127章 秘剣 メタリー・ルナブレード
「すまない、遅くなった!大丈夫か、ジークヴァルとやら!」
グレリースはランドレイクたちが、ルアンソンはトワマリーたちが相手をする事になったため、ソルワデスは人型形態に戻り、ジークヴァルに肩を貸した。
「す、すまない…。助かる…。」
「いいか?少し飛ぶぞ。」
ソルワデスは博物館の入り口まで高速移動し、ジークヴァルを建物内に避難させた後、またすぐ外に出た。
「助太刀するぞ、侍殿!」
再び飛行形態となったソルワデスはDアレウリアスに押され気味のヤジリウスに向かってビームで援護射撃を行った。
「ありがてぇっ!俺の名はヤジリウスだ!」
「乗れ、ヤジリウス!」
Dアレウリアスがソルワデスの二つのビームを避けるために後ろに下がった隙にヤジリウスはソルワデスに飛び乗った。アレウリアスは時間切れで元の姿に戻る。
「ウェント、次のヘッドだ。」
アレウリアスはウェントに次のヘッドを要求したが、道人と交戦中だった。道人の両手のガントレットとウェントの鉄の拳が金属音を響かせながら激しく拳をぶつけ合う。
「悪いな、アレウリアス!ちょっと待っててくれ!道人のラッシュ攻撃がなかなかのものでさぁっ!」
ウェントは蝶の羽を出現させ、道人に向かって光の鱗粉を飛ばした。
「ぐっ…!?」
当たると火花を散らす鱗粉を道人は制服バリアで守りながら後退する。
「お待たせ、アレウリアス!」
アレウリアスは空から放たれるソルワデスのビームとヤジリウスの黒の斬撃を辺りを動き回りながら回避し続けて、ダブルビームピストルで応戦していた。ウェントは右手にデバイスを持ち、カードを実体化させる。
「させない!」
道人は咄嗟にメタルブーメランを取り出し、ウェントに向かって投げた。
「まだスナップが甘いな、道人!」
「うっ…!」
道人はウェントが豪を元にしたヒューマン・デュラハンと知ったため、今の発言が豪のものかどうかを気にしてしまったが、すぐに気持ちを切り替えた。ウェントはメタルブーメランを掴んだ後、投げ返してきた。道人もメタルブーメランをキャッチする。その隙にウェントはカードをデバイスに読み込ませた。
「ヘッドチェンジ!ギャラクシーオーバーブレード!」
アレウリアスは新たな真っ黒な鉄仮面と鎧を身に纏い、黒騎士へと変わる。宇宙空間のような刀身の大剣を右手に持ち、裏地が赤い黒きマントを風に揺らす。
「ウェント、クバリダスを出せ。」
「はいよ。クバリダス。」
ウェントはスマホから光の玉を出し、クバリダスを出す。GOBアレウリアスはクバリダスに飛び乗って空を駆ける。
「気をつけて、ヤジリウス!あの剣は…!?」
「わかってる、ソルワデス…!見た目だけでやばさが伝わってくるぜ…!」
「当然だ。これは貴殿に対抗するために新たに得たヘッドだから…な!」
GOBアレウリアスは大剣で空を斬ると刀身から三つの流星が発射され、ヤジリウスとソルワデスを襲う。
「俺の事を意識してくれてんのは嬉しい…いや、嬉しくねぇな!」
ソルワデスが高速移動しながら流星を避け、ヤジリウスは抜刀して黒の斬撃を飛ばすが、流星を一つ消すのがやっとだった。GOBアレウリアスは何度も大剣を振り、流星群を飛ばしまくる。
「くっ、ドラグー…!」
「出させると思うか、道人?」
道人はドラグーンハーライムを右腕のガントレットにつけたデバイスから呼び出そうとするが、ウェントに妨害された。ウェントは両手の鉄の拳で殴り掛かって来る。
「ほらほらぁっ!」
ウェントは右手を巨大化させて掴もうとする。
「同じ手に掛かってたまるか…!」
「よし!じゃあ、新しい手で行こうか!」
ウェントは左手を横に振ると光の槍を出現させ、道人に向かって投擲した。制服バリアを貫通し、突き刺さった。
「なっ…!?」
「道人のご先祖様たちって何者なんだろうな?こんな芸当までできてさ!」
確かに気になるが、今はそんな事を考えている場合じゃない。ウェントはまた光の槍を作って投擲してきた。道人は逃げようと思った瞬間、心臓の鼓動が一瞬強くなった。この感覚を経験したのはこれで三度目だ。
「よし、行くぞ!フューチャースライド!」
道人がそう叫ぶと白銀の騎士甲冑を身に纏う。マントが装着され、光の羽が生え、辺りに羽を散らばした。ソルワデスと新しくディサイドしたため、左腕もガントレットになっている。
「おっ!へぇっ、それがフューチャースライドって奴か…!お手並み拝見…!」
道人が飛んできた光の槍を何とかしようとした時、博物館の中から光が突然飛んできた。
「おっ!?な、何っ!?」
飛んできた光はウェントが投げた光の槍を弾き飛ばした後、道人の右手に強制的に持たされた。
「こ、これってさっきの剣…?」
討論会が始まる前に博士や潤奈、グルーナと一緒に見に行った博物館の展示品の一つ。刀身に文字が書かれたボロボロの剣だった。道人が握るとボロボロの剣は新品同然の剣に変化した。
「…? 何だ、道人?その剣は…?」
「な、何が…?」
道人の脳裏に謎の記憶が流れ込んできた。この剣の使い手らしき人物が戦っている記憶だった。
「メ、『メタリー・ルナブレード』…?それが、この剣の名前…? …と、とにかく!来い、ドラグーンハーライム!」
『Second cange』
ウェントがメタリー・ルナブレードに気を取られている隙に、道人は右腕のガントレットについたデバイスからドラグーンハーライムを実体化させた。
「ハーライム、ヤジリウスとソルワデスの援護を!」
「わかった、任せておけ!」
ドラグーンハーライムは飛竜に変形し、ウイングの小型プロペラから緑の竜巻を二つ発生させてGOBアレウリアスの流星群攻撃を妨害した。
「ありがとよ、緑野郎!」
「三人で挑むぞ!いいな?」
「わかりました。」
「ふん、一体増えたところで…。」
ドラグーンハーライムとソルワデスが飛行形態で飛び回り、クバリダスに乗ったGOBアレウリアスを翻弄する。
「ヒッヒャァッ!行くぜぇっ!」
ヤジリウスは空中で飛び跳ねながらドラグーンハーライムとソルワデス、交互に足場を変えながら、その度に抜刀の構えを取って色んな角度から斬撃を飛ばした。
「くっ、すばしっこいな…!」
「おらおら、どんどん行くぜぇっ!」
ドラグーンハーライムとソルワデス、クバリダスに乗ったGOBアレウリアスは高速で飛び回り、黒の斬撃と流星群を何度も放ち合う。
「さぁて、俺も加勢するか…。」
ウェントは蝶の羽を生やし、飛ぼうとする。
「…! 行かせるかっ!」
ウェントがGOBアレウリアスと合流すると視界を共有してしまう。道人はそれを阻止するため、光の羽を羽ばたかせてブレードフェザーを放った後、メタリー・ルナブレードでウェントに斬り掛かった。
「素人丸出しの、付け焼き刃の剣技で何ができる、道人!」
ウェントはブレードフェザーを蝶の羽で弾いた後、光の槍を出現させて投擲した。
「はぁっ!」
道人はメタリー・ルナブレードを振ると光の槍を最も簡単にぶった斬れた。
「…!? すごい斬れ味だ…!?これなら…!」
道人は剣を構えて前に跳んだ。ウェントの身体を斬ったら豪の命を脅かし兼ねない。
「はあぁぁぁぁぁーっ!!」
道人はメタリー・ルナブレードでウェントの蝶の右羽をぶった斬った。
「ちぃっ…!」
ウェントはメタリー・ルナブレードを警戒し、道人から距離を取った。
「無駄だぞ、道人!この羽はエネルギー体でできた羽だ!何度でも生やせる!」
「だったら、何度でも斬り落としてやるだけだぁっ!」
道人は両手でメタリー・ルナブレードを持ち、ウェントに切っ先を向けた。
「ウェント、エイプリルが…!?」
SFグレリースがエイプリルを両手で抱えて跳んできた。
「…な、何で…?何で、私のために…そこまで…。」
エイプリルは自分の顔を両手で抑えて震えていた。エイプリルは芽依でもあるため、道人も思わず気にかけてしまった。深也とランドレイクも駆けつけて様子がおかしいエイプリルを見る。
「これは…。ハクヤは?」
ウェントは愛歌たちと交戦中のハクヤの方も見た。
「…わた…俺は、何故…?何故?愛歌とのやり取りに反応したんだ…?下らない、馴れ合いのはずなのに…。」
ハクヤも戦えてはいるが、動揺を隠せない様子だった。
「あちゃーっ、まずいな、こりゃっ…。まだ二人共、生まれたばかりだからな…。…しゃあない。エイプリル、ハクヤ、お前たちは帰還しろ!」
「…! ウェント…!?何言って…!?私はまだ…!」
エイプリルは身体を震わせながらもウェントに反論しようとする。
「相手の心を揺さぶるために作られたヒューマン・デュラハンが揺さぶるはずの相手に逆に動揺させられるなんて本末転倒だろ?愛歌と深也の芯の強さの方が一枚上手だったって事だ…。やるねぇ…。」
ウェントは指を鳴らしてアレウリアスに合図を送った。
「お前たち二人は帰って再調整する必要がある。何、初陣にしてはよくやったさ。次、また頑張ればいいさ。」
「…わかったよ。私もまだやりたい事あるしね…。ハクヤ!」
エイプリルがハクヤの名を呼ぶとハクヤと JBルアンソンはカクテルを作りながら移動していたが、ウェントの元に向かう。
「…次は繋がりを立つぞ、愛歌…。」
「あっ、ちょっと!」
「待ちやがれ、まだ…!」
愛歌と深也の静止も聞かず、ハクヤと JBルアンソン、エイプリルとSFグレリースは一箇所に集まった。
「ウェント、お前も…。」
「悪い、先に帰っててくれ、ハクヤ、エイプリル。俺はまだやる事があるんだ。」
ウェントはハクヤとエイプリルに笑顔を見せた。
「…全く。遊びも程々にしろよ?」
「いいから、いいから!な?」
ハクヤは愛歌と深也に向かって泥のドラゴンとゼリーのドラゴンを足止め役とし、 JBルアンソンはハクヤを抱え、SFグレリースはエイプリルを抱えたまま空高く飛んでいった。エイプリルは深也の足元近くにレーザー銃を放って追って来ないように牽制した。
「パパ…。」
「芽依…ちぃっ!」
ランドレイクは冷凍ミサイルを放って泥のドラゴンとゼリードラゴンを氷漬けにし、トワマリーたちと共に砕いた。
「さて、そろそろ祭も締めるとしますか!
でも、せっかくの新たなる戦いの幕開けなんだ、もうちょっと楽しまないとなぁっ!さぁて、道人!面白い頭を見せてやるよ!『リミッター・デストロイ・ヘッド』。」
ウェントがそう言うと禍々しい黒い炎で燃えたカードを右手に持つ。ウェントが名を読んだカードは以前公園での戦いで聞いた覚えがあった。
「なっ…!?アレウリアスはもう三回ヘッドを使い切ったはずなのに…!?」
「それは従来のデュエル・デュラハンやディサイド・デュラハンの話だろ?カウンター・ディサイド・デュラハンは違うんだよ。」
「何っ…!?」
「さて、使用制限は一体いくつかな?」
ウェントはデバイスにリミッター・デストロイ・ヘッドを読み込ませた。
「ふん…。ウェント、あれを使うのか…。まぁ、いいだろう…!」
アレウリアスは元の姿に戻った後、クバリダスから飛び上がった。虚空から機械天使と機械悪魔が現れ、バラバラになり、アレウリアスの新たな鎧になる。右に天使、左に悪魔の羽がついた六枚羽の堕天使となり、胸の鎧には不気味な血走った眼がついた。赤いオーラを漂わせた禍々しい血染めの鎧を纏ったアレウリアスが宙に浮く。
「な、何だ…?こ…。」
ヤジリウスが何かを話す前にアレウリアスは鎖に巻かれた鞘から剣を抜き、横に一閃した。
「い、つぅ…!?」
「ハーライム、ヤジリウスッ!!」
道人の叫びが轟く中、ヤジリウスを乗せたドラグーンハーライムに向かって巨大な銀河の斬撃が襲い掛かった。




