137章 グルーナと一緒に
「さて、まずは家にあった冷蔵庫の中身は確か…米はもちろんの事、卵に各種肉があって…。」
グルーナは運転しながら自宅の冷蔵庫の中身を思い出していた。
「グルーナさん、気にしなくても大丈夫ですよ。パークに滞在してたの大体一週間くらいですし…。」
「そうね、永久を追求する私が賞味期限ギリギリの物を買うはずがない…。杞憂な心配だったわ…。」
グルーナは操縦を怠らずに自画自賛する。不思議とキラキラしたオーラを周りに放っているように見える。
「そうさ、グルーナにとってそんな些細なミスはあり得ないのさ。」
「賞賛の言葉サンキュー、ルレンデス。…でも、どの道…私一人分の食糧しかないし、買い出しもしたいし…。よし、まずはスーパーに直行よ!」
グルーナは行き先を変更し、御頭デパートへと向かった。行き先を変えたといってもパークとデパートはそれ程離れていないのですぐにデパートの地下駐車場に辿り着いた。
「…走行中に街の様子を見てたけど、昨日の騒ぎは後を引いてないみたい。良かった…。」
「あのデカブツデストロイ・デュラハンが壊したビルも博士の修理ロボットがすぐに直したみたいで被害も最小限だったし、大したものよ。この街の住人のタフさも素晴らしいわ!」
昨日の騒動後の街の心配をしながらも道人たちは車から降りた。グルーナから買い物用のリュックを二つ渡され、道人は背負った。
「ごめん、ルレンデス。車の中で待っててくれる?すぐに戻ってくるからさ。」
「こんなところで永久の別れなんて嫌だよ、グルーナ…。」
「大丈夫!私たちに永遠の切れない糸はあっても、永久の別れなんてありはしないわ!なので心配はナッシング!」
グルーナの言葉に感銘を受けたルレンデスはその場で拍手を送る。ルレンデスの見送りを背に受けて道人たちはスーパーへと来た。
「…何故だかここのスーパー、久しぶりな気がする…。」
「そうだね、虎城さんたちと一緒にデパートに来てからそんなに経ってないのに何だか感覚が狂うね…。」
道人と潤奈は不思議な感覚を抱きながらもカートを押すグルーナの後をついて行く。
「道とん、潤奈、いい?賞味期限には気をつけるのよ?後、リパック品かどうかのチェックも怠らないのよ?後は…。」
グルーナはそう言いながらかなり慎重に品物をチェックし、カゴに入れていく。
道人と潤奈はカゴに入れる前に何度もグルーナにチェックしてもらい、軽く一時間くらいは掛かった。
「後は…これ!」
グルーナはギフト用の菓子箱を三箱入れてやっと買い出しがフィニッシュ。会計へと向かい、三人で協力し、持ってきたリュックに何とか買った物を収納した。菓子箱は別に入れてグルーナが持ち、リュックは道人が背負う。
「…道人、大丈夫?私も持とうか?」
「平気、平気!こういう力仕事は俺に任せてよ!」
道人はそう言ったが、潤奈は後ろから二つのリュックを少し持ち上げて一緒に歩いてくれた。
「さて、私の家に行く前に…ちょっと寄るところがあるからさ。ごめんだけど、少し付き合って!」
グルーナは両手を合わせてそう言い、道人と潤奈はグルーナの後をついて行く。イベント用の大広間に辿り着いた。
「あれ?グルーナさん!それに小さなヒーローたちじゃないか!」
いつかのグルーナのファッションショー
のスタッフが話し掛けて来た。他のスタッフたちも仕事中に関わらず、続々とグルーナの元に集まってくる。
「グルーナさん、良かった…。戻ってきてくれたんですね…。あの時、どこかに行ってしまったから…。」
「ごめんなさいね、今日やっと出所できた感じなの…。改めて、あの時はごめんなさい…!私の愚かな行動でみんなで作ったイベントを台無しにして…。」
グルーナはその場で深々と頭を下げた。スタッフたちも申し訳ない感じで慌て出す。道人と潤奈も寂しそうにグルーナを見ている。
「あの時の私に対してのみんなの気持ち、今でも忘れてない…!もう永遠に忘れるつもりはない…!だから…!」
「いいんですよ…!頭を上げて下さいよ、グルーナさん!」
グルーナは両目に涙を溜めて顔を上げる。
「結果的には怪我人もいなかったし、デパートもすぐに元通りになった!それでいいじゃありませんか!」
「そうですよ、湿っぽいのはよしましょうよ!」
「私たちの気持ちが伝わったんなら、それでいいんです!」
「また一緒にイベントして、お客さんを盛り上げましょう!」
「…ありがとう、こんな私を許してくれて…。あの…これ。お詫びと言っちゃなんだけど…。」
グルーナはさっき買ったギフト用の菓子箱三箱をスタッフに差し出した。
「…グルーナさん、残念ですけど…これは受け取れませんよ。」
「…えっ?そ、そっ…か…。」
グルーナは寂しそうに下を向いた。
「…ただし、差し入れだとしたら話は別です。これは差し入れですよね、グルーナさん?」
「えっ…?」
スタッフたちは笑顔でグルーナの返答を待っていた。
「…ふふっ、そうよ。これは差し入れ…。みんな、今日もイベント頑張ってね!」
「はい!」
スタッフはグルーナから喜んで菓子箱を貰った。
「おっしゃぁーっ!みんなぁっ、グルーナさんからの差し入れを頂いたぞぉ〜っ!ちょうど昼飯だぁ〜っ!」
「「「おぉーっ!」」」
スタッフはグルーナからもらった菓子箱を上に持ち上げてスタッフ皆で喜びを分かち合った。
「さぁ、グルーナさんたちも一緒に食べましょうよ。」
「そうしたいんだけど…ごめんなさいね、他にもたくさん詫びたい人たちがいるから…。」
グルーナは振り向いて道人と潤奈を見た。
「そうですか、先約があるんなら仕方ないですね。今度は我々から食事に誘わせて下さい。だから、遠慮なく、また来て下さいね、グルーナさん。小さなヒーローたちもな!」
スタッフはサムズアップし、道人たちはそれを見て温かな気持ちに包まれて駐車場を目指した。
「グルーナさん、水臭いですよ。ああいう事するんだったら俺らに事前に言ってくれても良かったのに…。」
「…そうですよ、私たち手伝いますから。一人で抱えたら駄目ですよ?」
「ありがとう、マイフレンドたち…。まだ私は遠藤花子や他のコンテスト参加者にも詫びないといけない…。」
遠慮花子とはグルーナがダビングルレンデスの力でフィルムケースに閉じ込めてしまった人だ。今現在、彼女は何事もなく暮らしているらしい。
「私の罪はエターナル…。消える事は決してないわ…。こんな私にあなたたちは付き合ってくれるというの…?」
道人と潤奈は無言でただグルーナに笑顔を向けた。
「…そう。ありがとう、私を引き止めてくれた最高の仲間たち…。」
グルーナはまた溜まった涙を手で拭って歩いた。
「道とん、リュック一つだけ私に持たせて。私もやっぱり持って歩きたい…。」
グルーナはそう言うと重たい買い物リュックを一つ道人から受け取って背負った。
「重たいな…。でも、それでも歩いてみせるから…。」
『素晴らしい…。そして、美しい…。』
「…? 道とん、潤奈?何か言った?」
「えっ?何も?」「…言ってませんよ?」
「んん?幻聴かな…?ま、いっか!」
道人たちはグルーナに歩調を合わせて駐車場へと向かう。駐車場に着くとルレンデスが手伝ってくれてワゴンにリュックを乗せた。エンジンをかけ、駐車場を出てグルーナの家を目指す。
「グルーナさん、たくさん食材を買いましたけど、昼は何を作るんです?」
「ふふん、実はまた潤奈の好物のミスパトに挑戦しようと思ってるんだよねぇ〜。」
「…ミスパト!」
潤奈は好物の名前を聞いたからか少しテンションが上がった。
「この間のパーティで作ったものよりももっとすごいのを作っちゃうんだから!楽しみにしてなさい!」
「…はい、楽しみにしてます!」
ご機嫌な潤奈の隣で道人はスマホを取り出して確認した。愛歌からメッセージが来ていた。どうやら愛歌たちが狸の夢から目を覚ましたようだ。
「あ、愛歌からメッセージ来てる。」
「…あ、私にも来てた。」
潤奈もスマホを取り出して確認した。
「何々…『ずっこいぞ、道人』。」
「…こっちは『ずっこいぞ、潤奈』…。」
「わざわざ別々に送るものかね…。自分たちも狸の遊園地で遊んで…あ、そっか…!」
道人は自分で話しててある事に気づいた。
「…どうしたの、道人?」
「狸だよ!潤奈、覚えてる?あの世界で大神さんがアイス買ってきた時、味覚あったよね?」
「…うん、あったね。冷たくて美味しかったな…。」
「それで狸にさ、潤奈の記憶を調べてもらってミスパトを再現してもらえば…。」
「…あっ、そっか!それならみんなにどんな味なのかを伝える事ができる…!」
道人と潤奈は互いに目を輝かせて見つめ合った。
「道とん、天才か…。味さえわかればこっちのもんよ!よぉ〜し、そうとわかったら今度は絶対に狸の記憶再現世界に私も行くんだから!でも、それと今日は別!今日は今日でミスパトチャレンジはやっちゃうんだからっ!」
グルーナは張り切って車を運転し、やる気を向上させた。新たな未来への楽しみが増えた道人たちは心を躍らせながらもグルーナ宅を目指した。




