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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第1部 始まりのディサイド
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1章 デュエル・デュラハン

「道人、ひどいなぁ〜っ。あたしのヘッドチェンジコンボ、うまく決まったのに寝ちゃってたなんてぇ〜っ!」


 愛歌の声を聞いて道人は急いで寄っ掛かっていた壁から上半身を離し、状況把握を開始した。愛歌と大樹は机の上でデュエル・デュラハンのカードゲームで遊んでいたみたいだ。

 「デュエル・デュラハン」。道人たちが住んでいる東京都門字市(もじし)御頭街おがしらまちで一年前から急速に流行っているバトルホビーだ。テーマパークも開業されていて今やデュエル・デュラハンの聖地みたいな場所になっている。

 どういうゲームかというと自分のスマホ内のデータユニット、「デュラハン」をミニバトルフィギュア、カードゲーム、テレビゲームなどの媒体(ばいたい)に転送して闘わせるゲームだ。

 デュラハンとはアイルランドに伝わる首無し騎士の事で、それが元になっている。

 どの媒体もルールは異なるが、基本的にはプレイヤーが多くあるデュラハンの頭部パーツを戦闘中に三回まで付け替えられる事になっていて、頭と追加パーツで姿を変えたデュラハンたちを闘わせるというものだ。一つの頭が維持できるのは三分まで。三つの頭を使い切って九分を超えてしまった場合、首無しで闘う事になり、不利になってしまう。だからって負けが確定って訳じゃなく、プレイングによってはその状態でも勝てる可能性はまだある。プレイヤーによっては頭パーツを一度も使わずに勝つという拘りを持ってプレイする人もいるという。他にも対戦はせずに育成だけを楽しむ事もできたり、色んな楽しみ方があるゲームだ。


「ごめんごめん、気づいたら眠っちゃってた…。」

「まぁ、いいわ!また同じコンボ決めてみせるから!今度はちゃんと見ててよ?」


 彼女は城之園愛歌(じょうのえんあいか)。道人のご近所さんで幼馴染。ピンク髪のセミロングヘアで青い上着とミニスカートを着た元気な女の子だ。


「お?言ったな?俺相手に同じコンボは決めさせんぞい!」


 彼は千葉大樹(ちばたいじゅ)。デュエル・デュラハンの繋がりでできた友達。逆立った茶髪に白いハチマキ、武者がプリントされた黄色い半袖シャツ、袖に腕を通さずに両肩に上着をかけた男の子だ。

 このニ人と道人は中学の帰り道、学校の近くにある大樹の家に集まって、ほぼ毎日デュエル・デュラハンで遊んでいる。大樹の家にはデュエル・デュラハンのグッズがたくさんあり、デュエル・デュラハンを存分に楽しむ事ができるのだ。


「あぁ〜っ!?負けちゃった!よし、道人交代!あたしの仇、お願い!」

「よし、わかった!任せてよ!」


 もうすっかり目を覚ました道人は愛歌がどいた畳に座り、大樹と対面した。


「おっと、道人!ここいらで遊び道具を変えようぜ!お前さんとはテレビゲームで相手してやる!準備じゃ!」


 大樹は素早い動きで対戦用のダブルモニターテレビの電源をつけて専用のゲーム機の端子を接続し、道人と大樹のスマホをコントローラー登録した。


「準備完了!さぁ、デュラハンをインストールじゃ!来い!ルートタス!」

「うん!行くよ、ハーライム!インストール!」


 テレビ画面にニ人のデュエル・デュラハンが映し出された。道人のデュラハンは両刃の斧を持った緑色の騎士型タイプ、大樹のデュラハンは右手にマシンガンを持った重装甲の黄色い戦士型タイプだ。


「ルールはスタンダートでいいな?バトルフィールドは岩山!先に相手を戦闘不能にした方の勝ちじゃ!」

「うん!OK!」


 道人は右カーソルを軽く連打しながら返事した。ロードが終わり、バトル開始のカウントダウンが始まった。


 『3 2 1 Dullahan fight!』


「速攻!ルートタスにキャノンヘッドをヘッドチェンジ!キャノンルートタス!」


 大樹がスマホにコマンドを入力するとルートタスの胸にあった亀の顔が白目になり、新たに装着された顔に視界が移動。追加パーツで足が二足歩行からキャタピラに代わり、右肩にキャノン砲が追加された。


「ターゲット、ハーライム!ファイア!」


 キャノン砲から轟音が響き、火の玉がハーライムに向かって飛んでいく。


「何の!大樹がお気に入りのキャノンヘッドを速攻で使うのは読んでた!」


 道人がゲーム開始前から右カーソルを連打していたのは砲撃を避けるためだった。砲撃をかわしたハーライムの背後で大爆発が起きる。


 「よし、今だ!ハーライム!ブーメランヘッドにヘッドチェンジ!ブーメランハーライム!」


 ハーライムの胸の顔が新たな胸パーツで隠され、新たな頭に視界が移る。刃のついたブーメランを右手に持ってすぐさま投げた。


「今ならルートタスは砲撃の反動で動けない!行けぇっ!」


 ハーライムの投げたブーメランは真っ直ぐに飛び、ルートタスに直撃した。少し後ろに浮かんだが、姿勢は崩さなかった。


「お前のブーメラン攻撃こそ、何度も見てるからなぁっ!吹っ飛ばないように重装甲のデュラハンを選んで正解じゃった!さぁ、反撃じゃ!」


 ルートタスがまたキャノンを撃とうとした時、ハーライムがもう目の前にいて弾かれたブーメランを回収していた。


「何っ!?いつの間に!?」

「ブーメランを投げた後、すぐにハーライムを前に走らせていたんだ。それ!」

「ルートタス!」


 ルートタスはマシンガンで反撃するが当たらず、ハーライムはブーメランを刃物として振り回し、ルートタスのキャノン砲を斬った後、キャタピラに突き刺した。


「やりおったぁ〜っ!?」

「道人、やるぅっ!」


 大樹は右手を額に当て、愛歌は右手で指を鳴らした。


「よし、今だ!ランスヘッドにヘッドチェンジ!ランスハーライム!」


 ブーメランの装備が消え、新たに現れた頭を装着。槍を振り回し、構えた。ルートタスに刺さったブーメランも消えるが、とどめを刺すには十分だ。


「行っけぇーっ!」

「何の、まだじゃ!ヘッドチェンジ!シールドルートタス!」


 ルートタスの頭が分厚い装甲の顔に変わり、キャタピラから足に戻り、巨大なシールドが左手についてギリギリでハーライムのランスを弾いた。


「…やるね!」

「お前もな!」


 お互いに横を振り向き、顔を見合った。


「これでニ人ともヘッドチェンジをニ回使っちゃったから、次が最後のチェンジ…。もう決着は近いね。」

「そうネ、闘いの参考になるワ。」

「…?誰?」


 道人と大樹は愛歌が喋った後に聞いた事のない声が聞こえたので後ろを見た。周りを見ても自分たち三人しかいない。


「あ、あたしの声だよ?気にしない、気にしない!さぁ、続けて続けて!」


 愛歌は何故か焦っていてゲームの再開を催促した。道人と大樹は気を取り直してまたテレビを見た。ルートタスがマシンガンを乱射し、ハーライムは後ろに下がって岩陰に隠れた。


(今のルートタスは右手にマシンガン、左手にシールド…。近接武器の槍じゃ不利だ…。ヘッドチェンジは後一回…。どうする…?)


 道人はルートタスを倒す策を見つけ出そうとしていた。こうしている間にもランスヘッドの時間切れが迫ってくる。


(ええい、こうなったら…!マシンガンの弾切れを待って、リロードの隙を狙う…!)


 ランスヘッドの時間切れまで後一分の所でルートタスの銃撃が止んだ。


「今だ!ヘッドチェンジ!ダブルブーメラン!」


 ハーライムにV字マークのついた頭が新たに装着され、両手に両刃のブーメランを持った姿に変わった。右手に持ったブーメランを即座に投げたが、ルートタスはシールドで防御した。


「よし、防いだ!とどめじゃ!」


 ルートタスはマシンガンを構えるが、前にハーライムの姿はなかった。


「何っ!?どこ行った!?」

「上だぁぁぁーっ!」


 ハーライムは最初のブーメランを投げた後、すぐに空高くジャンプしていた。


「もらったぁっ!」


 残ったブーメランでルートタスを斬り下ろす体勢を取り、落下する。その時だった。どこか遠くで雷が鳴った後、急に部屋が暗転し、テレビが真っ暗になった。


「はぁっ!?」


 道人と大樹は思わず大声を上げた。


「えぇっ…?せっかく勝てそうだったのになぁ〜。」

「俺にもまだ最後のヘッドチェンジが残されておったのに!どういう事じゃ!?」


 道人は窓から外を確認したが、雲一つない夕焼け空だった。


「雲一つないのに雷…?何で…?」


 大樹がブレーカーを確認しに行こうとした瞬間、部屋の電気が元に戻った。お互いにスマホを確認し、ハーライムもルートタスも強制ログアウトで無事だった。テレビもゲーム機も確認したが壊れていないようだ。


「ええい、これじゃ不完全燃焼じゃ!もう一戦やるぞい、道人!」

「僕も再戦したいけど、その前にニュースを確認しよう。さっきの停電の事が知りたいし。」


 大樹はそれはそうだと頷き、スマホで検索を始めた。


「…今の、まさか…。」

「今、博士たちが調べてるワ。落ち着いテ、愛歌。」


 愛歌が何か小さな声で呟いていた。


「ん?愛歌、どうしたの?」

「い、いや。何でもないの。気にしないで…。」


 道人は愛歌の様子を不思議に思いながらも大樹と一緒に停電の情報を調べた。

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