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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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119章Side:ディアス 反旗!新生バドスン・アータス

 朝早くディアスはスクリーンから地球が見える通路を歩き、ラクベスがいる病室に向かっていた。


「バドスン・アータスの艦内も寂しくなったものだな…。」


 ディアスは地球を眺めながら行方が知れないダーバラやライガ、敵側についたスランの事を考えていた。


「今日も地球は青く、美しいな…。なぁ、スラン…。」


 スランの新たな生き方を肯定して以来、ディアスは地球の事が気になるようになっていた。本当は研究したい所だが、今はラクベスが優先だ、と考えていた。


「あの司令官、卒間…と言ったか。しばらく会っていないな…。」


 ディアスの脳内にデュラハン・パークの屋上で出会った卒間の姿が思い浮かんだ。あの男の持っていた妻と息子の写真が気になっていた。


「あれからあの男は家族と会え…いや、無理か…。こう敵に攻め込まれいてはな…。」


 ディアスは自分でもおかしな事を言っているなと自覚していた。自分はその攻め込んでいる敵の一員ではないかと。


「我ながら甘過ぎるな…。全く…。」


 ディアスは自分の甘さに呆れながらも病室の自動ドアを開いて入った。


「ラクベス、今日も来…。」


 ディアスは言葉を止めた。いるはずのラクベスがベッドから消えていたからだ。


「…馬鹿な、あの身体では動けないはずだ…。一体どこに…?」

 

 ラクベスは寄生ヘッドの毒素が完全には抜けていない。まだ自由には動けないはずだ。


「ラクベスなら大広間で待っているよ、ディアス先輩。」

「…!? 誰だっ!?」


 ディアスが後ろを振り向くと三つ編みの人間の少年が両手をポケットに入れて立っていた。


「人間…?どうして人間がこの宇宙要塞にいる?」

「お初にお目に掛かります、ディアス先輩…。俺の名はウェント。新たなシチゴウセンの一人だよ。」

「何だと…?」


 ディアスは改めてウェントを観察する。どう見ても人間だ。だが、とても人間のものとは思えない殺気を放っている。


「採掘星の…いや、そんな訳はない。地球人でもないな…。」

「あーっ、思考はしなくてもいいですよ?大広間にいるシユーザー先輩がちゃんと話してくれますから。さ、早く行きましょうよ。今日は大事な『祭』の日なんだから。」

「祭…?」


 ウェントは両目を赤く発光させてにやけた後、病室から退室して歩き出した。


「…! おい、待っ…!」


 ディアスも急いで病室を出るがもうウェントの姿はなかった。


「いない、だと…?新たなシチゴウセンだと…?どういう事だ…?嫌な予感がする…!」


 そう言うとディアスは今つけている頭を外し、戦島(いくさじま)でカサエル相手に使った巨大な鎌を持った姿に変わり、大広間まで全力で走った。


「シユーザーの奴、一体何を…!?」


 ディアスは大広間の扉を勢いよく開き、中に入った。中は真っ暗で誰もいない。ディアスは警戒し、柱に隠れながら玉座の近くまで近づく。


「影からこそこそと…。やっぱりコウモリ野郎だな、お前は!」

「…! シユーザー!どこだっ!?どこにいる!?」


 玉座の隣がライトアップされ、そこにシユーザーが立っていた。


「シユーザー…!貴様、何を…!?」

「お静かに!これより新たな王の名の元に

!集え!今ここにありし、ヴァエンペラのシチゴウセン達よぉっ!」

「なっ…!?」


 シユーザーの右隣りがライトアップされ、ウェントと見た事のないデュラハンが姿を見せた。


「や!俺はシチゴウセンのカウンター・ディサイド・デュラハンのリーダー、ウェント!こっちは俺のパートナーのアレウリアスだ。」

「カウンター、ディサイド…?」

「こんなんで驚いてたら身がもたないよ、ディアス先輩?続けて俺の仲間!グレリースとカイバラ・エイプリル!」


 シユーザーの左隣がライトアップされる。青髪のロングヘアーで白いキャミソールに青いスカート。黒い上着をだらしなく着ている大人の女性が姿を見せる。赤く光る眼光でディアスを悲しげに見ている。女性海賊型のデュラハンが隣に立っている。


「芽…エイプリル、身体の調子はいかがですか?」

「…ふふっ!」


 エイプリルは笑顔でその場を三回転して踊った後、グレリースの目の前で両手を広げて見せた。


「ははっ♪私、生まれ変わったみたい…!これなら、もう…あの二人は…!あははっ…!」

「はい、あなたはもう自由ですよ、エイプリル…。」

「更に俺の部下!ルアンソンとジョウノエン・ハクヤ!」


 エイプリルとグレリースの隣りがライトアップされる。長身の長い白髪を後ろに一本に束ねたオールバックのだるげに立つ若い男。だらしなくつけた赤いネクタイと着崩した黒いスーツがよく目立つ。隣りには黒と茶色の男性騎士型デュラハンが立っている。


「…対人関係とか、繋がりとか、ありえねぇし…。俺は俺で勝手にやらせてもらうし…。」

「ミ、ミーは…。」

「ははっ!以上が俺のカウンター・ディサイド・デュラハンチームさ!」

「馬鹿な…!?」

「レイドルク、顕在。」


 レイドルクの声が聞こえ、ライトアップされた。レイドルクはいつも自分がいる柱に腕を組んで立っている。


「レイドルク…!?」

「続いてシャクヤス! …は今、別件でいない。なので割愛。」

「次は私が紹介しましょう!哀れにもジェネラルの座を降ろされたダジーラク!」

「何だと…!?」


 ウェントの前方に鎖で動きを封じられ、座らせられているダジーラクがライトアップされた。


「ダジーラク!?」

「ふ、不覚…。」

「シユーザー、貴様ぁっ!!自分が一体何をやっているのか、わかっているのかぁっ!?」


 友であるダジーラクへのシユーザーの仕打ちに対し、ディアスは怒りが爆発し、激昂した。


「レイドルク、あなたもだっ!!何故、ダジーラクを助けようとしないっ!?」

「ふん、わしは元々故郷を捨てた身…。今更古巣が変化しようと関係ない。わしは深也とランドレイク、大樹とカサエルと闘える舞台を与えてもらえるのなら、リーダーが変わろうと関係ない。」

「くっ、あなたという人は…!?」


 ディアスはレイドルクの冷たさに腹を立て、両拳を強く握って震わせた。


「に、逃げろ…ディアス…!わしが、わしでなくなる前に…!」


 ダジーラクが苦しそうにディアスの身を案じてきた。


「自分じゃなくなる…?どういう事なんだ、ダジーラク!?」

「教えてやるよ、ディアス!我が父上ヴァエンペラはこいつに惑星侵略の度に新たな頭を与えてきた…。最近だとジェネラルヘッドをな!その度にこいつの体内に武人のプライドなんていう下らないものを取っ払うために父上の力を少しずつ与えていったのよ!」

「な、に…?」


 ヴァエンペラがシユーザーの父親?ダジーラクに力を注いだ?次々とがむしゃらに投げられてくる情報の波にディアスは理解が追いつかなくなる。


「お前も度々噛みついてたろ、ディアス?昔の君はこんな事はしなかった、ってさぁっ!」

「わ、わしは…!武人だ…!」

「あぁ、そうだなぁっ!でもよぉっ、ダジーラクちゃん!お前はジークヴァルと道人と正々堂々と戦うと言った割には戦島(いくさじま)で私の祝砲作戦やカプセルロボット作戦を快く受け入れた!今まで楽しかったよなぁっ、弱者を葬っていくのは!」

「ぐ、ぐぅっ…!?」

 

 ダジーラクは否定できずに下を向いて苦しんだ。


「スランの時もそうです!こいつは自分の指揮能力に問題があってスランを責める気はないと言った後、すぐにチキュウの生命を何か刈り取って自分の手を汚して来ないと殺す、って言ってさぁっ!いやぁっ、こいつ順調に堕ちて行ってるな、って思いましたよ!」

「黙れぇっ、シユーザァーッ!!」


 ディアスは友の侮辱に耐えられず、シユーザーに向かって鎌を構えて突進した。


「はっ!私を守れ、『ラクベス』!」

「…!?」


 ディアスは左からタックルを喰らい、壁に激突した。咄嗟に受け身を取ったため、軽傷で済んだ。


「ラク、ベス…?」


 ラクベスは静かに佇んでいた。色が銀色になり、巨大な角が三本生えている。両肩にはブースターが装着されている。


「驚いたか?私が今まで得てきたデストロイ・デュラハンのデータで改造した『デリート・ラクベス』だ!ノロマさと毒素を抜き取ってやったんだ、感謝して欲しいね!」

「馬鹿な…!?これじゃあ、あの子が…スランがキャルベンから…助け出した意味がないじゃないか…!?」


 ディアスはスランの笑顔が脳裏に浮かび、自分の愚かさを悔いて両拳で地面を思いっ切り叩いた。


「あぁ、マヌケな奴だよ、お前は!同じ日に二人も友達がおかしくなるんだからなぁっ!」


 シユーザーはダジーラクの側に跳び、見た事のない頭パーツを出現させてダジーラクに装着した。


「ぐ、ぐおあぁぁぁぁぁーっ…!?」

「ダジーラクッ!!」


 ダジーラクは鎖を引きちぎり、両手で必死に頭を取ろうとするが外す事ができず、周りに電流を撒き散らす。鎧も黒から紫に変色し、少しするとダジーラクは壊れた人形のように力を抜いて立った。


「…はっはっはっ、楽しい…!楽しいぞぉっ…!シユーザー、お前の作戦は全て楽しかった…!祝砲もカプセルロボットも、残虐非道さが何と美しい事か…!」

「はっはっはっ!私も今まであなたを使えて楽しかったですよ!『ディスラプション・ダジーラク』!さぁて…。」


 シユーザーは玉座の前まで飛び跳ね、新たな頭を右手に出現させた。


「さぁ、(ひざまず)くがいい!今、ここに新たなる王が即位する!」


 シユーザーは勢いよく自分の身体に新たな頭をつけ、黄色く目を発光させた。邪悪な王冠のような頭をつけ、尖った両肩と仮面のような胸当て。紫色の悪魔のようなウイングを装着し、大きく広げた後、玉座に座った。


「我こそはヴァエンペラが息子!『ジェネラル・シユーザー』、ここに推さぁーん!!」


 新たなる王の近くに新たなシチゴウセンが並び立った。マーシャルも姿を現した。意識はないものの、両目から涙を流している。


「…こ、こんな馬鹿な事が…!?」


 ディアスはふらつきながら立ち上がり、シユーザーを睨んだ。


「さぁて…ディアス。もうシチゴウセンは定員オーバーだ。悪いが、ハチゴウセンにする気はないんでね。私はお前が嫌いだったし、ここでご退場願おうか。」

「…はっ、はっはっはっ…!」


 ディアスは急にその場で笑い出した。


「貴様、何がおかしいっ!?」

「私がこのまま素直にやられるとでも…?悪いが、そうはいかない…!私だけでお前たち全員を相手にするのは無理だろう…!だが、悪あがきだけはさせてもらう…!」


 ディアスは鎌を手に取り、羽を展開した。


「私はどうなったって構わない…!だが、ラクベス…!お前だけは、お前だけはスラン(あの子)と会わせる訳にはいかない…!」


 ディアスは水縹星(みはなだせい)海岸でのスランとの別れを思い出した。


(…ディアス、ラクベス!わたしたち、てきどうしになっちゃったけど!ディアスも!ラクベスも!ぜったいに、しんじゃだめだよ!また、またいきてあおうね!きっと…!)

スラン(あの子)と約束したのでなぁっ!!」

「黙れ、死に損ないがぁぁぁぁぁーっ!!」


 シユーザーが右手を前に出すと新たなシチゴウセンたちは一斉にディアスに襲い掛かった。

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