愉快なお嬢さんじゃな。」
「うん、自由だね。」
「はしゃいだら少しお腹が空きました。」
買い物袋から味付け海苔の容器を取り出し、一つ食べた。
「あ、深也もいります?」
「いや、ご飯と一緒に食べてぇよ!」
「あたし、貰おうかな。」
「わしも。」
「あはは、昔お菓子代わりに食べた事あるな、味付け海苔だけ…。」
みんなで味付け海苔を一緒に食べた。深也もなんだかんだ腕を組んで外を見ながら味付け海苔を咥えた。そうこうしている内に神殿に到着し、トラックを海音の指示する場所に止めた。
「到着です!ようこそ、我が神殿へ!」
海音は先にトラックから降り、両手を上に挙げる。道人たちも降りた。神殿は白い石でできており、大体三階建ての家くらいの大きさだった。
「わぁ〜っ…!素敵〜…っ!」
「うむ…。この神殿、変わった石でできとるのぅ…。」
「と、言うと?」
道人は博士に訊ねる。
「この石、経年劣化も見られんし、汚れ一つない…。かなり頑丈なようじゃが…。」
「はい。おかげで掃除しなくて済むんですよ。でも、私掃除好きだから結局するんですけどね。」
「この神殿は一体何時からあるものなんじゃ?」
「う〜ん、大体…西暦九百年くらいですかね?」
「いや、平安時代かよ!」
深也がすかさず突っ込んだ。もう海音のツッコミ役みたいになってきたな、深也はと道人は思った。
「平安時代にこの石造りの神殿じゃと…?どういう事じゃ…?」
「ねぇ!あれ、見て!」
愛歌は神殿の入り口の石像を指差した。トライデントを持ち、ヒレのついた魚人の首無し騎士が置かれている。
「あれも九百年くらいからありますね。」
「何じゃと?」
「十糸姫の時は江戸時代だったけど、今度は平安時代にデュラハンか…。うーん…?」
道人と博士は一緒に考え込んだ。
「立ち話もなんですし、中へどうぞ。美味しい麦茶がありますよ。」
「俺mo、moらiたi、麦茶ぁーっ!」
突然まだ耳に新しいダミ声が聞こえてきて驚き、辺りを見回す道人たち。
「こっちdamon!」
道人たちの後ろにディフェンスダイヤトウが着地した。バンペイはダイヤトウに抱えられていて、着地してすぐ降りた。
「さっきぶり!」
「あ、あんた、何でここに!?」
「私が連れてきたのです。」
バンペイの隣にマーシャルと見た事のない胸に髑髏がついた騎士が出現した。
「さぁ、バンペイ。あのトラックの中にニつ、他にニつラックシルベがあります。それを私に渡せば一生遊んで暮らせるお金を差し上げますよ。」
「わかったmon!さっきの戦いの続きdamon!」
バンペイは周りに矢尻をばら撒いて浮かせ、自分の身を守る。マーシャルは道人たちを見て誰かを捜してきょろきょろした。
「何?潤奈なら今はいないよ。」
道人がマーシャルの様子を見て答えた。
「べ、別にあんな女、気にしてませんよ。」
マーシャルは道人から目を背ける。
「よぉ、マーシャル。この間はどーも。俺はこの通り、生きてたぜ?」
深也は親指で自分を指差す。
「…はて?どなたでしたか?」
「はっはっはっ!…潰す!」
深也はガンを飛ばす。マーシャルは宙に浮き、腕を組んだ。
「…ニンゲン、私はシチゴウセンの一人、ディアス。一つ問いたい、潤奈とは誰だ?」
髑髏の騎士が道人に突然問いかけた。
「な、何?」
「ディアス様、今はそんな事どうでもいいでしょう。」
「…そうか。」
ディアスは宙に浮き、去ろうとする。
「ディアス様、どちらへ?」
「何、用事を思い出した。先に帰らせてもらうよ。スランもやる気がないようだし、彼女を連れて帰る役目は私が持とう。それに私はデストロイ・デュラハンが苦手でね。二体もいると気が狂いそうになる。」
「ディアス様!」
ディアスは飛んで去っていった。
「何だったんだ、あいつ…?何しに…?」
道人は突然現れては去っていったディアスが気になった。
「何さっきから面倒臭iyaり取りをyaってnda!もう我慢しなimonね!」
「奇遇ネ、私もヨ!」
ヌンチャクトワマリーが飛んできてディフェンスダイヤトウの顔面に飛び蹴りを喰らわした。地響きを起こして倒れるディフェンスダイヤトウ。
「道人、早くトラックに行ってジークヴァルを!」
道人がマーシャルやディアスと会話している最中に愛歌はトラックに行ってトワマリーを起動していたようだ。道人もトラックへ走る。博士も深也と海音と共に安全な神殿内に入り、商店街にいる虎城に連絡を取る。
「よし、ジークヴァル!インストール!」
ジークヴァルが起動し、外に出る。道人の首にネックレスがつき、右手にもガントレットが装着され、共に並び立つ。
「ジークヴァル、奴は固い!ドリルヘッドで行こう!状況によってはハーライムを呼び出す!」
「おっ、新顔だな!よし!」
「ヘッドチェンジ!ドリル!」
『あなたはどんなものでも掘りますか?』
「…人の恥ずかしい過去とかは掘り返さないかな?」
『優しい』
ジークヴァルに額にドリルリーゼントがついた頭が装着され、右手にドリルアームがついた。ディフェンスダイヤトウはまたダイヤトウスパイクシールドを両手に持ち、トゲを伸ばした。ドリルジークヴァルは右からドリルを当て、ヌンチャクトワマリー左からは何度もヌンチャクを当てる。
「無daよ、無da!傷一つつかなimon!」
「それはどうかな?ふん!」
道人がガントレットでジークヴァルの右腕を掴み、一緒に押した。
「これでどうだぁーっ!!」
「ははっ!馬鹿め、そnな単純な方法でダイヤトウスパイクシールドに傷は…。」
ダイヤトウスパイクシールドにヒビが入り出した。
「つiた!?単純すげぇっ!?」
「シンプルイズベストじゃよ!」
遠くで博士がサムズアップした。ダイヤトウスパイクシールドのトゲが地面に落ち始める。道人はジークヴァルの右腕から離れた。
「今、粉砕!」
ジークヴァルはドリルリーゼントを回転させ、ダイヤトウスパイクシールドに頭突きをした。シールドは崩れ去り、右がガラ空きになる。
「もらった!」
ジークヴァルはディフェンスダイヤトウの右腹にドリルを当てようとした瞬間、海の中から触手が突然出現した。ジークヴァルは触手にムチのように叩かれ、吹っ飛んで地面に倒れた。
「ジークヴァル!?何だ、海から!?」
「何やってんだぁっ、バンペイ!だらしねぇっ!出る予定はなかったのによぉっ!」
海の中から新たなデストロイ・デュラハンが出現し、声の主も姿を現した。ロングコートを羽織った白髪の男。
「俺がバンペイの依頼主、木倉下進!そして、相棒のディフィカルトクラーケン!」
ディフィカルトクラーケンは背中に機械化されたクラーケンをつけたデストロイ・デュラハン。
「あれは…!?何で…!?」
海音が青ざめて驚き、博士と深也が海音を見た。
「どうした、海音!?」
「あれはかつて人魚騎士が退治したクラーケンです!」
「何じゃと!?」
「あの背中のクラーケン…。間違いありません!もう朽ちて、化石になって海底に沈んでいるはずです!」
「ふふっ、驚きましたか?」
宙に浮かんでいるマーシャルが喋る。
「あれはディアス様が見つけ出し、私がデストロイ・デュラハンに改造したものです。なかなか良い復元具合でしょう?」
「隙あり!」
ディフィカルトクラーケンが触手を伸ばし、愛歌とトワマリーを捕らえた。
「きゃあっ!?」
「愛歌!うわッ!?」
「しまった!?愛歌、トワマリー!」
道人は右手を愛歌に向かって伸ばした。
「さぁて、この人質をどうしてやろうかぁっ?ケケッ!」




