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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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123章Side:深也 エイプリルとグレリース

「愛歌、来るぞ!しっかりしろ!」

「…あっ…。」


 どう見ても動揺で戦意喪失している愛歌に深也は一喝した。正直なところは深也も人の事は言えず、自分に言い聞かせている部分もあった。戦う相手がそれ程の相手だからだ。


「さぁさぁっ!踊ろうよ、深也!自由を得た私と!」

「ちぃっ…!」


 深也はダブルトライデントランドレイクの前に立ち、制服バリアで跳ね返るレーザーを防いだ。


「今の内だ!包囲網を抜けろ、ランドレイク!」

「わ、わかったぜ、船長…!」


 深也はダブルトライデントランドレイクと共に貝殻が浮いていない場所まで跳んだ。ダブルトライデントランドレイクも深也に対してどう声を掛けたらいいかの動揺が見えた。


「無駄よ、深也。この貝殻は時間内まであなたたちを追い詰め続ける。」

「へっ…!だったら、後二分弱かよ…!」


 S(シェルター)E(エンプレス)グレリースは宙に浮く貝殻と共に深也とグレリースを追いかける。


「愛歌、ぼさっとすんじゃねぇっ!やられるぞっ!」

「大丈夫、愛歌は私ガ…!」


 クラウドウィッチトワマリーは愛歌を抱き抱えて杖に跨って飛んだ。


「逃がさない…!逃がさないよぉっ、トワマリィーッ!」


 D(ドラゴニック)S(ソーサラー)ルアンソンは三体の機械飛竜を出現させ、クラウドウィッチトワマリーに向かって飛ばした。


「もウ!生まれ変わってモ、しつこいヨ、ルアンソン!」


 クラウドウィッチトワマリーは辺りを跳び回りながら機械飛竜たちの吐く炎から逃げ回る。


「しつこい?しつこい?ユーが知っているミーはしつこかったのですか、トワマリィーッ!」


 D(ドラゴニック)S(ソーサラー)ルアンソンは高くジャンプし、機械飛竜を足場にしてクラウドウィッチトワマリーに向かって断頭剣を振り下ろした。


「そうだヨ、そんな風に…ネ!」


 クラウドウィッチトワマリーは自分の右手に雲を集めて雷の剣を作り出し、D(ドラゴニック)S(ソーサラー)ルアンソンの断頭剣を受け止める。


「ビリビリで記憶が戻るといいネ!」


 クラウドウィッチトワマリーは雷の剣に電流を発生させ、D(ドラゴニック)S(ソーサラー)ルアンソンを痺れさせて下がらせた。


「よシ、もう私ニ…!」


 その隙を狙って機械飛竜二匹がクラウドウィッチトワマリーの左肩と右腕に噛み付いて来た。


「だるいが、デバイスで機械飛竜は操作できる。」

「…! パ、パ…!?」


 機械飛竜は噛み付いたまま、火を吐いて来た。


「この人、正気なノ!?愛歌も一緒ニ乗ってるのニ…!」

「元の俺なら、そんな事はしないだろうな。」

「くッ…!?」


 クラウドウィッチトワマリーはバランスを崩して落下するが、地面に衝突する前に弾力のある雲を作り出し、クッション代わりにして何とか地面への激突を防いだ。


「トワマリー、待ってろ!俺が…!」


 ダブルトライデントランドレイクがクラウドウィッチトワマリーに噛み付いている二匹の飛竜を回転させたダブルトライデントで斬り裂き、消滅させた。


「ありがとウ、ランドレイク…!」

「礼なら、この状況を抜け出した後だ…!」


 深也もダブルトライデントランドレイクの近くまで走ってきて、一旦合流した。


「愛歌、惑わされるな!あいつらは所詮、俺らの大事な人を人質にした、何の関係もねぇ他人なんだ!」

「あぁ〜っ、ひどい…!でも、それはどうかなぁっ、深也?」


 深也の近くにエイプリルとS(シェルター)E(エンプレス)グレリースが着地した。


「私は別人格と言っても、芽依と記憶を共有している…。それって別人なのかな?意思が同一なら、私も芽依なんじゃない?」

「こんな所でお前らと哲学を語るつもりはねぇっ!」

「それは同感だ。俺も早く愛歌との関係を断ち切りたいからな。」

「ふふっ…!」


 ハクヤがそう言うと一瞬で間合いを詰め、クラウドウィッチトワマリーに対して肉弾戦を仕掛けて来た。トワマリーは愛歌の制服バリアで守られる。


「ふん、面倒臭いバリアだな…。」

「じゃあ、私も…。」

「ちっ…!」


 深也は向かって来るエイプリルに警戒して構えるが、エイプリルは急に抱きついて来た。


「なっ…!?」

「ふふっ♪ハグだとバリアは反応しないみたいね、割と欠陥品なのかも…。ねぇ、お兄ちゃん…。」


 エイプリルは強く深也を抱き締めた。


「…お兄ちゃん、この新しい身体なら私とお兄ちゃんは血が繋がってない…。私の言ってる意味…わかる…?」

「なっ…!?」


 深也が頬を染めて油断している隙にエイプリルは超至近距離から深也の腹にレーザー銃を撃ち込んだ。


「船長っ!?」


 深也は何とかギリギリで展開された制服バリアで守られたが、腹から少し出血した。


「て、てめぇっ…!芽依で遊ぶんじゃねぇっ!!芽依はそんな事、絶対しねぇし、思ってもいねぇっ!!」

「あははっ!さぁ〜て、それはどうでしょう?いくら兄だからって、妹が普段何を考えてるかまではわからないでしょ?私は芽依と記憶を共有しているんだから…。夢見てもいいんだよ、お兄ちゃん♪」

「その通りです。」

「がはっ!?」


 S(シェルター)E(エンプレス)グレリースはダブルトライデントランドレイクに飛び蹴りを喰らわし、吹っ飛ばした。


「ランドレイク!?」

「芽依は…エイプリルはいつも辛い思いをしていた…。あなたと父親のせいでね。」

「知った…ような口、を…!?」

「そんな事はありません。私は芽依と何度か同調しました…。芽依の気持ちは痛い程にわかる…。ですが、見なさい!この姿を!海原の家系から解き放たれた芽依…いいえ、エイプリルを!この姿こそがこの子の幸せの形…!」


 S(シェルター)E(エンプレス)グレリースはエイプリルの頭を優しく撫でた。エイプリルは深也を見下すように見る。


「この子の幸せを脅かす者がいるのなら、それが家族であろうとも…私が代わりに手を汚して守ってみせる…!」

「な、何だ、こいつ…!?」


 深也は腹の痛みに耐えながらも、グレリースのエイプリルに対する並々ならぬ愛情のような、どこか歪んでいるかのような忠誠心に嫌悪感を抱いた。


「きゃあっ!?」

「こいツ、強引に制服バリアヲ…!?」


 ハクヤは両手で制服バリアを無理矢理こじ開けて愛歌に手を伸ばす。


「ひっ…!?」

「愛歌にハ、指一本触れさせないかラ!」


 クラウドウィッチトワマリーは愛歌を抱き抱えて横に倒れ込む形で跳んだ。


「愛歌、大丈夫ッ!?しっかリ…!」

「ト、トワマリー…あたし…。」


 三分が経ち、グレリースとルアンソンが元に戻った後、ランドレイクとトワマリーも元に戻った。


「あ〜あ、お話が長くてあんまり私たちのディサイドヘッドお披露目出来なかったなぁ〜っ…。まぁ、もっと強力なの、まだあるけどさ。」

「いいじゃないか、これでやられていた方が幸せだったと愛歌たちも身に染みるだろう。」

「ちっ、言いたい放題言いやがって…!ランドレイク、ディサイドヘッドだ…!」

『本当にそれでいいのかい?』

「がっ…!?」


 深也の脳内にまた昨日と同じ声が響いて来た。深也は右手で頭を抱える。


『言ったはずだ。俺はお前の残虐性を肯定すると。』

「うるせぇっ、黙ってろ!相手が芽依と関係があるなら、尚更なれる訳ないだろうがっ!」

「船長…?」


 深也はカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。


『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』


 ランドレイクはパイレーツランドレイクに姿を変え、大砲を出現させてグレリースに放った。グレリースはエイプリルと共に横にステップし、距離を取る。


「愛歌、私たちモ!」

「………。」

「愛歌…?」


 愛歌はトワマリーが呼んでいるのに気づき、慌ててカードを実体化させ、読み込ませた。


「へ、ヘッドチェンジ…。クローズゲート…。」

『あなたは固く閉ざされた扉の中に何があったとしても開く事はできますか?』

「何が、あっても…?」


 愛歌は恐怖心を抱きながらハクヤとルアンソンを見た。


「…あ、あたしは…。」

『非承認。』

「あ、愛歌ッ!?」

「哀れだな、愛歌。俺の事を気にした結果、トワマリーがやられても構わないと?」


 ハクヤが遠くで愛歌を見下すように見下ろしていた。


「違っ、あ、あたしは…。」

「何故咄嗟にクローズゲートを選んだ?この状況が嫌だから閉じ籠りたいと思ったからか?」

「そ、そんな事っ…!」

「我が娘ながら何とも情けない姿だ。もう楽にしてやろう。」


 ハクヤは新たなヘッドカードを実体化させる。


「愛歌を…侮辱するんじゃねぇっ!!」


 深也は近くにあった石を掴んで投げた。


「ふん。何だ、それは?攻撃でも何でもない。」


 ハクヤは飛んできた石を避ける。深也は一旦制服を解除し、私服に戻った。右腕のエンブレムを外して、上着を脱いで地面に落とす。


「愛歌はなぁっ、そんなヤワな女じゃねぇっ!今は少し動揺して、調子が出てねぇだけだっ!」


 深也はタンクトップにエンブレムをつけてタッチし、制服姿に戻った。捨てた上着を拾って血止めとして腹に上着を巻いた。


「待ってろ!愛歌は絶対に立ち直って、お前に絶対に立ち向かう!こいつはそういう女だ、道人が惚れるのもわかるぜ!」

「ちょっ!?深也、何言って…!?」


 愛歌は急な深也の発言に頬を染めた。恥じらいを与えて迷いを拭えないかという深也なりの考えだった。


「俺は愛歌の父親だぞ。お前よりも娘の事は理解できている。」

「はっ、本当かよ?フランスに単身赴任してる奴がよく言ったもんだ。」

「…何だと?」


 ハクヤの表情に怒りが伴ったのが遠くで見てもわかった。


「もしかしたら、単身赴任のあんたよりも付き合いの短い俺らの方が愛歌について詳しいかもしれないぜ?」


 深也は咄嗟に思いついた。エイプリルとハクヤが元の人物の記憶を持っているのはメリットでもあって、デメリットでもある。深也はハクヤを挑発する。


「貴様…!潰す…!」

「へへっ、お父さんもどきはお怒りだぜ…!」

『愛歌を守る必要があるんだろう?尚さ…。』

「うっせぇっ!!」


 深也は近くの街灯に頭をぶつけ、ガイアヘッドの誘惑を黙らせた。頭から血を流す。


「し、深也…!?」

「ふぅっ、これで静かになりやがれ…!愛歌、俺とランドレイク、トワマリーが何とか時間を稼ぐ!だから、早く元の調子に戻れよな!」

「深也…。」


 深也は愛歌にサムズアップする。


『良き心構えだ…。』

「…? 何だ…?」


 深也の脳内に声が響いた。ガイアヘッドではない、別の存在。何となくだが、深也には(くじら)のように見えた。


「…まぁ、いい!俺はもう絶対にランドレイクをあんな姿にはしねぇからなぁっ!!」

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