21章 海水浴
「さぁっ、海だぁぁぁぁぁ〜っ!!」
愛歌が叫んでいるようにそう、海である。道人たちは日曜日の今日、御頭街の南にある水縹星海岸に来ていた。
遊びに来た訳ではなく、もう一度言おう。遊びに来た訳ではなく。
この地域に謎の首無し騎士らしきものが出現したとの情報があったのと、この町に伝わる人魚騎士伝説を調べに来たのだ。
今朝、道人のスマホに司令から連絡が来てすぐに向かう事になった。
愛歌と潤奈、引率として博士と虎城が一緒に行く事になった。
大神と虎城はじゃんけんをし、勝った虎城が引率役に決まった。負けた大神はかなり悔しがっていたという。
道人たちは虎城の運転する車とディサイド・デュラハンを乗せたトラックで水縹星海岸までやって来た。
着いたら早速調査…とはならず、愛歌と虎城の強い要望により、任務の準備ができるまでなら海水浴を楽しんでもいいという話になった。
それを聞いた愛歌と虎城は潤奈を連れて速攻で水着を買いに行った。
潤奈は愛歌に色んな水着を着せ替えさせられたという。そして今、道人は愛歌たちと浜辺で遊んでいた。
「道人、こっちこっち!」
「おい、はしゃぐなよ、愛歌!」
道人と愛歌、潤奈は軽く海に入った。
「…冷たい。気温は暑いけど。」
「うん、五月でもこの辺りは暑いね…。」
道人は潤奈の麦わら帽子に黒いワンピース水着を見てドキッとした。
「おやおや、道人君?潤奈の水着にドキドキかな?」
愛歌は潤奈の両肩に手を乗せ、ジト目で道人を見た。
「ち、違うよ!」
「…違うんだ。」
「あ、いや、違わないよ! …あれ?」
「はっはっはっ…!道人、変なのー!」
道人たち三人は楽しそうに笑い合った。
「あたしの選んだ水着、ばっちりでしょ?短い時間で潤奈に似合う水着選ぶの苦労したんだから!」
「…うん、私も気に入ってる。」
「うん、似合ってるよ、潤奈。」
「あたしもあたしも!どうよ?あたしの水着?」
愛歌の水着は赤いドレス水着で愛歌のピンク髪と合わせて似合っている。
「…道人も良い感じだよ。」
「えっ?そう?」
道人は白いパーカーを羽織り、青いサーフパンツを履いている。
「道人の事だからてっきり、ブーメランパンツかと…。」
「なんだよ、それぇっ!」
「愛歌さん、潤奈さん!海に入る前に日焼け止め塗りましょ〜っ!」
虎城がビーチパラソルを用意して愛歌たちを呼んだ。虎城は花柄のビキニの水着を着ていた。
「はぁーい!行こ、潤奈!」
「…うん。」
愛歌は潤奈の右手を引っ張って虎城の元へ走った。
道人は愛歌と潤奈の日焼け止めを塗る所を見る訳にはいかず、座って海を眺めた。
「これが海か…。大きいな…。」
「お姉ちゃン、もっと近くで見たイ!」
「これ以上は私が錆びますよ、トワマリー。」
フォンフェルは両手にジークヴァルとトワマリーのデバイスを持って海を見せていた。
「ヒャッホーイ!海じゃあぁーっ!」
博士も水着を着て、サングラスをかけてサーフィンに乗り、ノリノリで波に乗っていた。
「ノリノリじゃないですか、博士…。」
道人は糸目になって博士を見た。
『俺も海に行きたかったぞ、道人ぉぉぉぉぉーっ!』
「いかん!僕の中のイマジナリー大樹さんがっ!?ごめんよ、最近付き合い悪くて!」
道人は両手で頭を抱え、下を向いて頭を左右に振った。
「お待たせ!…何やってんの、道人?」
道人は何とか脳内のイマジナリー大樹を振り払い、愛歌と潤奈と一緒にビーチボールをする事にした。
「…どうやるの、愛歌?」
「あたしがボールを上に上げるからそれを返せばいいの!先に道人にボールを投げるからそれを参考にして!それ!」
「ほい!」
「…こう?」
「そうそう!うまいよ、潤奈!」
この後も道人たちは水を掛け合ったり、砂のお城を作ったり、寝ている博士を砂で埋めたり、カニを眺めたり、全力で遊び尽くした。昼になったので海の家で食事をする事になった。
「はぁーっ!楽しかったぁーっ!」
「…うん、楽しい。」
「いかん、はしゃぎ過ぎたの…。昼を食べ終わったら、町に聞き込みに向かおう。」
道人たちは海の家で焼きそばとかき氷を頼み、楽しく食べた。
「潤奈、かき氷は急いで食べると頭がキーンってなるから気をつけて。」
「…頭がキーン?どういう事?」
「ああいう事。」
愛歌は頭を抱えている道人と博士を指差した。
「…そういう事。」
「しっかりしろ、道人!気をしっかり持つんだ!」
「…叫ばないでジークヴァル、頭に響く…。」
「わしも…。」
二人の様子を見て愛歌と潤奈と虎城は笑い合った。




