198章Side:大樹② アディション・アクション
「私はアディション・デュラハンのバイパーウイング。起動しました。」
「私はアディション・デュラハンのフィールドトラッカー。起動しました。」
「何か業務的な態度だぞい。」
アディション・デュラハンの二体は起動はしたが、その場で直立したままだった。
「まだAIの育成は十分じゃないんでしょ?なら、仕方ないんじゃない?」
「…うん。生まれたばかりの子供みたいなものだしね。」
愛歌と潤奈の発言を聞いて大樹はそれもそうか、と納得した。
「流咲君、大神君、それぞれ自己紹介を頼めるか?」
博士が通信越しに二人に指示を送った。
「わかったわ。私は大神天音。あなたのパートナーを主に担当するわ。よろしくね?」
「はい、大神隊員。あなたのような美しい方がパートナーで喜ばしいです。よろしくお願いします。」
「やだ…!?何か、礼儀正しくて可愛い…!」
大神は両手を頬に当てて頬を染めた。大神は育成ゲーム好きなので愛着が湧きやすいのである。
「あの、フィールドトラッカー?私は流咲光。あなたのパートナー役を任されました。よろしくね?」
「はい、流咲隊員。今日も一日盛り上げて参りましょう。よろしくお願いします。」
「前言撤回するぞい。現時点で二体共、個性がちゃんとあるぞい。」
二体の挨拶の違いを見て大樹は認識を改めた。
「うむ、大神君や流咲君と会話した事で早くもAIが学習を初めておる。良い傾向じゃな。それじゃあ、早速テスト運用じゃ。デュラハンたち、出番じゃぞ。」
博士がそう言うと岩場フィールドの扉が開き、ルレンデス、ディアス、ダーバラが姿を見せた。
「あ、ダーバラだ。」
「ハロー、愛歌!昨日は情熱的な夜だったねぇ〜っ!ちゃんと眠れたかい?」
「ちょっ!?何言ってくれちゃってんの!?」
愛歌は頬を染めて慌て出す。潤奈も一緒に頬を染めている。
「一体何の話ぞい?」
「色々あったのよ、大樹ん…。」
グルーナが手を振るとルレンデスも手をふり返した。
「ところで、何であの三人が出てきたんじゃ?」
「アディション・デュラハンの運用テストを手伝って欲しいと頼まれたのだ。」
大樹の疑問にディアスが答えた。
「うむ。では、大神君。早速バイパーウイングの飛行テストじゃ。」
「OK、博士!さぁ、私のバイウイちゃん、思いっ切り飛び回っちゃってぇっ!」
「はい、バイウイ。これより、飛行態勢に入ります。」
「あだ名をすぐに受け入れおったぞい…。」
大神はバイパーウイングの可愛さに恍惚な表情をし、両手を頬に当てて首を何度も振っていた。
バイパーウイングはエンジンを起動し、すぐに宙に浮いた。
「…すごい。ちゃんと水の力で浮遊してるんだ…。」
潤奈の言葉を聞いた後、博士がバイパーウイングのエンジン部分をアップで映した。一見、青い炎のように見えるが、よく見ると水飛沫のようなものが飛び散っていた。
バイパーウイングは周辺を舞いながら飛んでみせた。
「バイパーウイングは見た目でもわかるように飛行形態にも変形できる。大神、やってみせてくれ。」
「はい!バイウイちゃん、変形よ!」
「了解です。」
バイパーウイングは瞬時に変形し、人型形態の時よりも高速で飛び回った。
「えっ、すごっ!?一瞬で変形しちゃった!?」
「ふふん、そうじゃろう、愛歌君?一秒も掛からない変形機構じゃ。なかなか苦労したわい。」
博士は腕を組んで鼻を伸ばした。
「どう見る、ダーバラ?」
「初めての飛行だからか、まだ飛び方がぎこちないねぇ〜っ。どこか恐れながら飛んでる感じさね。」
ディアスとダーバラがバイパーウイングの飛行を見てコメントした。
「私も同意見だ。恐らく、エネルギー切れによる墜落を恐れている…。かと言って、自身のエネルギーを節約しようとはしておらず、荒削りな飛び方をしているな。」
「それと右側にやや傾いて飛んでいる感じだねぇっ。早くも飛び方に癖があるんじゃないのかい?」
「け、結構厳しめの辛口な評価だぞい…。」
元バドスン・アータスのシチゴウセンなだけあって、ディアスとダーバラは兵士の育成には慣れてそうだった。
「いや、良いコメントじゃ。実に参考になるわい。それじゃあ、フィールドトラッカーにも指示を出してくれ、流咲君。」
「はい、わかりました!フィールドトラッカー、まずは徒歩!」
フィールドトラッカーは流咲の言う通りにし、重たい身体でズシズシと歩いてみせた。
「…さすがに二門の大砲やコンテナを背負ってるだけあって重量感を感じさせる歩行の仕方だね。」
「でも、いくら重装甲とは言っても動きが遅くない?私らのデュラハンたちは俊敏な動きをするデュラハンが多いから、足並みを揃えて行動するのが大変そうだわ。」
潤奈とグルーナがコメントした。確かにあれでは蜂の巣にされそうだと大樹も思った。
「一応、ホバー機能もついておるんじゃが、それでも巨体じゃからあまり早くは移動できんのじゃ。制服バリアを参考にしたバリア機能も有しておる。」
「なるほど、コテコテの盾役って訳ね。」
「それだけではないぞ、愛歌君?流咲君、変形指示をしてみてくれ。」
「わかりました!フィールドトラッカー、変形お願いします!」
「了解、流咲隊員。これより変形を開始します。」
フィールドトラッカーはバイパーウイングと同じく、一瞬で消防車に変形して走行した。
「おぉっ、こっちも一瞬で消防車に!かっこいいぞい!」
「そうじゃろう、そうじゃろう。こっちも苦労したわい!」
大樹の喜びように釣られて博士も共に喜んでいた。
「…うん。岩場フィールドという足場の悪い場所でも問題なく、力強く走行できてるね。」
「その通りじゃ、潤奈君。フィールドトラッカーはタイヤに水を纏わせて走っておるんじゃ。人型よりも車両モードの方が機動性がある訳じゃな。」
「博士ぇ〜っ、用意できたよぉ〜っ?」
ルレンデスが遠くで手を振っていた。大きな布を地面に張り、火を点けていた。
「よし、流咲君。大神君。消火作業に入ってくれ。今から通信を送る。実際の戦場では君たちはオペレーターの仕事をこなしながら、アディション・デュラハンにも指示をする事になる。その練習だ。」
「何だか大変そうじゃぞい。」
「パートナーはどうしてもオペレーターじゃないと駄目なんですか?」
大樹と愛歌が博士に聞いてみた。
「うむ、我らデュラハン・ガードナーは人手不足じゃからな…。その中でも虎城君や大神君、流咲君はオペレーターとしての広い視点を持ち合わせておる。わしは彼女たちの腕を信じておるし、適任じゃと思うよ。」
「嬉しい事言ってくれるじゃないの、博士!」
「私、いつも愛歌さんたちの戦いを見てて正直歯痒かったんです…。戦いを子供たちに任せて、私たちは安全なところで避難誘導や被害を抑えるための指示をする…。愛歌さんたちが危険な目に遭っても、助けに行ってあげられない…。けど、今度からは違います。この子たち、アディション・デュラハンなら愛歌さんたちを助けに行く事ができる!私も力になれるんだって!」
「流咲さん…。」
流咲の本音を聞けて大樹たちは心を打たれた。
「流咲隊員。素晴らしい心掛けです。私のAIに火が灯ったような不思議な感覚です。あなたの力になれて、私は誇りに思う。一緒に愛歌さんたちを守りましょう。」
「…! フィールドトラッカー…!はい、頑張りましょう!」
「すごい!流咲さんの想いがフィールドトラッカーに伝わったんだ…!」
「うむ、良い傾向じゃ…!では、消火作業開始じゃ!」
流咲と大神はオペレーター作業をしながらアディション・デュラハンに指示を送るという高等テクニックを苦戦しながらもしてみせた。
「フィールドトラッカー、これより消火作業に入ります。」
フィールドトラッカーはそう言うと両肩と胸から勢いのある水流を発射した。
「バイパーウイング、これより消火弾を投下します。」
飛行形態のバイパーウイングも空から消火弾を投下し、ルレンデスが用意した火の手をあっという間に消火してみせた。
「ねぇ、博士。アディション・デュラハンって水が動力なのよね?バイパーウイングはもう結構飛行してるし、フィールドトラッカーは今のでかなり水を使っちゃったけど…。」
「…確かに。補給手段はあるんですか?」
「うむ。良い着眼点じゃ、愛歌君、潤奈君。そこの所も抜かりはないぞ。二人共、指示を。」
大神と流咲は共に頷いた。
「バイウイちゃん、補給ヘッドの使用を承認!」
「フィールドトラッカーも同じく、補給ヘッドを承認します!」
「「了解しました。」」
バイパーウイングとフィールドトラッカーは互いに収納していた新たな頭を取り出した。頭を付け替え、動力である水を補給した。
「これはまた面白いデザインじゃない、博士!頭が補給ユニットになってる訳ね!」
グルーナが指を鳴らしてアディション・デュラハンのデザインを誉めた。
「うむ、キャルベンの寄生ヘッドやヤジリウスの頭部ユニットを参考にして作ったんじゃ。見た目は小さいがかなりの量の水を圧縮しておるぞ?普段は二つ持たせておるが、専用の補給ドローンで更なる補給ヘッドを与える事も可能じゃ。」
大樹たちは博士の科学力の凄さに改めて感心した。
「すごいじゃん、博士!早く道人たちにも見せてあげたいな、アディション・デュラハン!」
愛歌がテンションを上げる中、大樹たちも新たな心強い仲間、アディション・デュラハンに感激した。
「さぁて、最後のメインディッシュ!合体テストの開始じゃぁっ!」
博士もテンションを上げ、ガラス越しにアディション・デュラハン二体を指差した。




