143章Side: 傀魔怪堕 響く謎の声
真っ赤な空に真っ赤な大地。そこに聳え立つ巨大な城が傀魔怪堕のアジトだった。
「今戻りましたぞ、極亞様。」
「あぁ。優良人種採集から戻ったか、烈鴉。」
極亞は玉座に座りながら茶を飲み、捕獲したディールマーシャルを眺めていた。科学者の優良人種が何人か集められている。
「どうなんですじゃ、こいつは?使えそうですかい?」
「うむ、必要になった優良人種の科学者を呼び出してみたが…やはりデュラハンの技術はそう簡単に理解はできぬか…。もうよい、片付けよ。」
カラクリデュラハンたちが科学者たちに槍を向け、この場から去るように威嚇した。
「ま、待ってくれ…!もう少し調べさせてくれないか?興味深いものではあるんだ…!」
「ふん、口だけが…。お前はただ、久々に外に出してもらえたからまだいたいだけであろうよ。」
極亞は目障りな科学者を早く片付けるようにカラクリデュラハンに指で指示した。
「た、頼む…!絶対にこのロボットの事を学んでみせるから…!だから…!」
極亞は玉座から立ち上がり、口答えする科学者の一人に刀を向けた。
「ひっ…!?」
「学びだと?そんなものは必要ない!対応ができぬのなら、片付けるだけだ。何、他にも優良人種の科学者はたくさんおる。貴様は引き続き、自分の得意な事で今後も呼ばれれば良いのだ。すまなかったな、非対応の分野なのにわざわざ呼び出してしまって。下がらせろ。」
「い、嫌だぁっ…!?また眠りにつかされるのは…嫌だぁっ…!?」
科学者は両腕をカラクリデュラハン二体に捕まれ、優良人種保管庫に連れていかれた。
「また何もせずに安らかな眠りにつけるというのに何が不満なのかのぉっ?なぁ、極亞様?」
「ふん…。」
極亞は玉座に座り直し、また茶を飲んだ。
「しかし、優良人種の科学者は何人かおるが、さすがにデストロイ・デュラハンとやらの技術力を持った科学者というのはなかなか見つけられんのう。災鐚の奴、デュラハン・パークに行って来ると勝手に飛び出して行ったが、見つけて来られるんじゃろうか?」
「無駄だ、あのパークにはビーストヘッドや十糸姫の糸などの多くの神秘が集いつつある…。何か結界のようなものがあって連れ去るのは困難だろうて。」
「そうなんですじゃ?」
「元々あのデュラハン・パークとやらはガイアフレームの意思によって守りの固い、神秘なる場所に立てられたものなのかもしれんな…。何、所詮は死に損ないのガイアフレームよ。それでも何かしらの抜け道はあろうさ…。それよりもこのデュラハン…。」
「何ですじゃ?何か思う所がお有りで?」
極亞は空になった茶碗を隣りの給水役のカラクリデュラハンに向けて新たな茶を入れさせた。
「…いや、このディールマーシャルとやら、何やら仕組まれたものを感じてな…。」
「何ですと?作為的なものと?」
「あぁ、こいつはまるで我らが欲しがるような性能をしたデストロイ・デュラハンだ。そこがきな臭い…。」
「拾ってきたのは災鐚の奴の意思ですじゃ。それすらも仕組んだと言うのですじゃ?一体誰が?」
「…心当たりはいくつかあるが、さて…。」
極亞の長年の武士としての勘がガイアヘッドともう一人、邪悪な意思の存在を感じた。
「とにかく、こいつをこのまま修理して使うのは面白くない…。我らなりに改造して、その仕掛け人を驚かせてやろうではないか。」
「ま、あなた様がそう仰るのならわしは従うだけですじゃ。」
「災鐚、今、戻った!」
災鐚は急に姿を現したかと思えば強い歩調で烈鴉に向かって歩いてきた。
「な、何じゃ、災鐚。戻ってきて急に…。穏やかではないのぉ。」
「元幽体離脱者から聞いた!烈鴉、災鐚の悪口、言った!ぷんすか!」
災鐚は両手をぎゅっと握り締めて烈鴉を睨んだ。
「な、何じゃ?道人の事か?あ奴、仏蘭西での事を喋りおったのか…。」
「と言う事は、事実!絶許!」
「ま、待て、災鐚!同僚のよしみ、陰口の一つや二つ、ここは流してだな…。」
怒る災鐚を烈鴉は必死で宥めた。
「災鐚、他のカラクリデュラハンはどうした?何体か連れて行っただろう?」
極亞は喧嘩の仲裁を兼ねて質問を投げた。災鐚は道人たちとの戦いの経緯を報告する。
「超×超災将軍になる前に奴らにやられたというのか、ほう…。」
「奴ら、強くなってた。油断、禁物。」
「それでお前さん、道人たちにむざむざやられて逃げ帰った挙句に、デュラハンに詳しい科学者も連れて来られなかったのか。」
「また、悪口。しかも、今度は本人の前!」
災鐚は烈鴉に向けて弓を構えた。
「まぁ、待て待て。お前さん、何で道人たちについて行ったんじゃ?パークには…まぁ、行けないのはさっき極亞様の話でわかった。」
「…? どういう、事?」
烈鴉はさっき聞いた極亞のデュラハン・パークには何かしらのガイアフレームの加護があるかもしれない話を教えた。
「確かに、一般エリア、入れた。でも、何故か、奥は駄目…。何たる無駄足…。これでは、陰口、仕方なし…。」
「な、何じゃ、急に潮らしくなりおって…。すまん、すまん。わしも悪かった、もう悪口は言わん。」
「我もお前にあのパークの守りの件を事前に伝えるべきだった。すまなかったな、災鐚よ。何、一般エリアには入れるのなら、策は色々とあろうよ。」
極亞も烈鴉と一緒に災鐚に近寄って謝った。災鐚は機嫌を取り戻した。
「話を戻すぞ。それでお前は何故道人について行った?」
「道人、どこかに出掛けた。だから、ついて行った。結果、グルーナ・フリーベル、優良人種と認定。愉快。」
「ふん…。どの道、あの場所には多くの優良人種候補が集っている…。その内、大量
入手と参ろうではないか。そこは横着に行こうぞ、災鐚よ…!はっはっはっ…!」
「愉快、愉快…!」
極亞たちは共に近い内に訪れるであろう未来を胸に笑い合っていると急に別の声が聞こえてきた。
「ー>〜€〜。〜〆〜…ー。」
「な、何じゃ?こ声は…?例の狼…いや、違う…。…いや、そもそも声…なのか…?」
「…ふむ、面白い…!傀魔怪堕にまで轟く声か…!何かが起こるかもしれんな…!」
極亞は未来への期待を胸に秘め、城の中へと帰っていった。




