198章Side:大樹① 完成!アディション・デュラハン
深也たちがイギリスまで試練を受けに行った後、大樹たちはまだ司令室にいた。
「いいのぉっ、道人たち…。俺もイギリスに行きたかったぞい…。真輝さんとももっと話したかったし、デュエル・デュラハンでバトりたかったぞい。」
「もう、大樹君。別に道人たちは観光に行った訳じゃないのよ?」
「…うん。日帰りだって言うし、海の上だしね…。観光している余裕はないんじゃないかな?」
大樹の言葉に対し、愛歌と潤奈が反論して来た。
「グルーナさんはイギリスに行った事あるんか?」
「まぁ、何度か仕事でね。まるで絵本の中に入ったかのような、そんなインスピレーションを掻き立てられるようなプレイスだったわね。」
「そうなんかぁ〜っ…。」
大樹たちが話していると急に通信音が鳴り響いた。流咲が誰からか確認した。
「司れぇ〜っ、また尾凝長官からですぅ〜っ…!」
御頭防衛隊の尾凝長官からの連絡とわかったら、司令はまたか…といった感じで肩を落とした。
「ふぅっ…わかった、繋いでくれ。」
司令はネクタイを締め直し、スクリーンの方を向いた。尾凝長官が映った。
「尾凝長官、何度も言っているが、横島博士はまだ…。」
「あぁ、その件なのだが…もう横島博士は必要なくなった。彼はクビだ。」
「は?」
尾凝長官の急な横島博士へのクビ宣言で司令たちは思わず呆気に取られた。
「待って欲しい、尾凝長官。横島博士を捕らえる形にしているのはこちらであって…。」
「いや、そういった経緯ではない。新たな博士を雇う事になってな。その博士が横島博士より優秀な方でなぁっ。そちらを採用する事にしたのだ。なので、横島博士はそちらの好きにしたまえ。ではな。」
そう言うと尾凝長官は一方的に通信を切った。
「な、何なのだ、一体…?」
「いきなりクビとか勝手な奴だぞい。」
「…うん。横島博士は確かに何だか、嫌な感じな博士だったけど…ひどいね、今の仕打ちは…。」
この中では横島博士と面識がある潤奈が寂しそうな顔をした。
「一体誰なんでしょうね、その新しい博士って?」
流咲がそう言うと大神と虎城も首を傾げた。
「しつこくてうるさい通信が来なくなるのは良いのだが、今度は横島博士を納得させるのが面倒そうだな…。」
司令はやれやれ、とため息をついた。その後、また通信が入った。今度は博士からの通信ですぐにスクリーンに姿を見せた。
「大樹君たち、暇をしておるのなら実験エリアに来てくれないか?留守番組の君たちに良いものを見せてあげようと思ってな。」
「良いもの?なんじゃろ?」
「わからないさぁ。」
「ー食べ物かなぁっ?」
博士の言葉が気になったのか、デバイスからカサエルが声を出し、狸が大樹の右肩に姿を現す。
「何、ちょっとした運用テストなんじゃ。君たちD・D FORCEに意見を求めたくての。」
「…運用テスト…。あ、ひょっとして…。」
「私もわかったわ、博士?」
潤奈とグルーナは何か気がついたみたいだが、博士は人差し指を口に当ててみせた。
「おっと、潤奈君、グルーナ君。察しはいいが、まだ秘密じゃぞ?」
潤奈は頷き、博士と同じく人差し指を口に当てた。グルーナもやれやれ、と両手を横に出した。
「う〜ん、大樹君たちはただでさえ勉学に遅れが出てるんですけどねぇ〜っ…。」
「すまんすまん、流咲君。そんなに時間は掛らんから。の?」
博士は両手を合わせて謝罪し、流咲は腕を組んで仕方ないか、と納得したようだった。
「それじゃあ、待っておるぞ、みんな。」
そう言うと博士は手を振って通信を切った。
「ねね、潤奈?何なの?気になるからさ、あたしにだけ教えてよ?」
「…だめ?」
潤奈は愛歌に向かってまた人差し指を口に当ててみせた。
大樹たちは司令室を後にし、モノレールで実験エリアへと向かった。
普段通りにボディチェックなどの厳しいセキュリティをクリアしていく。
「よく来たの、みんな。待っておったぞ。」
博士が通路に立っていて右手を振って来た。
「博士、何なの?あたしたちに見せたいものって。」
「そう急くでないわい。ま、この部屋に入るんじゃ。」
博士の言う通りにし、個室に入った。
「あ、ここって…。」
「どうしたんじゃい、愛歌ちゃん?」
愛歌は今入った場所に見覚えがあるようだったので大樹は気にした。
「あたしとトワマリーがさ、ライガと交戦して負けちゃって…。危なかった時にね。道人が壁を壊してあたしたちを助けに来てくれた場所なんだ。」
大樹は愛歌と一緒にガラスの先を見るとジークヴァルとライガ、最近だとフォンフェルとレイドルクが闘った岩場フィールドが広がっていた。
「壁を破壊?随分ワイルドだったのね、道とん。」
「…それだけ愛歌が危ない状況だったんだよ。道人らしいね…。」
「ん?よく見るとフィールドに誰かおるぞい?」
大樹の言葉を聞いてみんなガラスの先を見た。そこには二体のデュラハンが佇んでいた。
「…やっぱり!博士、完成したんですね?」
「そうじゃ、潤奈君。以前に君とグルーナ君に紹介したエンチャント・アクアジェネレーターで動く新たなデュラハン、アディション・デュラハンじゃ。本当は前から完成しておったんじゃが、こう忙しくてはな…。なかなかテストの機会がなかったのじゃ。」
「確か、ヘッドを三回使い終わってしまった後も合体して擬似的にヘッドチェンジした状態になれるデュラハンだったわよね?」
「その通りじゃ!」
グルーナに対して博士はサムズアップした。
「何度も試行錯誤と構想、失敗を重ねてやり直した結果、最終的に空中戦と地上戦に特化したデザインと能力に落ち着いた。まず、飛行能力を有した一号機『バイパーウイング』じゃ。」
ジェット機のような姿をした白いデュラハン。やはり大きな羽が特徴的。パイロットのヘルメットのような頭を付け、胸の顔部分は飛行機の頭になっていた。
「それじゃあ、つまり…バイパーウイングと合体したら、空を飛べないデュラハンが空を飛べたりするんか?」
「Exactly!その通りじゃ、大樹君!続いて消防車型の二号機『フィールドトラッカー』じゃ。」
消防車のようなゴツい見た目の赤いデュラハン。消防士のヘルメットのような頭をつけ、背中にコンテナを背負い、胸の顔はキャノン砲のような顔になっている。両肩にもキャノン砲をつけていた。
「へぇっ、こっちは合体したら重装甲の火力特化になる感じかな?」
「またExactlyじゃ、愛歌君!今はこの二体だけじゃが、三号機以降も開発予定じゃ。それに潤奈君、フォンフェルの動力発作の改善もな。」
「やったじゃん!良かったね、潤奈!」
「…うん!」
愛歌と潤奈は嬉しい知らせを聞いて共に笑い合った。
「さすが博士、良いデザインしてるわ…。けど、あの子たちずっと立ったままだけど…。ひょっとして意思はないのかしら?」
グルーナの言う通り、アディション・デュラハンは棒立ちしたままだった。
「今は待機モードなんじゃよ。意思が全くないという訳じゃないぞ?AIは搭載されておる。しかし、学習のさせ方が如何せんシビアでの…。最初は皆の役に立つ兵器的なデュラハンの方向性じゃったが、それだと個人で戦力を持つ事になったりと色々と制約などが面倒での…。あくまで人と手を取り合う、身近で友好的なデュラハンの方向性へと変わった。兵器としての学習はあまりさせたくないのじゃよ。」
「確かにデザインの時点でジェット機と消防車を意識しているのがわかるわ。あくまでレスキュー用として造った訳ね。」
グルーナの発言に博士は頷いた。
「そして、この子たちの育成は私たちに任されたのです!」
いきなりパソコンの画面から流咲と大神が姿を見せて大樹たちは驚いた。
「りゅ、流咲さんと大神さんがアディション・デュラハンのパートナーなんか?」
「はい、大樹君!司令室からアディション・デュラハン専用の特殊な電波を送って私たちが指示します!」
「私、育成ゲーム専門で戦い系は苦手なんだけどね…。」
大神が自身なさげにコメントした。
「確か、大神先輩の妹さんがデュエル・デュラハンやってるんじゃありませんでしたっけ?」
「あぁ、華凛?確かに友達と遊んでるって話は聞いてるけど…。」
「姉妹仲を深めるチャンスじゃないですか。教えを乞うのもありですよ?」
「さっきも言ったが、アディション・デュラハンは戦いのない、明るい未来を想定して造ったデュラハンじゃ。そういうデュラハンには大神君のような戦いが苦手な者がパートナーの方がいいかもしれんの。」
「…わかりました、頑張ってみます!」
大神は流咲や博士の言葉を聞いて張り切ってみせた。
「よし、それじゃあ新たなる未来に向かって!アディション・デュラハン、スリープモードを解除じゃ!」
博士がそう言うとアディション・デュラハンの二体は目を光らせ、互いに見つめ合った。




