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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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117章 達成の末に

「ーあぁ〜っ、負けた負けたぁっ!負けたけど…何だか清々しいや…。」


 狸はカサエルから分離し、一回転して煙を上げて狸の姿に戻った。


「ー大樹、カサエル、本当にごめんよ…。僕は君たちを見下してた…。」


 狸は両手を地面につけ、下を向いた。


「もういいんじゃ、ってさっき記憶の中の俺の家で言ったじゃろう?」

「気にしちゃ駄目さぁ。」


 狸は顔を上げ、決心がついたかのように強気な顔つきになった。


「ー大樹、カサエル、僕はもう死ぬとか消えるとか、どうでもよくなった…!今は君たち二人に強い繋がりを感じる…!僕は君たちのおかげで人間が好きになった…!君たちになら、僕は命を賭けたって構わない…!死ぬ時は一緒だ…!」

「お、おいおい、落ち着くんじゃ…。少し大袈裟じゃぞ…。」

「そうよ、狸君…ううん、もう狸夢操士君だよね?」


 もう狸は大樹とカサエルのビーストヘッドになった。大神は呼び直して狸の頭を撫でた。


「ー狸君でいいよ、大神…。そっちの方が愛着あるもん…。」


 狸は流れる涙を両手で拭って涙目で大神を見た。


「わかったわ、狸君…。これからも一緒にみんなで遊んで、笑って、戦いに赴いたとしても、無茶せずに帰って来るのよ…?」

「逆に無茶する大樹とカサエルのブレーキ役になれるかもね。」

「…ふふっ。うん、そうだね…。」

「何じゃ、道人!潤奈ちゃんまで!狸の方が俺らの保護者とでも言いたいんか?」

「あんまりさぁ。」


 道人たちは笑い合った。狸も遠慮なく、その輪の中に混ざって共に笑った。


「ーさて、試練は文句なしの合格。僕はもう大樹とカサエルのビーストヘッドだ。これからもよろしくね?」

「おう!よろしくな、狸!」

「よろしくさぁ。」


 大樹とカサエルは人差し指を差し出し、狸はその指に手を乗せて握手みたいにした。


「…ビーストヘッドは私たちと同じで、思い悩む大事なパートナー…。」

「うん?」


 道人は隣に立っている潤奈を見る。


「…私も今回で大事な事を学べたな…。私もこの子とヴィーヴィルと会話の機会を増やして、大事にしよう…。」

「うん、そうだね…。」


 道人とジークヴァル、フォンフェルは潤奈の言葉に賛同し、頷いた。


「ーあ、そうだ。大樹、これ。」


 狸はデュラハン・ハートをドロンと煙の中から出して差し出した。


「こ、これはデュラハン・ハート…!?」

「ー試練の前に話したでしょ?僕は一人が好きだから、門番は作らなかったって。その時の使わなかった物だよ。大事に使ってね。」

「…わかった、大事にさせてもらうぞい。」


 大樹はデュラハン・ハートを受け取り、ポケットの中に入れた。


「ー大樹、カサエル、もう知ってると思うけど…ビーストヘッドは強さの終着点じゃないんだ。だから…。」

「わかっとる。カサエルが目指すべき姿…。もう前世で見たからの。なぁ、カサエル?」

「わかってるさぁ。あっしは今度こそ、先生のような人を喜ばせる芸人になってみせるさぁ!」


 二人の意気込みを改めて聞けて狸は微笑んだ。


「ーさぁ、次の試練の場所を教えるよ。まだランドレイクとルレンデスがどうなるかわからないけど、一応最後の試練…。」

「…いよいよ私たちだな、道人。」

「うん、あの名無しのドラゴンさんだね。」


 道人とジークヴァルは互いに頷き合った後、狸の事を見つめた。


「試練の場所は…。」


 狸はゆっくりとジークヴァルを指差した。


「君の心の中だ、ジークヴァル。」

「…え?」


 道人は狸の言った事がよくわからず、思わず疑問の声を上げた。


「…ジークヴァルの、心の中…?」

「ど、どういう事なんじゃ、狸?」

「ーごめんよ、ガイアフレーム様からはそれ以上は知らされてないんだ…。」


 道人とジークヴァルは互いに見つめ合った。


「狸の能力で行くんじゃねぇのか?」


 ヤジリウスが近寄って来て狸に話し掛ける。


「ーううん、僕は関わっちゃいけない事になっている…。これは道人とジークヴァル…ハーライムにヤジリウス。()()()…何だろう?とにかく、君たちで見つけないといけない場所なんだ。」

「お、俺も関わっていいのか?」


 ヤジリウスは自分を指差し、狸は頷いた。道人は腕を組み、ジークヴァルとヤジリウスと共に少し考え込んだ。


「ーさぁ、試練は終わった…。この洞窟は普通の洞窟になる…。寂しくなるな…。」


 狸は水晶でできた机に近づき、机に手を置いた。


「俺が持っててやるよ、その机。」


 意外にもヤジリウスが真っ先に机の持ち出しを言い出してきた。ヤジリウスは両手で水晶の机を持つ。


「ーいいの?」

「あぁ、せっかく作ったんだ。ここでなくなるのは嫌だろう?」

「ーありがとう。あ、でも、洞窟が元に戻ったらこの水晶の机はどうなるんだろう…?ちょっとわからないな…。」


 狸は腕を組んで頭を右に傾けた。


「いや、待つんじゃ。その机、どこに置くんじゃ?俺んちに置く気か?」

「…駄目なら、パークの中とかか?」

「いや、俺んちでいいが…。水晶でできた机なんて見たら爺ちゃん、驚くじゃろうな…。」

「狸、気に入ったんなら、またここに遊びにくればいいさぁ。もうお前さんは自由なんだからさぁ。」

「ーそっか。わかった!またみんなで来ようね!」


 喜ぶ狸に対し、道人たちは頷き返した。道人たちは帰る準備をし、洞窟を後にする。


「…さぁ?」


 カサエルが後ろを向き、何かをじっと見ていた。道人と大樹は振り向いてカサエルを見た。


「どうしたんじゃい、カサエル?」

「…いや、気のせいさぁ。」

「そうか。なら、いいんじゃが…。」

「…先生…?いや、そんなはずはないさ…。気のせいさ…。」


 道人はカサエルの反応が気になったが、大樹の後をついて歩いた。徒歩で山を降り、大神の特別車がある駐車場まで戻ってきた。ジークヴァルとカサエルの意思データをデバイスに戻し、特別車のコンテナにボディを乗せた。ヤジリウスもコンテナに水晶の机を積んだ後、歯車付きの布に戻って道人のポケットの中に戻った。


「大変、大変よ!みんな!」


 司令に連絡を取っていた大神が血相を変えて道人たちの近くまで走って来た。


「どうしたんですか、大神さん?」

「何でも、私たちが試練を受けている最中に水縹星(みはなだせい)海岸で海音さんが妹を名乗る人魚騎士と交戦したみたいで…。」

「えっ…!?」


 妹?海音以外の人魚騎士?道人たちは混乱しつつも大神から話の続きを聞いた。


「愛歌ちゃんと深也君が水縹星(みはなだせい)海岸に向かって交戦したみたいなんだけど、トワマリーが右手を損傷、ランドレイクは再びデストロイ化して暴走したらしいの。ランドレイクは元には戻ったんだけど、意識はまだ戻らないみたいなの…。」

「俺たちがいない間にそんな事が…。愛歌と深也たちが心配だ…!すぐに戻ろう!」


 潤奈と大樹は道人に賛成し、急いで車に乗り込んだ。愛歌と深也たちの事が気になりながらも道人たちは静かに車内で大人しくしていた。

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