166章Side:深也 イルーダ第三形態へ
宙に浮かぶ結界でできた球体の中で卒間たちとアトランティスのデュラハンの戦いは激化する。そんな中、深也とパイレーツランドレイクはイルーダと戦いを繰り広げていた。
イルーダは飛び回り、パイレーツランドレイクの砲撃を避けながら太陽と月のデュラハンたちと戦っている最中のSWダーバラに近づいた。
「あらあら、どこか見覚えがあるデュラハンかと思ったら、私の以前のペットちゃん。正気を取り戻してしまいましたのね。」
「…おや、誰だい?知らないねぇ。」
そう言うとSWダーバラはイルーダを無視して飛び去った。
「オラオラ、よそ見してんじゃねぇぞ、イルーダ!」
「やっちまえ、ランドレイク!イルーダの奴を再起不能によぉっ!」
「ふっふっふっ…!」
イルーダは余裕綽々でパイレーツランドレイクの砲撃を舞いながら避ける。
「そんな姿じゃ、私は倒せませんわ…よ。」
イルーダは話をしている最中にバイザーを赤く発光させ、パイレーツランドレイクの近くに立った。両手を後ろに回して右足でミドルキックを放って来た。
「てめぇっ、高速移動を使ってそれだけとか舐めてんのかっ!?」
「だって、その姿のあなたなんて大した事ありませんもの…。いつぞやの悪魔の出立ちになられては?じゃないとあなた様は雑魚です。」
「てめぇっ…!」
パイレーツランドレイクは装飾銃を出現させ、イルーダに放つ。イルーダは横に一回転し、銃弾は容易く素手で掴まれた。
「ふふっ、お返ししますわ…。」
イルーダは指パッチンと同時に弾を投げ、パイレーツランドレイクの額に当てた。
「あら、響きの良い鉄の音だ事…。中身は空っぽなのかしら?」
「てめぇーっ…!」
パイレーツランドレイクは三日月刀を振り回すが、イルーダは容易く避ける。
「ちっ、こいつ…!完全に俺らを舐め切ってやがる…!」
「だって、そうでしょう?あなたたち、後一回しかヘッドチェンジできないんですもの…。」
「深也とランドレイクを舐めてはなりません!」
巻き貝の槍を持った海音がイルーダに向かって突撃して来た。イルーダはまたも容易く避ける。
「あら、お姉様。相変わらずの不意打ち好きです事。彼氏を馬鹿にされてカンカンですか?」
「ふいうち、にだんがまえ!」
続けてスランがイルーダの背後から薙刀で横一閃。それもイルーダは避けてみせた。その隙に海音はカードを実体化し、デバイスに読み込ませる。
「スラン、門番のデュラハンたちに隙ができやすいように皆さんを強化しましょう!」
「あいあいさー!」
スランは宙に浮かびながら海音に対して敬礼した。
「ヘッドチェンジ!アクアアイドル!」
『あなたはいつまでも透き通った清らかな願いを持ち続けられますか?』
「当然です!」
『承認。』
スランはアクアアイドルスランに変わり、パイレーツランドレイク、SWダーバラ、ファントムバニッシュディアス、トワマリー、海音にカラフルなヒトデを右肩につけてアクアギターを弾き始めた。
「わたしのうたをきけぇぃっ!」
スランが周りを飛び回りながら歌い始めるとヒトデをつけられた者たちは青く光り出す。
「相変わらずの曲調です事…。もっとクラシックな音楽をですね…。」
「おらぁっ!」
パイレーツランドレイクは宙に出現させた二つの大砲を放つ。
「曲と同じで進歩がない方たちです事!」
イルーダは攻撃を避けた後、ロングレンジビームキャノンをパイレーツランドレイクに放った。
「うおっ!?」
パイレーツランドレイクは急いでその場から離れ、地面に倒れて避ける。
「…ふふっ、お姉様。以前言いましたよねぇっ?私はまだ変身を残してる…って。第二形態になってから時間も経ちましたし…。もうなれるでしょう…。それじゃあ、お披露目と参りましょうか!」
イルーダはそう言うと両腕を交差し、全身から黒いオーラを放つ。
「…ヴィーズ・オー・ルイア・マーイ…!」
そう唱えるとイルーダの髪が伸び、全身を髪で包んでまるで繭のような形になった。
「な、何だよ、あれ…?」
いきなり現れた繭を見て深也はあまりの不気味さに冷や汗を掻いた。
繭から光が幾つも溢れ出した後、繭は粉々になって周りに飛び散った。
深也たちは飛んできた繭の破片を両腕を交差して防御する。
「…ふっふっ、変身完了ですわ…!」
イルーダは両耳がヒレになり、貝殻のブラのような胸当てに黒いニーソックスと鎧要素がなくなり、背中に禍々しい羽に見えるヒレを生やしている軽装の人魚の姿になった。髪型はトライテールからフォーステイルとなっていた。
「な、何だよ?随分とさっぱりし…。」
パイレーツランドレイクがそう言いかけるとイルーダはもうパイレーツランドレイクの目の前にいた。
「たなぁっ…!?」
イルーダは笑みを浮かべ、手を振った後に両足をブレードヒレに変えてパイレーツランドレイクの三日月刀を斬って折った。
「あら?不意打ちでしたのに…。すごいですわね、咄嗟に剣で受けるなんて…ね!」
イルーダはフォーステイルを全てドリルに変えてパイレーツランドレイクに向かって伸ばす。
「お、おぉぉぉっ…!?」
「ランドレイク!」
深也はスマホからオルカダイバーを実体化させ、パイレーツランドレイクに向かって飛ばして体当たりする形で救出した。その後、オルカダイバーにすぐにアクアバズーカヘッドをつける。
アクアバズーカオルカダイバーとなり、ランドレイクと共に着地して移動し、アクアバズーカを連射しながらホバーで移動する。
「あらあら、水を私に与えるのは悪手でしてよ?忘れましたの?私、人魚なんですのよ?」
イルーダは飛んできた水風船を全て背中の巨大なヒレに吸収し、黒水に変える。
「そぉれっ!」
イルーダは拡散ビームのように黒水を発射した。
「ちぃっ、水系ヘッドは相性最悪かよ…!?」
「私も不利となりました…!さて…!」
深也は制服バリアで、海音は貝殻の盾で守りながら後ろに下がった。
「貝殻の盾でも吸収できませんか…!?」
海音は貝殻の盾の水を吸収する機能を使おうとしたが出来なかった。
「当然ですわ。この姿はイジャネラがあなた憎しで作った姿。基本的にはお姉様メタの姿ですの。」
「あぁ、そうかい!だがなぁっ、俺たちにも意地があんだよ…!見せてやるぜ、デュエル・デュラハン準優勝者の実力って奴をなぁっ…!」
深也は黒水が向かって来なくなったのを見計らってオルカダイバーの頭をチェンジ。トライデントヘッドに変えた。
「肩借りるよ、ランドレイク!」
「おう!これも持ってけ!」
トライデントオルカダイバーはヒトデを受け取った後、パイレーツランドレイクの右肩を足場にしてジャンプ。トライデントをイルーダに向かって投げた。パイレーツランドレイクも二門の大砲を発射してオルカダイバーを援護射撃する。
「無駄っ!」
イルーダはフォーステイルを全てナイフに変えてトライデントと砲弾二つを斬ってみせた。
「続けて!」
深也は今度はダブルトライデントヘッドをオルカダイバーにつける。ダブルトライデントオルカダイバーは両手の槍を回転させた後、イルーダに向かってぶん投げた。
「無駄ったら、無駄!」
イルーダはイライラしながらフォーステイルのナイフで飛んできたダブルトライデントを粉微塵にした。
「次ぃっ!」
今度はライトニングフィストの姿になったオルカダイバーは右手に電流を発しながらイルーダ目掛けて飛んでいく。
「次から次へと姿を変えて…!」
「いや、君に言われたくないな、それ…!」
イルーダは飛んできたライトニングフィストオルカダイバーを相手にせず、スライドして避けてみせた。
「後悔させてやるぜ、テールの数を増やした事をよぉっ!掴め、オルカダイバー!」
ライトニングフィストオルカダイバーは腕を思いっ切り伸ばしてイルーダの長い髪を掴んで電流を流した。
「私の髪を…!?許せない!」
ライトニングフィストオルカダイバーはイルーダの背に乗っかり、電流を流しても微動だにしなかった。どうやら皮膚も強化されているようだ。もうこしょぐりも効かないかもしれない。
「君に許されるつもりはないよ!深也!」
「おう!」
深也は次にパイルバンカーヘッドをオルカダイバーにつけた。
「例え頑丈になっててもなぁっ!」
「何度も打ち続ければぁっ!」
パイルバンカーオルカダイバーはイルーダの背中に何度もパイルバンカーを打ち続けた。
「生意気小僧がぁっ!」
イルーダは駒のように回転してオルカダイバーを振り落とそうするが、パイルバンカーオルカダイバーは自分の腕に髪を巻き付けて振り落とされないようにした。
「デュエル・デュラハンの真骨頂…。それは実体化できる時間は三分だけだが、その間なら何度もヘッドチェンジができる…!」
「深也はそれを活かして戦ったのさ!」
「そう言うのを無駄な足掻き!小細工と言うのですわ!」
イルーダは残った三本のフォーステイルでパイルバンカーオルカダイバーを背後から串刺しにした。
「ぐぅっ…!?ま、まだだぁっ…!僕のこのパイルバンカーを最後まで打ち続ければ、ランドレイクたちの勝利への活路になるかもしれないんだ…!だからぁっ…!」
パイルバンカーオルカダイバーは自分のダメージを気にせずにただひたすらに弾が切れるまでパイルバンカーを打ち続けた。
「よ、よし…これで…。あ…後は頼んだよ、深也、ランドレイク…。僕、前のイルーダとの戦いより、役に立てた…かな…?」
そう言うとパイルバンカーオルカダイバーは光の玉に戻り、深也のスマホへと帰った。
「ふん、全く…!髪が痛みますわ…!」
イルーダはフォーステイルの一つをクシに変えて髪を整えた。
「あいつ、オルカダイバーの決死の攻撃を喰らってもぴんぴんしてやがる…!」
パイレーツランドレイクはオルカダイバーがつけていたヒトデが落ちてきたので移動し、キャッチして右肩に付け直した。
「いや、何度も背にパイルバンカーを受け続けたんだ…!絶対に効果はあるはずだ…いや、例えなくても絶対に意味のあるものに変えてみせるぜ…!」
「はい!その意気です、深也…!ここから反撃と参りますよ…!」
「あたぼうよ!」
深也は海音と共に髪を整え直したイルーダを睨んだ。




