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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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129章 広がる可能性

 道人とソルクロー・ジークヴァルス、ウェントとクロノスフィアアレウリアスは対峙し、互いに武器を構える。その様子を地上で愛歌たちは見ていた。


「行くぜぇっ、道人ぉっ!」


 ウェントが先に突撃し、光の槍を右手に出現させて道人に襲い掛かる。道人は右手に持ったメタリー・ルナブレードで受け止めた。


「父さん、待ってて…!必ず助けるから…!」


 道人と鍔迫り合いをするウェントは一瞬不快な顔をするが、すぐに笑みを浮かべる。


「…道人、確かに俺は豪を元にして作られた存在で、その遥か過去の先祖の記憶も力も継承している…!けどなぁっ!」


 ウェントは左手にも光の槍を出現させて二槍流になり、道人に対して連続突きを繰り出す。道人はメタリー・ルナブレードとディサイドシールドでウェントの猛攻を防ぐ。


「この身体の持ち主は俺だ!過去から受け継いだ能力は俺が生まれ持った才能が継承した…!俺自身が掴み取った力だ…!だが、記憶はいらない!大昔の奴らの記憶など、俺には全く興味がない!俺はこの世界に間違いなく存在している…!だから、俺に父の姿を重ねるのは…やめる事だなぁっ!」


 ウェントは蝶の羽から光の鱗粉を撒き散らした。道人は鍔迫り合いを止めて後ろに下がった。ブレードフェザーを円の形に配置し、ジャイロ回転させて鱗粉を吹き飛ばした。


「その、せっかく自分の才能で受け継げられた力でやる事がこれなのかっ!?戦う事以外で自分を表現するつもりはないのかっ!?」

「何を世迷い事を!視界共有、蝶の羽、光の槍、鉄の腕、そして腕の巨大化…!これ程戦いに特化した能力はない!俺はこの力で神となり、世界を掌握する…!そして、悠々自適(ゆうゆうじてき)なのんびりライフの始まりさ!そうだなぁっ、それからなら戦い以外の方法で活用できないか考えてやるよ!」

「それだともう遅いんだよぉぉぉぉぉーっ!!」


 道人とウェントは高速で飛び回り、剣と光の槍を激しくぶつけ合いながら飛行する。


「道人!」

「人の心配より自分の心配をしたらどうだ?」


 クロノスフィアアレウリアスは右手にギャラクシーオーバーブレード、左手にデストラグルランスを持ってソルクロー・ジークヴァルスに突撃。周りのシャドールナブーメランを一斉に実体化させて斬り掛かった。


「モードチェンジ!拡散レーザー、スタンバイ!」


 ソルクロー・ジークヴァルスは両肩のキャノンのモードチェンジを宣言し、変形させた。


「発射ぁっ!」


 ソルクロー・ジークヴァルスは両肩のキャノンから細い無数のレーザーを発射。実体化したシャドールナブーメランを撃ち落としながら後退する。同時に向かってくるクロノスフィアアレウリアスへの牽制にもなった。


「曲がれっ!」


 ソルクロー・ジークヴァルスが左拳を強く握ると無数のレーザーが曲がってクロノスフィアアレウリアスに向かっていく。


「ちぃっ!」


 クロノスフィアアレウリアスはギャラクシーオーバーブレードとデストラグルランスでレーザーを捌いていく。クロノスフィアアレウリアスの増援に来たクバリダスが無数のレーザーに直撃し、消滅。ウェントのスマホへと戻っていった。


「貴様、我が相棒クバリダスを…!許さん!」


 クロノスフィアアレウリアスはデストラグルランスをソルクロー・ジークヴァルスに向かって投げ、レーザーの発射を止めさせる。その隙を見て新たにデストラグルブレードを持ち、ソルクロー・ジークヴァルスの元まで飛ぶ。


「道人、自分のその姿を見てみろよ!お前だって突出した力を持っているじゃないか!それを戦いに使っている!」

「それはお前たち、バドスン・アータスが攻めて来ているからだろう!?」

「被害者面だな!遠慮するな!自分の力に酔いしれろよ、道人…!力を自由に震える楽しさを理解するんだ…!そして、俺の一部となれ!」

「断る!何故なら、この身体は俺の物でもあるが、俺だけの物でもないからだ!」


 道人とウェントは互いに攻撃を中断し、宙に静止する。


「…? 何を言っている…?」

「俺はさっき、愛歌や深也たちを守るためにお前の誘いに乗ろうとした…。それでみんなが助かるなら、俺はそれで構わないと自分の身を差し出そうとした…。でも、ジークヴァルが引き止めてくれた…!俺がやろうとした事は今までの積み重ねを否定する事だと必死で止めてくれたんだ…!」


 道人はジークヴァルの掛けてくれた言葉を改めて実感するためにメタリー・ルナブレードを持つ手を強く握る。


「その時、俺は思った…!俺の命はもうジークヴァルとも繋がっている…!愛歌や深也、潤奈、大樹…今まで出会ってきたみんなとも繋がっている…!そう言った繋がりが俺の身体の価値を変えていってくれる…!だから、俺はお前の一部には絶対にならない!なってたまるものかっ!」

「よく言った、道人!その通り!」


 愛歌が地上から大声で叫んだ。


「あたしだって、道人一人が犠牲になって得られる平和なんてごめん被るんだからっ!」

「またそんな事考えてみろ!俺がぶん殴ってでも止めてやるぜ!」


 深也も語気は荒いが、嬉しそうに愛歌に続いて叫んだ。


「ははっ、もうヘッドを使い切った雑魚たちが何を言う!」

「使い切ってないし!まだダーバラが残ってるもん!」

「へぇっ、未だに対抗するためのヘッドを決め兼ねてるくせにか?」


 愛歌はウェントにそう言われ、右手に握ったダーバラのデバイスを震わせる。


「愛歌や深也たちは雑魚なんかじゃない!俺の仲間たちを侮辱する事は俺が許さないぞ、ウェント!」

「もう戦いに置いていかれてる奴らを侮辱して何が悪い!?」

「ディサイドに、俺たちの強さに行き止まりはない!俺が今、それを証明してみせる…!」


 道人はそう言うとメタリー・ルナブレードを腰に掛け、一枚の白紙のカードを実体化させた。


「俺は今、未来をこの手に掴む!DUNAMISよ!俺たちに今一度チャンスを与えよ!」


 道人は白紙のカードを輝かせ、二枚目のDUNAMISカードが実体化した。


「DUNAMIS発動!プラスヘッド、リカバリー!」

『TEAM 『D』DUNAMIS』


 二枚目のDUNAMISカードは飛び回り、ディサイド・シールドについた二つのデバイスにスラッシュされた。トワマリーのデバイスとランドレイクのデバイスが発光する。


「な、何…?」


 愛歌はダーバラのデバイスを腰ベルトに一旦掛け、深也と共にデバイスを確認するとヘッドチェンジが一回分回復していた。


「マジかっ!?ヘッドチェンジが後一回できるぜ…!」

「すごい…!これが道人の新たな力なの…?」

「違うぞ、愛歌!これは俺たちのディサイドが引き起こした奇跡!みんなの力なんだ!さぁ、俺と一緒に戦ってくれ!」


 道人の言葉に頷き、愛歌と深也はデバイスを構えた。


「トワマリー、あたし…。」

「わかってル!ディサイドヘッドで行こうヨ、愛歌!何かそんな気分だシ!」


 愛歌はトワマリーに笑顔で頷き、ディサイドヘッドカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。


『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』


 トワマリーはエタニティアトワマリーに姿を変えて愛歌の近くに浮遊する。


「良いねぇっ!やっぱりトワマリーはその美しい姿がしっくり来るよ!」


 ダーバラは久々にエタニティアトワマリーを見て高ぶっていた。


「続けて!」


 愛歌はトワマリーのデバイスを一旦、腰ベルトに掛けてダーバラのデバイスを手に取る。


「ダーバラもディサイドヘッドで行く!もう決めた!」

「あぁ、異論はないさね!」

「ヘッドチェンジ!グレンフェニックス!」

『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』


 ダーバラは四枚羽になり、ウイングを真っ赤に燃やす。不死鳥をイメージさせる頭と鎧を身に纏った姿となった。


「へぇっ、紫炎は卒業して真っ赤な情熱の炎かい!悪くないねぇっ!」


 グレンフェニックスダーバラは燃える扇子を口元に当て、エタニティアトワマリーの隣に浮く。


「行くよォッ、ダーバラ!」

「どっちが美しい舞えるか、勝負さね!」


 エタニティアトワマリーとG(グレン)P(フェニックス)ダーバラは共に飛び上がり、クロノスフィアアレウリアスの元へと向かった。深也とランドレイクの近くにクジラが出現する。


「クジラァッ!てめぇ、何で呼んでも出て来なかった!?」

「もうヘッドを使い切ったからだろうに。まぁ、いい。追試と行こうか。」

「良かったな、船長。追試を受けられるぜ。」

「はっ、こんなに嬉しいと思えた追試はないぜ!行くぜ、ランドレイク!」

「おう!」


 クジラは再び青いエネルギー体になり、深也はデバイスと合体させた。


「行くぜ、プロトビーストヘッド、レディ!」


 深也はそう言うとディサイドデバイスに青いエネルギー体を合体させた。


「プロトビーストヘッド、エヴォリューション!」


 深也がディサイドデバイスを前に出すと青いエネルギー体が照射され、ランドレイクはエネルギー体でできた装甲を再び身に纏った。


「さて、今度はどうするか…。」

「ランドレイク、悪魔の羽を生やして飛べ。」

「な、何?それって、どういう…?」

「何、トラウマ克服…ってやつだ。悪いが、付き合ってくれるか?」

「…へっ、あたぼうよ!俺は船長の船!とことんまで付き合ってやるぜぇっ!」


 そう言うとランドレイクは悪魔の羽を生やし、空を飛んだ。今この場にいるディサイド・デュラハンたちがクロノスフィアアレウリアスの元へと集った。


「…はっ、はっはっはっはっ…!」


 ウェントは自分の笑顔を左手で覆い隠し、上を見て高笑いした後、道人を見る。


「やっぱ最高だよ、道人!お前は何を仕出かすかわからない…!そこがお前の美徳だよ、道人ぉっ…!ますますお前が欲しくなった…!いいだろう、過去を統べる俺と、未来のあらゆる分岐を掴み取る道人!どっちが強いか、勝負と行こうじゃないかぁっ!」

「行くぞ、みんな!ウェントに示そう!俺たちのディサイドを!」


 道人たちは一斉に武器を構え、ウェントとクロノスフィアアレウリアスに襲い掛かった。

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