140章 超災将軍
道人とヤジリウスは急いで災鐚と交戦中のソルワデスの元に急いだ。互いに飛び跳ねながら進むが、足場が整理されてない森の中のために注意して着地しないと転びそうだった。
「…いた!ソルワデス!」
ソルワデスはウイングユニットを外していて、両肩の盾を腕に装着し、巨大な鉤爪に変えて災鐚に連続で切り裂き攻撃を仕掛けていた。
「ちっ、ちょこまかと…!」
災鐚は周りにあるたくさんの木を蹴りながら素早く移動し、ソルワデスの切り裂き攻撃を避け続けていた。ソルワデスも負けておらず、災鐚が地面に潜る隙を与えないように攻撃している。
「無駄。お前の攻撃、自分。当たらない。愉快。」
「…グゲンダルと似たような口癖だな。」
ソルワデスはウイングユニットを支援ユニットとして使い、切り裂き攻撃にビームの援護射撃も加えた。
「おっしゃっ、俺も加勢するぜ!」
ヤジリウスも鞘に入れた刀を構えてソルワデスの加勢に向かった。今日は制御装置を持って来ていない、またはリュックの中に入れたままでグルーナの家に置いてきてしまったようで使っていなかった。道人は左腕に装着されたデバイスを外し、使えるヘッドを確認する。
「ブーメラン関連やランス、ドリルヘッドはソルワデスでも使えるけど…。問題は…。」
ウェントとアレウリアスとの戦いで確認した三枚のD-DUNAMISカード。今は三枚とも白紙で表示されている。
「現状だと白紙状態なんだよな…。」
あの戦いでD-DUNAMISカードの仕様は頭の中に流れ込んできている。道人とソルワデスが何かしらの影響を強く受けた際、使えるようになるカード。通常ヘッドを使ってしまった場合、その分使えなくなってしまう、という強力ではあるが駆け引きが必要となるカードだ。
「しかも、仮にまた合体したとしても…また、ジークヴァルみたいに…。」
道人の脳裏にジークヴァルの身体が崩壊した記憶が嫌でも思い浮かぶ。道人は首を左右に振り、思い出したくない記憶を取っ払おうとする。
「幸い、ソルワデスは通常形態でも戦闘力は高い…!温存するのも手だ…!それだけ強力なカードなんだ、こいつは…!」
道人は気を取り直して災鐚と交戦中のソルワデスとヤジリウスを見る。
「よし、四人で一気に畳み掛けよう!ハーライム!」
道人はスマホからハーライムを実体化させ、すぐにバインドブーメランヘッドを装着した。その後、デバイスをガントレットに装着し直し、道人もレッグパーツで加速して災鐚を追いかける。
「加勢するぞ、ヤジリウス、ソルワデス!」
「さすがに、多勢に無勢!きつい!」
災鐚はソルワデスとヤジリウスの連携による接近戦とバインドブーメランハーライムの投げたバインドブーメランとソルワデスのウイングユニットの砲撃を一斉に相手にして弱音を吐いていた。
「そこに俺も加わって更に増えるんだぞ?もうグルーナさんは諦めてさっさと帰れ!」
「黙れ、元幽体離脱者。お前が、帰れ。さっきの、暴言、許さない!烈鴉、良い奴。悪口、言わない。」
さっきの道人の煽りを災鐚はかなり気にしているようだった。
「よし、来い。」
災鐚がそう言うと災鐚の背後から矢が四本飛んできた。どうやらただ逃げ回っているだけではなくて仲間の元に近づきながら逃げていたようだ。ソルワデスとヤジリウスは爪と鞘に入れた刀で飛んできた矢を叩き落とす。
「チャンス、到来。愉快。」
災鐚はこちらの連続攻撃が途切れた隙を見て木の一つに作成の左手を当てて力を木に注ぎ込む。木でできた弓矢が二十本形成され、地面に落ちる。抉られた木が道人たちに向かって倒れて来た。
「あいつ、矢を補充すると同時にこちらの妨害を…!」
道人たちは散開し、倒れてくる木を避けた。
「まずい…!奴を地面に潜らせちゃ…!」
道人がそう言うと災鐚は既に両足を地面に沈めていた。
「私に任せろ!」
ソルワデスはウイングユニットを高速で突進させ、災鐚に体当たりを決めた。
「がっ…!?」
災鐚は地面から無理矢理引っ張り出され、木に叩きつけられた。
「今だっ、おらぁっ!」
ヤジリウスは鞘から刀を抜き、災鐚に斬り掛かろうとしたが、傀魔怪堕のカラクリデュラハンが二体駆けつけ、ヤジリウスの斬撃を槍で防いだ。
「ちっ、仲間か…!」
ヤジリウスは斬るのを諦め、カラクリデュラハンから距離を取った。バインドブーメランハーライムも一旦ブーメランをキャッチした。
「作戦、変更。敵、数、減らす。それから、隠れ打つ。」
そう言うと災鐚は背後から現れた二体の白いカラクリデュラハンと共に飛んだ。
「伸縮調整。」
災鐚の身体が一回り大きくなり、白いカラクリデュラハン二人が腕に変形し、災鐚の新たな腕となった。
「妥協合身。超災将軍。」
災鐚が元々持っていた弓に二本の弓が合体し、巨大な弓になり、右手に持って着地した。
「フランスで戦った烈鴉と同じか…!」
超災将軍は近くの木を巨腕の左手で掴み、木を一本丸ごと矢に変えた。
「木を一本丸ごとって…!?豪快過ぎだろ…!?」
「驚く顔、愉快。」
「くそぉっ、気軽に自然破壊しやがって…!」
「全てはいずれ、傀魔怪堕に。地上の事、知った事か。」
道人と話した後、超災将軍は上空に矢を放った。
「…? どこに向かって…?」
「…!? 各自、散開しろ!『雨』が降る!」
ソルワデスは敵のやろうとした事にいち早く気づき、急いで道人の方に向かって飛んだ。道人を抱えてこの場から離れた。
「なっ!?ソルワデス!?」
その時、宙で矢が爆発し、無数の矢の雨が地面に向かって降り注いだ。
「…! ハーライム!」
安全地帯に着地した道人は急いでデバイスを操作し、ハーライムのヘッドをランスに変更した。ランスハーライムに姿を変えて槍を回転させて矢を弾きながら後退する。
「ちぃっ!」
ヤジリウスは已む無く鞘から刀を抜き、黒の斬撃を上空に発生させ、矢の雨をワームホールに飲み込ませた。
「愉快、愉快!」
矢の雨が降り終わると超災将軍は再び近くの木に左手を当てようとする。
「させんっ!」
ソルワデスはウイングユニットを背中に装着し、超災将軍に向かって突進。両手の鉤爪で超災将軍が左手に木を持とうとするのを妨害した。
「邪魔。お前、矢にしてやる。」
超災将軍は木ではなく、ソルワデスを左手で掴もうとする。
「ソルワデス!」
シャドーフォンフェルが上空に現れ、飛び蹴りでソルワデスへと手が伸びた超災将軍の左腕を横から弾いた。次に自分が掴まれる恐れを考慮し、すぐにソルワデスと共に離れて道人の近くに着地する。
「大丈夫でしたか、ソルワデス?」
「助かった…。ありがとう、フォンフェル。」
「…道人っ!」
潤奈とグルーナ、ルレンデスが走って道人に駆け寄って来た。
「潤奈、グルーナさん…!」
「…道人、大丈夫だった?」
「隠れて見てたよ、道とん。さっきの矢の雨、やば過ぎでしょ…。この場はさ、私が近くにいた方があいつ、あれは打って来ないんじゃない?」
「…私たちはそう判断して道人たちの加勢に来たの。」
確かにまたあの矢の雨を打って来ようもなら、奴が狙っているグルーナも巻き込む事になるから打つのは控えるかもしれない。道人は潤奈とグルーナの意見に同意した。
「でも、グルーナさん、それだと…。」
「大丈夫、私はキャロルナを呼び出して奴らに捕まらないようにするから。だから、道とんと潤奈たちは…。」
「…その間にあいつを撃退しよう、道人。大丈夫、私たちならできる…!」
「…わかった。さっさとあいつを倒すよ、潤奈!」
「…うん!」
自ら囮役を買った道人だったが、潤奈やグルーナたちが共に戦ってくれるのはやはり心強い。道人は超災将軍をどうやって打倒するか、考えを巡らせた。




