147章Side:ソルワデス DとCと元BAの会合
「へぇっ…。よし、見ただけじゃわかんねぇな!やっぱり実際使ってみねぇとな!」
喜び勇んでデュラハン・シップの格納庫へとやって来たヤジリウス。そう感想を言い残した後、博士が作ったヤジリウス専用の頭をコンテナに戻した。
「じゃあ、ソルワデス。俺は道人の所に戻るぜ!」
「格納庫には滞在しないのか?」
「おう。正直、布状態でいた方が楽なんだよな、俺的には。」
「そうか…。」
「じゃ、アトランティスに着いたら会おうぜ。」
そう言うとヤジリウスは階段を上がり、道人たちがいる座席へと向かった。しばらくするとデュラハンシップはパークから離陸し、飛び立った。
「…ふむ、すごいな…。飛行しているにも関わらず、振動を全く感じない…。」
「そうなの?」
「えぇ、キャンベルの宇宙船でもさすがにここまでの技術力はないな…。」
「ふーん…。」
「………!?」
ソルワデスは何か普通に会話してしまったが、隣にデュラハンがいて驚いた。
「わ、私に気配を感じさせずに近寄れただと…?」
「うん、そうだよ?ささ、あなたもあっち、いこいこ!」
「あっ、ちょっと…!?」
ソルワデスは腕を掴まれ、無理矢理移動させられた。そこには他にデュラハンが三体いた。
「はい、ちゅうも〜く!これからわたしたちはアトランティスで、こうどうをともにするわけで、おたがいにじこしょうかいしようとおもいまーす!」
「…まぁ、一理あるな。」
「あたいは構わないよ。」
謎のデュラハンサークルに引き込まれてしまったソルワデス。今作戦にはフォンフェルもいない、ヤジリウスも去ってしまった。気軽に話し掛けられる相手がいないため、ソルワデスは焦る。スランとソルワデスは共に地面に座る。
「わたしはスラン。みおんのディサイド・デュラハンだよ?よろしくね?」
「あ、あぁ、よろしく…。」
ソルワデスは差し出された右手に対して握手し返した。
「こっちはクラちゃん。」
「びぃ〜っ…。」
クラーケンは少しソルワデスを警戒していた。クラーケンを改造したのはキャルベンだ。ソルワデスも関係なくはないのでクラーケンの反応は仕方ない。
「わたしのもくてきはアトランティスにまよいこんでしまった、みおんのきゅうしゅつ!そして、さいかい!まっててね、みおん…!」
スランは立ち上がり、両手の握り拳を強く握り、燃えていた。
「何だか燃えている…。」
「気にしないでくれ、そういう子なんだ。私はディアス。お互い敵だった身からディサイド・デュラハンとなった仲だ。お互い助け合えたら良好な関係を築けるだろう。よろしく頼む。」
「え、えぇ、それはもちろん…。」
何だかしっかりした真面目なデュラハンだな、と好印象を抱きながらソルワデスはディアスと握手した。
「あたいはダーバラ。愛歌のディサイド・デュラハンさね。ま、よろしく。」
「あなたはイ…いや、何でもない。よろしく。」
イルーダのペットにされていたデュラハンだと気づいたが、言ったら不機嫌になりそうだな…と思ったソルワデスは言わないでおいた。
「そして、俺がランドレイクだ!船長、深也のディサイド・デュラハンだ!よろしくな!」
「え、えぇ、よろしく…。」
このデュラハンは水縹星海岸で話はしなかったが見かけた奴だとソルワデスはすぐに思い出せた。
「せっかくの会話できる機会だが、トワマリーは愛歌のデバイスの中。ヤジリウスも道人んとこ。そして…。」
ランドレイクがジークヴァルのボディを見ているのにはソルワデスはすぐに気づいた。
「まぁ、まだ到着には時間が掛かるだろうし、楽しく話そうぜ。」
何だかもう馴染んでいる感じがあるランドレイクがソルワデスには少し羨ましかった。
「よっしゃっ!それじゃあ、デュラハン会合、スタートだ!」
「かいごう…?我らで言う所のゴウ=カイみたいなものか?」
「おう!多分そうだぜ、うん!」
ディアスの疑問にランドレイクはやや適当気味に返答した。
「だいじょうぶ?なんか、きんちょうしてない?」
スランがソルワデスの様子を気に掛けてきた。
「えっ?い、いえ…まぁ…。」
「まぁ、あんたは今から俺らが戦うキャルベンのデュラハンでもあり、道人のディサイド・デュラハンでもある…。複雑な立場だろうからな…。無理もねぇ。」
「え、えぇ…そう、だな…。」
ランドレイクの言う通りだった。ソルワデスは道人の言う通り、キャルベンたちと戦わずに解決できる方法を共に探す気持ちはある。しかし、本当にそんな事が可能なのだろうか?いざ、戦う事になったら同胞に刃を向けられるだろうか?という思考がぐるぐるして止まらなかった。
「わかるなぁっ、そのきもち…。わたしもにたようなものだから…。」
「…! あなたも?」
「わたしのばあいはダジーラクになんでもいいから、いのちをかりとってこい、っていわれたあとでのみおんとのディサイドだったけどね。みんなとてきたいするかもしれない、ってふあんだったなぁっ…。」
「そうなのか…。」
明るいデュラハンのように見えて、このスランという子も自分と似たような悩みを持っていたのか、とソルワデスはスランに対して少し親近感が湧いた。
「俺だって最初は物言わぬデストロイ・デュラハンだったんだぜ?しかし、そう言われると俺たち全員敵だった身からこっちに来た、っていう共通点があるんだな。」
「確かにな、不思議な縁だ…。」
ランドレイクとディアスの会話を聞き、このデュラハンたちとなら気兼ねなく話せるかもしれない、とソルワデスは思えた。
「ふんふん…。じーっ…。」
「な、何か?」
スランがソルワデスの身体を見てきたのでソルワデスは少し驚いた。
「あなた、わたしとおなじ、みずけいのデュラハンだし、きがあいそうだね。」
「み、水系?」
確かにこのスランというデュラハンは魚人のようなデザインをしていてキャルベンのデュラハンと似ている気がする。
「じゃあ、俺もだな。」
「ランドレイクはかいぞくでしょ?ぎょじんじゃなくない?」
「いや、俺には戦島でキャルベンの兵士たちに同胞だと勘違いされた経験がある!よって、俺もそうさ!」
「そう?じゃあ、そうだね。」
「そうなんだ…。」
「じゃあ、みずけいどうし、これからもなかよくしようね?」
フォンフェルとヤジリウスに続き、ソルワデスにまた仲間が増えた。デュラハン・ガードナーにやって来るデュラハンたちは積極的に交流してくる者が多いな、とソルワデスは思った。
「おいおい、水系じゃないあたいたちは仲間外れかい?ひどいねぇ〜っ…!」
「そんなこと、ないない!ディアスとダーバラもこれからはなかよしだよ?」
「そうかい?嬉しいねぇ〜っ。何だか現時点でバドスン・アータスにいた頃よりもスランとディアスとたくさん話せてる気がするよ。」
そう言うとダーバラは自分の周りに鉄扇を浮かせて仰がせた。
「あんだよ?シチゴウセンってのは案外横の繋がりが薄いのかい?」
「元々強者の集いみたいなものだったからな…。ゴウ=カイの時くらいしかあまり会話しない。」
「? わたし、ディアスやラクベスとふつうにかいわしてたよ?」
「あんたが珍しかったんだよ。」
しまった、話題に入れなくなった、とソルワデスは少し居づらい気になる。
「あ、ごめんごめん!ソルワデスにはわかりにくいよね、バドスン・アータスのはなしは。」
スランはソルワデスが今どんな気持ちでいるのかを見ただけで瞬時に理解した。おちゃらけているいるようでかなりの手練れだとソルワデスは理解した。
「まぁ、愛歌も優しくしてくれるし、ここは意外と居心地はいいんだけどさ…。あたいとディアスは色んな惑星の人たちを殺めてきたからねぇ〜っ…。」
ダーバラもディアスもお互いに自分の両手を見た。
「あぁ、ダーバラの言う通りだ。私はシユーザーの反乱という形でなし崩し的にディサイド・デュラハンと化してしまったが、私の罪が消える訳ではない…。いずれは償いをしなければならない身だ…。」
「いずれ、じゃないだろう?」
「…ふっ、そうだな。今からでも、だ。」
「その意気さね。」
「そうか、あなた方はあなた方で悩みがあるのだな…。」
ソルワデスも自分の両手を眺める。
「何、そう気になさんな。ここのデュラハン・ガードナーのみんなは気前の良い集団なんだ。一人で抱え込まず、遠慮なく相談してくれ。ここにいる連中は喜んであんたらの罪の精算に協力してくれると思うぜ?」
『そうだ、ここは皆で助け合える、みんなの特別な居場所だ。』
「…!? ジークヴァル?」
ランドレイクは驚き、ジークヴァルのボディの方を見た。特に変化はなかった。
「…気のせい、か…?」
「ううん、きのせいじゃないよ。わたしにもきこえたし。」
「あたいにも聞こえたよ…。」
「私も…。」
スランやダーバラ、ディアスも今、ジークヴァルの声が聞こえたという。
「ソルワデスは?」
「わ、私にも聞こえた…。ジークヴァルの声が…。」
「何だよ?みんなして集団幻聴か?いや、それにしては…。」
「あぁ、はっきりとここは皆で助け合える特別な場所だ、と…。」
ソルワデスが聞こえた内容はみんなが聞こえた声と一致し、互いに頷き合った。ランドレイクは立ち上がり、ジークヴァルの胸に軽く拳を当てた。
「道人も他のみんなもお前さんの帰りを待ち侘びてるぜ…?だから、早く目を覚ませよな、ジークヴァル…。」
「あーっ、テステス。みんな、聞こえる?もう水縹星海岸に到着するわよ?」
操縦席にいる大神の艦内放送が格納庫にも聞こえてきた。
「もうシップの目の前に異次元トンネルを確認した。キャルベンが先に中に入ってから、こちらは大分遅れてしまった。よって、すぐにでも突入するつもりだ。突入時に何が起こるかわからん。皆、念の為シートベルトを頑丈につけ、何が起きても耐えられるようにしておいてくれ。」
「あたいらもボディを固定した方が良さそうだね。」
「そんじゃ、一旦お開きとしますか。」
ダーバラたちは立ち上がり、ジークヴァルとトワマリーのボディがあるハンガーへと向かった。
「わたしたちもいこ、ソルワデス。さぁさ!」
スランはソルワデスの右手を握り、ハンガーへと向かう。
「あっ、そんなに慌てなくても…!」
敵側から寝返る形になってしまった立場になったのは自分だけじゃない。何気ない短い会話だったが、ソルワデスは格納庫に来て良かったと思えた。ソルワデスにはスランに握られた手が何故か暖かく感じられた。




