166/竜殺しの章① 白騎士と少女の出会い
「道人!大丈夫ですか、道人?」
「ん…?ユーラ…?」
道人は気がつくと目の前にはユーラとソルワデスがいた。周りを確認すると巨大な白い光のトンネルの中に浮かんでいた。
かなり早いスピードで宙に浮かぶ白い文字が後ろへと流れていく。速すぎて文字は読む事はできなさそうだった。
「愛歌や潤奈、大樹から話は聞いてたけど…。確か、この先に行けば多元分岐転生英雄の…ジークヴァルの過去がわかるんだよな…。」
「なら、さっさと行こうぜ。ジークヴァルの過去、気になるしよ。」
ヤジリウスが勝手に実体化し、トンネルの先を見た。道人は周りを確認したが、ヤジリウスのヘッドはいなかった。どうやら、ここには連れて来られなかったようだ。
「勝手に人の過去を覗き見る…というのはあまり気が進まないが…。」
「それが試練だってんならしょうがねぇだろ。割り切ろうぜ、ソルワデス。」
ヤジリウスは腰に手を当ててソルワデスの肩に手を置いた。
「あ、ひょっとして…。」
「どうしました、道人?」
「いや、ヤジリウスがここに来られてるし…。確か前に狸が言ってた通りだとしたら…。」
道人はポケットを探るとスマホを見つけた。デュエル・デュラハンのアプリを起動した。すると、ハーライムが実体化した。
「ん?緑野郎。おい、いいのか?実体化して。」
「大丈夫。ここではハーライムの実体化に時間制限はないみたい。傀魔怪堕の時と同じだね。それにイジャネラとの戦いの時にハーライムを実体化させたから、次はドラグーンの姿のはずだしね。」
「なるほど、確かにただの緑野郎だ。」
「ただのとは何だ、ただのとは。」
「ただはただだよ、緑野郎。」
「ふ、二人共、今は喧嘩をしてる場合では…。」
険悪なハーライムとヤジリウスの間にソルワデスが弱腰で仲裁に入る。
「そういえば、狸がハーライムとヤジリウス以外にもジークヴァルの試練に関わる人がいるみたいな言い方してたけど、ユーラとソルワデスの事だったんだな、今にして思えば。」
「そうなのですか?ふふっ、何だか賑やかでいいですね。」
「うん。 …っと、みんな!こうしてる場合じゃない!」
道人の言葉を聞いてハーライムとヤジリウスは口喧嘩をやめ、道人の方を見た。ソルワデスも二人の口喧嘩が止まってほっとしたようだった。
「この試練の空間と現実世界の時間の流れは違うとは言っても、今愛歌や深也、司令たちはアトランティスのデュラハンたちと戦ってる最中なんだ。急いで試練を終わらせて早く帰らないと…。」
道人の言葉を聞き、デュラハンたちとユーラは強く頷いた。道人の言葉がこの光のトンネルにも通じたかのように光が広がった。
「う、うっ…?ここは…?」
道人はゆっくりと目を開ける。周りを確認するとユーラやハーライムたちもちゃんとついて来ていた。多くの星が輝く夜空の下、森林地帯に道人たちは立っていた。
「ジークヴァル隊長!奴ら、完全に油断してますよ!やるなら今です!」
「…! ジークヴァル…!?」
ジークヴァルの名前が聞こえて来たため、道人たちは声が聞こえた方を振り返った。
大男からジークヴァルと呼ばれている長い銀髪の男。鎧の上にローブを纏っていて、夜にも関わらず、輝いて見える白銀の鎧が眩しい。
「これが、ジークヴァルの前世の姿…。」
「わぁっ、かっこいいお方ですねぇ〜っ…。」
「マジかよ…。俺、道人の部屋の漫画で見た事あるぜ。これはあれだろ?擬人化ってやつだろ?」
「いや、ジークヴァルはこっちが元の姿なんだから擬人化とは違うでしょ。というか、俺の部屋に擬人化ネタ漫画なんてあったかな…?」
道人はヤジリウスの発言にツッコミを入れた後、気を取り直して視線をジークヴァルの方に戻した。
「全く、呆れ果てるものだ。我が国ネーランドの討伐対象のドラゴンを売り物にしようとはな…。」
ジークヴァルは崖下の灯りが灯る複数のテントを見てそう言った。
「商魂逞しい、とでも言いますかねぇ。よくやりますよ。」
「いや、偵察隊の調べによれば、奴らは人攫いのような真似をしてまで金を稼ごうとする集団だ。褒めるには値しない外道の極み…。彼らを褒める事は懸命に今を生きようとする商人たちに失礼だ。」
道人は姿は見慣れないが、その真っ直ぐな優しい心根は間違いなくジークヴァルのものだと思って安心した。
「ジークヴァル、そう思うんなら早く攻めた方がいいんじゃない?」
「ロードか。」
鎧姿にローブを纏った男が近づいて来て頭のローブを外して顔を見せた。
「「「「み、道人ぉっ!?」」」」
「は、はいぃっ!?何っ!?どうしたの、みんな急に!?」
ユーラたちが急に口を揃えて驚いたので道人は思わずびっくりした。
「だって、お前、あれ…。」
「あのロードという方は…。」
「道人、そっくりだ…。」
「驚きました…。大人になった道人…ってところでしょうか?」
「そ、そんなに似てる…?うーん…俺、朝顔洗う時と風呂上がりくらいしか自分の姿見ないからな…。後、スマホとかに反射して映った姿とか…。」
どれも反転した自分の顔なのであまり実感が湧かない道人。道人はみんなの話を聞いて改めてロードという人物を見直した。
「確かにロードの言う通りだ。こうしている間にも乱暴な扱いを受け、苦しむ者もいるだろう…。だが、あくまで我々の目的は討伐対象のドラゴンの駆逐だ。それを忘れるな?悪徳商人の駆逐はあくまでドラゴン討伐の際の被害という体だぞ?」
「はいはい、建前建前ってね。」
ジークヴァルたちはそう言うと馬に乗り、騎士団と共に坂道を降りた。
「あちらもこちらに気づいたか…?騒々しいな…!」
「いや、隊長!違いますぜ、あれを!」
部下の騎士の一人が指を指すとキャンプの中から首無しの鎧武者が何体か出て来た。商人たちは逃げ惑う。
「傀魔怪堕か…。海音さんや姫から話は聞いてるけど、本当に昔から出没してるんだな、あいつら…。」
傀魔怪堕の兵士たちは刀や槍を振るい、逃げ惑う商人たちをどんどん捕らえていく。
「隊長!ありゃっ、デュラハンだぜ!あいつら、こんなところにも…!」
「くっ、作戦を多少変更だ!デュラハンと討伐対象のドラゴンの駆逐!いいな?」
「「「了解!」」」
ジークヴァルたちは馬に乗ったまま、剣や槍を取り出し、首無し鎧武者たちをどんどん倒していく。
「ロード、後ろだ!」
「わかってるよ、ジークヴァル!僕のメタリー・ルナブレードなら!」
「…!? メタリー・ルナブレードだって!?」
道人は驚いた後、ロードが右手に持っている剣を見た。形は今とは違う。しかし、博物館で見た時の錆びていた剣だったメタリー・ルナブレードそっくりだった。
「ジークヴァル、あれ!」
ロードが指を刺した方向を見る。テントから人が何人か逃げ出した後、動物を口に咥えたドラゴンが中から姿を見せた。
「赤い首長の四つ足竜…!間違いない、討伐対象だ…!あんな奴を売り買いしようとするから…!」
ジークヴァルがそう言った後、一人のローブを身に纏った子供がふらふらしてテントの中から出て来て、地面に転んだ。ドラゴンがそれを目撃し、その人を食べようとする。
「…!? 危ない!」
ジークヴァルは馬を走らせ、何とか食べられそうになった寸前でローブの子供を助け出せた。
気のせいか、その子供は食べられそうになった瞬間、黒いオーラが一瞬漂っていたように道人には見えた。ジークヴァルは気づいていないようだった。
「ふぅっ…!間一髪…!時間は掛けられない、さっさと討伐を終わらせよう…!」
ジークヴァルは離れた場所の一本の木に向かう。一旦子供を木を背にして寝かせた後、剣を構えて馬と共に竜に向かって進む。ドラゴンは抵抗し、口から火の玉を三つ出してジークヴァルに放って来た。
「我が剣、レーヴァテインにそのような火球は無力!」
ジークヴァルはレーヴァテインの刀身を伸ばし、斬り払って刀身に炎を纏わせた。
「レーヴァテイン…。私とヤジリウスがジークヴァルと合体した時に現れた剣が確か、エクストラレーヴァテインでしたね…。」
ソルワデスの言う通り、クロノスフィアアレウリアスとの戦いでソルクロー・ジークヴァルスVer.Yになった際に出現した剣と似た名前だった。
「竜殺しの異名!伊達ではないと見せてやろう!はあぁぁぁぁぁーっ!!」
ジークヴァルはレーヴァテインを両手で持って上に上げ、炎を纏った長き刀身を力強くドラゴンに向かって振り下ろした。
「シュナイデンッ!!」
ジークヴァルはドラゴンを一刀両断し、チリ一つ残さずに消滅させた。馬をゆっくりと歩かせ、レーヴァテインを横に振って縮んでいく炎の刀身を振り払った。
「やったね、ジークヴァル。毎度ながら惚れ惚れする見事な竜殺しだ。」
「世辞は良い、ロード。早くテントの処理や怪我人の手当てを。と、その前に…だ。」
ジークヴァルは馬を歩かせ、さっき木を背に寝かせた子供の所に行き、馬から降りて近づいた。
「おい、大丈夫か?おい…!」
ジークヴァルがローブの子供を抱えると頭のローブが脱げ、綺麗な水色の髪の女性の眠り顔が姿を見せた。
「女の子、だったのか…。」
「…!? リムルトさん…!?」
ジークヴァルが抱えているのは間違いなく、戦島や道人の夢の中で見たリムルトだった。リムルトは身体を震わせた後、ゆっくりと目を開けてジークヴァルを見た。
「…あなたは…?」
「…可憐だ…。」
「えっ…?」
「あ、いや…。ごほん…。」
ジークヴァルは頬を染めたが、咳払いをし、調子を整えて改めてリムルトを見た。
「私はジークヴァル。君はドラゴンに襲われていたんだ。」
「…!? ドラゴン…!?どう…ほう…。」
リムルトはドラゴンの名を聞いて怯え出し、ジークヴァルに抱きついた。せっかく調子を整えたジークヴァルはまた赤面状態になる。
「だ、大丈夫だ…!私がもうドラゴンを倒した。君の身はもう安全だよ。」
「あなたが…?」
リムルトはジークヴァルを抱きしめるのをやめ、じっと見つめる。
「えっと…。君、名前は…?」
「…リムルト…。」
「リムルトか、良い名前だ。君にぴったりの名前だな。私はジークヴァル。」
「…ジークヴァル、様…。あなたなら、私を…。」
「リムルト…?」
リムルトは切ない顔をし、またジークヴァルの大きな胸板に身体を預けた。
どうも、星川レオです。この度、ディサイド・デュラハンに妹作品ができました。その名も「ミステリアス・デュラハン〜失われた希望の狼煙〜」です。
大神華凛というオペレーターの大神天音の妹が主人公です。大樹とカサエルの試練のお話でネタは仕込んでいまして、やっとお披露目です。
ディサイド・デュラハンも長丁場になって来たので新たな入口が欲しいな、と思って制作に至りました。
ディサイド・デュラハンがメイン更新なのでこちらの更新頻度は控えめで、短めのスピンオフストーリーにするつもりですが、どうぞよろしくお願いします!
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