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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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125章Side:卒間 前編 君のための決心

「シユーザーが新たなジェネラルに…?その出世祝いとでも言うつもりなのか、この襲撃は…?だとしたら、冗談ではない…!」


 卒間はドローン越しに大樹とカサエルと共にレイドルクから聞いた話が頭から離れないものの、司令室で司令官としての務めを果たしていた。


「はい、今現在も街中ではバドスン・アータスの兵たちが徘徊している状況です。ですから…。」

「一般市民の皆さん。どうか慌てず、他の方々に迷惑の掛からぬよう、係員の指示に従っての行動を…。」


 大神と流咲がドローンを介して避難指示アナウンスや市民たちからの質問に答えている。虎城は街中に飛ばしたドローンで戦っている道人たちの戦況確認をやりながらデュラハン・パーク全エリアの社員たちへ連絡の受け答えをしていた。彼女たちは額に汗を掻きながらもオペレーターとしての職務を全うしていた。


「司令、わしじゃ。聞こえるか?」


 博物館にいる博士から通信が入った。卒間もこうやって休む暇もなく、道人たちD・D FORCEやお偉いさん方の通信に対応しながらも御頭街(おがしらまち)の被害・避難状況を確認している。


「博士か。どうだ、そちらの様子は?」

「わしは博物館内で横島博士や逃げ遅れた人たちと一緒におる。外の様子はわしにもわからんのじゃが…。激しい戦闘音は室内にいても聞こえておるわい…。まだ外に出るのは難しいじゃろうて…。道人君たちの足を引っ張る訳にはいかんからな…。」

「そうか…。こちらでも道人君たちの戦闘状況は確認している。何かわかった事や進展があったらそちらに伝えよう。」

「あぁ、助かるわい。それと江端博士や、他の逃げた博士たちはどうなっておる?」


 卒間はタブレットを操作し、避難者リストを確認する。


「いや、まだ博士たち全員はここへ避難はできていないな…。江端博士もだ。」

「そうか、心配じゃな…。」

「今、潤奈君とグルーナ君が巨大デュラハンと交戦中だ。これも状況が進展次第、連絡しよう。」

「頼んじゃぞ。一旦通信を切る。そちらも気をつけてな。」

「博士こそ、お気をつけて。」


 博士との会話を終え、通信は切られた。


「広場はどうなっている…?大樹君やカサエル、ディアスは…?」


 卒間は通信を終えた後、大樹たちのいる広場で待機させているドローンの確認をする。司令室の近くでの戦い。避難はしているものの、会社エリアのビルに損害が出たら社内の社員たちが大変な目に遭うかもしれないので真っ先に確認する。


「…!? な、何だ…!?敵が、増えている…!?」


 デュラハンたちの戦いは常にそうだ。彼らにとっての三分間は短くもあり、長くもある。三分経てば、状況は当たり前のように変化する。少し目を離しただけで事態が急変するのは日常茶飯事なのだ。卒間は急いで状況を確認する。


「ラクベスとダジーラクの他にもう一人…。レイドルクではない…シユーザーか…?」


 シユーザーの姿は博士が見せてくれたディサイド・デュラハンのメインカメラ映像の写真資料で見た事がある。だが、それとは姿が変わっている。大樹とカサエルが苦しそうに胸を抑えているディアスを庇いながら戦っている。


「大樹君、カサエル、ディアス…!いかん、数では圧倒的にこちらが不利だ…!」


 卒間は何もできない自分への憤りを感じ、握った拳を更に強く握った。その時、急に周りの背景が宇宙になった。


「…!? な、何だ…!?」


 卒間は急いで周りを確認すると、背後に水色と黄緑の髪をした子供が立っていた。


「き、君は…一体…?いや、待て…確か…。」


 卒間は道人たちから話を聞いていた地球の意思の話を思い出す。


「君がガイアフレーム…なのか?」


 ガイアフレームは頷いた後、宙に文字を浮かべる。


『急いで』『広場』『行って』

「何…?私が、広場に…?」

『君』『資格』『ある』『君』『戦い』『今日』『始まる』『頑張って』

「司令、実験エリアで何かが飛んでいったとの報告が…。司令?司令!」


 虎城の声が聞こえ、卒間は元の場所に戻った。卒間は頭を左右に振り、周りを確認する。


「あの、どうかしましたか、司令?大丈夫ですか…?」

「私は…。」

「無様だなぁっ、ディアスゥッ!」


 卒間はドローン越しからシユーザーの声を聞き、ドローンに映った画面を確認するとシユーザーに左腕を切断されたディアスの姿が目に飛び込んできた。


「ディアス…!」


 卒間は目を瞑り、深呼吸する。開眼した後、決心して司令室から出て行こうとする。


「すまない、虎城君!私はどうやら、広場に行かなくてはならないようだ!少しの間、司令室を離れる!何かあったら私の通信機に連絡を!」

「えっ?あ、あの…司令?」


 卒間はそう言うと司令室を後にし、急いで会社エリアの入り口に向かって走る。


「一体何が待ち受けているのかはわからないが…。待っていてくれ、大樹君、カサエル、ディアス…!よし、人もいないからな…!遠慮なく全速力で行かせてもらう…!」


 卒間は鍛え上げられた脚力で通路を駆け抜ける。かつて、多忙でなかなか参加出来なかった息子の運動会。去年、何とか父兄参加のリレーに参加できる事になった際、息子に良い所を見せるためにジム通いで鍛え上げた肉体。結局、急な仕事で参加できず、息子を悲しませてしまい、振るえなかった脚力が今、生きる。


「着いた、よし…!」


 卒間は閉鎖された自動ドアをこじ開け、外に出た。急いで大樹たちの姿を捜す。


「あばよぉっ!さよなら、ディアス!」


 シユーザーの声が聞こえた方を振り向くと胴体を斬られたディアスの姿が飛び込んだ。


「ディアス!?」


 卒間は全速力で地面に倒れたディアスに駆け寄った。煙を上げ、火花を散らせる傷だらけのディアスを抱き抱えた。


「あ?何です、このおっさんは?どこから現れました?」

「し、司令っ!?何でここに…!?」

「危ないさぁっ!」


 『皆』=狸夢操士カサエルはシユーザーたちを卒間とディアスから遠ざけるために戦いを挑みに行った。


「…そ、卒間…?」


 ディアスは右手をゆっくりと上げると卒間はすぐに右手で握った。


「…久しぶり、だな…。すまない、ラクベスの…看病をしていたのでな…。あまり、来られなか、った…。」

「そんな事はいいんだ…!大丈夫なのかっ!?」

「…何…大した損傷じゃ、ない…さ…。…そ、卒間…聞きたい事が…ある…。」

「何だ…?」

「…あれから、写真の家族とは…出会えたの、か…?」


 卒間はディアスのその発言を聞いた後、きょとんとした後、思わず笑ってしまった。


「…な、何だ…?私は…おかしな事を…言った、か…?」

「いや、すまない…!こんな状況で私の家族の事が気になるのか、君は…!ははっ、そうか、そうか…!自分の事より、人の事を気にするか…。良い奴なのだな、君は…。」


 卒間は眉を強めて緩んだ表情を戻し、ディアスを見つめた。


「ディアス、私は君を死なせたくない…!必ず直してみせるからな…!」

「直す…?…私は、お前たちの…敵、なのだぞ…?取り返しの、つかない…罪も…重ねてきた…。」

「大丈夫だ!君が罪を償いたいと言うなら、私は喜んで力を貸す!もう私と君は『友達』なのだから…!」

「…友、達…。私、が…?」


 ディアスは不思議そうに首を傾げた。


「あぁ、友達だ…!だから、また屋上で一緒に話そう!今度は敵同士ではなく、戦いとは関係のない話で盛り上がろう!そうだ、妻と息子に君を紹介もしたいな!それから…ふっ、やりたい事がたくさんだ…!」

「卒、間…。」

「君に教えたいのだ、この地球の良い所を…!素晴らしさを…!だから、死なないでくれ…!生きてくれ、ディアス…!」


 その時、卒間の頭上に光の玉が出現し、ゆっくりと降りてきた。卒間は笑みを浮かべて降りてくる光の玉を待ち切れずに掴み取った。その瞬間、ディアスが発光し出した。


「な、何ですか、あの光は…!?ま、まさか…!?」

「おぉっ、司令!マジかのぉっ!?」

「最高の助っ人さぁっ!」


 ディアスはドクロの意匠や色はそのままに新たな鎧を身に纏って地面に着地した。卒間の握った光の玉はディサイドデバイスに変化する。首にディサイドネックレスが出現した。


「こ、これは…?」

「どうやら、君は私のディサイド・デュラハンとなったようだな。」

「何…?私に、スランと同じ現象が…?」


 ディアスは新たな鎧に身に包んだ自分を不思議そうに見る。


「ば、馬鹿なっ!?き、貴様らはまた奇跡を起こしたとでも言うのかっ!?」

「悪いが、その様だな…。正直言って、子供たちに地球の命運を委ねていた事に私は常々申し訳なく思っていた…。ガイアフレーム君には感謝しても仕切れない。」


 卒間はネクタイを緩め、ディアスの横に立った。


「シユーザー、君は新たにリーダーとなったと聞いたが…まるでなっていないな。正直、今の所は落第点だ。」

「な、何ですとぉっ…!?」


 卒間は敢えてA(エアロ)B(バースト)ティラノシユーザーを煽る。残り時間的にもう後一回しかヘッドチェンジができないカサエルから戦闘対象を変わらせるためだ。


「私もまだ司令としては未熟者だが…君に指導してやろう、統率者のあるべき姿を…!行くぞ、ディアス!」

「あぁ!私の命、喜んで君に預けるぞ、塔馬!」


 ディアスは新たな四枚刃の鎌を両手に持ち、卒間と共にシユーザーと相対した。

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