166章Side:卒間 指揮官の意地
「残った三分間、目いっぱい暴れちゃえぃっ、トワマリー!ルブラン!」
愛歌は電流が走るディサイドビーストデバイスを両手で持っていた。
リベルテ=イーグルトワマリーは暴走しながら爪と尻尾で太陽と月のデュラハンたちを蹴散らしていく。
ヌンチャクルブランはリベルテ=イーグルトワマリーの攻撃に巻き込まれないように立ち回りながら器用にヌンチャクを振り回しながら戦う。
「張り切ってるな、愛歌君!」
卒間と深也、海音、スランが愛歌の近くに一旦集まった。
「トワマリーは後三分したら、もうヘッドが使えなくなっちゃいますから…!それまでに少しでもみんなが有利になれるように…!」
「我々も負けていられないな…!退路は塞がれてないんだ…!逆転の方法を見つけた道人君たちが帰って来るまで足掻いてみせるさ…!」
「へっ、道人を待つまでもねぇよ…!何だったら、俺らであいつらを倒しちまってもいいんだぜ…!」
「ふっ、大きく出たな、深也君…!だが、その意気だ…!」
「行くぜ、ランドレイク!どうせ俺らも後二回しかヘッドチェンジできねぇんだ…!暴れてやるぜぇっ!」
「おう、船長ぉっ!」
そう言うと深也はパイレーツヘッドのカードを実体化させ、デバイスに読み込ませた。
『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』
ランドレイクはパイレーツランドレイクに姿を変え、イルーダたちに向かって突撃した。
「いつかのリベンジだ、イルーダ嬢ちゃんよぉっ!」
「ふふっ…!あら、いつかのランドレイク様。また、恥を掻きたいのかしら?」
ランドレイクは宙に大砲を出現させ、発射。イルーダは華麗に飛び跳ねて回避した。
「…スラン、これは賭けですが…。」
「なぁに、みおん?」
宙に浮いていたスランは海音の声が聞き取りやすいように近寄った。
「二人で強く念じてみて、落としてしまったデバイスを引き寄せてみましょう…!スランがヘッドチェンジさえできれば、二人の門番の寄生ヘッドを容易く外せますから…!」
「でも、そんなこと、できるのかな…?おとしたデバイスをひきよせるなんて…。」
「出来ますよ、私とあなたの想いを重ね合わせれば、必ず…!」
海音の強い意思に当てられ、スランも強く頷き返した。
「…うん、そうだね!わたしとみおんのディサイドなら…!きっと、できるね!」
「はい!」
「やるんなら、あたしの後ろで試して下さい!それなら、多少は邪魔されないでしょうから…!」
「ありがとう、愛歌さん…!」
そう言うと海音はスランと共に愛歌の後ろに移動して目を瞑り、スランと額を合わせて両手を互いに握った。
「そうだ、みんな…!諦めるな…!少しでも希望があるのなら、それを掻き集めるんだ…!そうしたら、きっとディサイドは応えてくれるはずだ…!」
「へっ、いいのかよ?司令官がそんな希望的観測に頼って?」
「奇跡の活用だって立派な戦術だよ、深也君!デュエル・デュラハン準優勝者の君だって覚えがあるんじゃないのかい?」
「へっ、違いねぇっ!」
卒間と深也はそう言った後、互いに走る。卒間はディアスの元へ駆けた。
ディアスはアトランティスのデュラハンとヌール・メナリスにジュア・サン全ての足止めを一人でやって退けていた。
「待たせたな、ディアス!我々はヘッドチェンジがまだ三回フルに使える上になくなったとしても戦う事ができる…!大役だが、主力として立ち回ってもらうぞ!」
「良いさ、元シチゴウセンの力をみんなのために発揮してみせよう!」
「その意気だ、ディアス!」
卒間はカードを実体化させ、デバイスに読み込ませた。
「ヘッドチェンジ!バニッシュサイズ!」
『あなたは濃い霧の中でも大事な人を見つけ出せる自信がありますか?』
「もちろんだとも!」
『承認。』
ディアスに禍々しい髑髏と二本の角が生えた頭がつき、左手に赤い透明の鎌を持ってボロボロの黒いマントを着込んだ死神のような姿となった。
「…よし、行くぞ…!」
卒間は上着の内ポケットに入れている家族の写真に手を当てて集中力を高めた。
バニッシュサイズディアスは鎌を持った黒色の自分の分身を四体出現させる。
更に普段持っている四枚刃の鎌の内、二枚を外してビームでできた死神二体に持たせて突撃させた。
ウイングユニットからビームコウモリをばら撒いてディアス自身も突撃する。
「うひゃぁっ…!?怖っ…!?まるで死神たちの舞踏会みたい…!?」
遠目で見ていた愛歌があまりに恐ろしい光景につい感想を喋った。
ディアスと死神たちは消えては現れてを繰り返し、アトランティスのデュラハンたちを斬っていく。
ヌール・メナリスとジュア・サンは周りを動き回るが、アトランティスのデュラハンは斬られても無傷だった。
「やはり、オリハルコンに傷をつけるのは難しい…!だが、こいつらの頭さえ外せれば…!」
アトランティスのデュラハンは左手を前に出した。卒間たちを包んでいる結界が球体に変わり、宙に浮いた。
「な、何だ…!?何をする気だ…!?」
浮きはしたが、球体内では全く振動は感じなかった。
アトランティスのデュラハンは空に映っている画面の一つに右手を伸ばす。すると画面の中から黒い影の戦艦が姿を現した。
「な、何ぃっ…!?」
続けてアトランティスのデュラハンは左手も別の画面に手を伸ばした。そこからも別の黒い影の要塞を出した。
ヌール・メナリスとジュア・サンはアトランティスのデュラハンの近くに寄り、アトランティスのデュラハンは両手を勢いよく横に伸ばす。戦艦と要塞は球体に向かって砲撃を開始した。
「な、何てでたらめな…!?」
「塔馬!」
各デュラハンたちは一旦攻撃をやめて各々のパートナーを抱えて砲撃から逃げ回った。リベルテイーグル=トワマリーも正気に戻って飛び回る。
太陽と月のデュラハンたちは一箇所にまとまってオリハルコンの部分で砲撃を受けても問題ないようにした。
「うふふっ…!何て豪快なの…!?素敵、素敵ですわ…!あっはっはっ…!」
イルーダはアトランティスのデュラハンの砲撃に感激しながら飛び回った。
「もぉ〜っ…!せっかくみおんとしゅうちゅうしてたのにぃ〜っ…!」
「大丈夫です、スラン…!もう…捉えられましたから…!」
海音が強く念じ、右手で握り拳を作ると空からデバイスとスマホが入った鞄も共に飛んできた。
「わぁっ、やったぁっ!えっ、すごい!シーラまで呼び寄せられるなんて…!」
「どうやら、ハーモニカも力を貸してくれたようです…。」
海音はポケットからアトランティスのデュラハンが復活した以上、もはや無意味と化したと思っていたハーモニカを手に持った。ハーモニカは青く発光していた。
「ひょっとしたら、アトランティスのデュラハンを倒して欲しいから手助けをしてくれたのかもしれません…。」
「あ、でも…結界内に入れるのかな、デバイス…。」
「大丈夫ですよ、スラン。ご丁寧に砲撃で結界に穴を開けてくれましたから。」
すぐに穴は塞がってしまうが、デバイスとスマホが通り抜けるには十分だった。海音は飛んできたデバイスとスマホが入った鞄をキャッチする。
「…一人にさせてごめんなさいね、シーラ…。」
「今がチャンスさね!」
ダーバラが穴が空いた結界を通り抜けて
入って来た。愛歌を抱えて逃げ回っているヌンチャクルブランを見つけ出して並走した。
「お待たせ、愛歌。随分苦戦しているようじゃないか。」
「ダーバラ、ナイスタイミング!」
砲撃が収まったのでヌンチャクルブランは立ち止まった。
「ごめン、愛歌…!もう時間切レ…。」
「私も、申し訳ありません…。」
愛歌の近くに着地したトワマリーはビーストが解除され、ルブランはスマホへと帰った。
「よし、バトンタッチさ!後は任せな、トワマリー、ルブラン!」
「任せたヨ、ダーバラ!私もまだ小型リングでサポートしてみせるかラ!」
トワマリーとダーバラは互いにハイタッチした。
愛歌はトワマリーのデバイスを一旦ベルトに引っ掛け、ダーバラのデバイスを新たに手に取った。スマホも新たにダーバラのデバイスに付け直す。
すぐにカードを実体化させてデバイスに読み込ませる。
「おっし、行くよ、ダーバラ!ヘッドチェンジ!スカーレッドウイング!」
『あなたは罪ある翼と共に飛ぶ事ができますか?』
「いつまでもっ!!」
『翔認。』
ダーバラはSWダーバラに姿を変え、トワマリーと共に太陽と月のデュラハンたちの元へと向かう。
「私たちも参りましょう、スラン!」
「うん!」
「深也とランドレイクもまだ頑張れますね?」
「当たり前だぜ!」「おう!」
デバイスを引き寄せられた海音とスランもヌール・メナリスとジュア・サンに立ち向かう。
深也とパイレーツランドレイクもイルーダの元へと走る。
「いいぞ、諦めなければ希望はどんどんディサイドに集まっていくんだ…!我々も攻撃再開だ、ディアス!」
「あぁ!」
卒間とファントムバニッシュディアスと共に死神たちを引き連れて再びアトランティスのデュラハンに挑んだ。




