114章 ブーメランと家族
「こ、ここは…?」
道人たちは両腕を下ろして閃光防御を解く。周りを見ると夕焼け空にたくさんのブーメランやミニサイズのロケットが飛び回っていた。
「ーここは道人の記憶映像。君の楽しかった思い出から僕が作り上げたんだ。」
「…道人の…?」
潤奈たちは狸の説明を聞いて改めて周りを見た。
「ー道人、君は未来の前借りをガイアフレーム様にされた影響でたくさんの白紙の記憶があったから記憶映像アトラクションを作るのは大変だったよ。」
「えっ?白紙の、記憶…?」
道人はそんな事を突然言われてもよくわからなかった。
「ーまだ経験してないから白紙ってだけ。大丈夫、その内埋まるよ。…未来が変わったら別だけどね…。」
狸は何やら不穏な事を言うが、突然言われても返事する事はできなかった。潤奈も今の発言が気になったからか、道人に近づいて右腕を両手で優しく掴んだ。
「ーそれでね、僕が見た道人の記憶映像の中で印象に残ったのはブーメラン。僕もやってみたいと思ったんだ。教えてくれるかい、道人?」
道人はしゃがんで狸を見ると狸の姿が小さかった頃の自分に重なって見えた。道人は今聞いた不穏な事よりも懐かしさが勝り、つい微笑んで狸の頭を撫でた。
「道人、俺らにも教えてくれ。ブーメランの楽しさを狸に伝えないといけないからの。」
「よし、わかった!いいよ!みんなでやろう!」
道人たちはそれぞれ紙に想像したブーメランを描き、狸に実体化してもらった。ブーメラン大会の開幕である。
「…えいっ!」
「潤奈、良い感じ、良い感じ!良いブーメラン、できたじゃん!」
潤奈が投げた、どことなくフォンフェルに似せた配色のブーメランは力強く風を切り、手元に戻ってきた。
「よし、僕も!それっ!」
道人は心なしか以前よりも力強くブーメランを投げる事ができた気がしながら、手元に戻ってきたブーメランをキャッチした。
「何だか、ブーメランを投げるの久々な気がする…。いや、戦いの時にガントレットで投げてるんだけどさ…。」
「…うん、私も道人が楽しそうにブーメラン投げてるの、久しぶりに見た気がするから…。わかるよ、その気持ち…。」
道人は豪の事を思い出して少ししんみりした。恐らく潤奈も同じ気持ちだろう。
「ー道人、見て見て!それぇっ!」
狸が投げたブーメランは不慣れながらもちゃんとそれなりに飛んでいた。
「道人、俺、ブーメランってあんまりした事なかったんじゃが、結構面白いんじゃのう。」
「あっしも初めてやったさぁ。」
「私も。何だか今日は童心に戻ったみたいで楽しいわ…。」
「ーうん、僕も楽しい!さぁ、みんなでブーメランを一斉に投げよ?誰のブーメランが一番よく飛ぶか勝負だよ?」
「よぉーし!ブーメラン歴が長い俺が負ける訳にはいかないな!」
こうして、みんなでブーメランを投げ合った。しばらくすると、皆で集まって次の記憶映像に向かう事になった。
「ーブーメランは投げたら必ず戻ってくるから縁起が良いもの…。しかも楽しくもある。素晴らしい人間の文化だったよ。次は潤奈の記憶映像だよ?」
「…わ、私か…。」
潤奈は下を向いて少し恥ずかしがった。狸が右手の指を鳴らすと世界が暗転し、別の場所に移動した。子供用遊具がたくさん置いてある場所だった。
「…? これが、私の記憶…?」
潤奈は不思議そうに周りを確認した。
「潤奈、どうしたの?」
「…道人、私、この場所の事わからない…。どこなの、ここ…?」
「おい、狸。本当にここは潤奈ちゃんの記憶の再現なんか?」
大樹とカサエルは近くにいる狸に尋ねる。
「ーうん、間違いないよ。潤奈の地球の思い出の中で一番古い記憶。今は思い出せないかもしれないけど、間違いなく君の中にある記憶だよ。」
「…私の…?」
「ほ〜ら!ジュンナ、マーシャル、ママと遊びましょうねぇ〜っ?」
「…えっ…!?」
潤奈は声が聞こえた方を振り向いた。潤奈の目に入ったのは三歳くらいのジュンナとマーシャル、そして女の人だった。
「…お、母…さん…?」
「えっ…!?この人が…!?」
道人たちは驚いて潤奈の母親の姿を凝視した。潤奈によく似た銀髪のストレートヘアーの女性。潤奈が成長したらこんな感じなのだろうな、という納得の見た目の女性だった。
「ママァ〜ッ、だっこ!」
「はいはい、ジュンナは甘えん坊さんね。」
「おねーちゃん、ずるい!わたしも!」
「ほらほら、マーシャルも来なさい。」
「わーい!」
「おいおい、パパは不人気だなぁ〜っ…。」
「…! お父さんまで…。」
潤奈はもう泣く寸前の状態で昔の自分の家族の姿を見ていた。
「潤奈、やった!やったよ!俺たちにも潤奈のお母さんの見た目がわかった!今まで調べてもあんまり手掛かりがなかったけど、これは大きい!」
「…うん、うん…!まさか、こんな形で道人たちに伝えられるとは思わなかったな…!」
「ははっ!やったね、潤奈!あははっ!」
道人はまるで自分の事のように喜び、同じく喜ぶ潤奈の腰を両手で持って、その場を二回転くらいした後、抱き締め合った。潤奈の涙が道人の肩に当たる。
「あらま。道人君、大胆…。」
「ー良いなぁっ…。」
「美しい光景さぁ…。」
「あー、おほん!道人に潤奈ちゃん、いちゃつくのはいいんじゃが、話が進まんぞ?」
道人と潤奈は大樹たちの視線に気づいて正気に戻り、いきなり恥ずかしさが襲ってきたのですぐに離れた。何だか今日は遊園地の効果なのか、もう潤奈との距離感がバグってる気がした道人だった。
「そ、そうだよ!潤奈のお母さんを何とか撮る方法は…。」
「あっしが見とくさぁ。あっしの胸の顔のカメラアイを通してメモリーに刻んでおいて、後でプリントしてもらえばいいさぁ。」
「ナイスじゃ、カサエル!それで行こう!」
「…ありがとう、みんな…。」
潤奈は涙を拭った後、しばらく家族の姿を見ていた。
「やるじゃない、狸君!気が利くぅ〜っ…!」
「ーうん、あんなに喜ぶとは思わなかったな…。家族かぁっ…。」
道人と大樹は狸の反応を気にしながらも
狸に質問をする事にした。
「ところで、狸。お前さんは潤奈ちゃんの幼い頃の記憶映像で何をして遊ぶ気だったんじゃ?」
「ーあぁっ、そうだったそうだった。僕を小さい頃の潤奈みたいに可愛がって欲しいんだ…。」
「な、何じゃと…?お前さん、甘やかされたいんか?」
「ーうん。駄目、かな?」
「そんな事だったらお安い御用よ、狸君!ほら、よしよし〜!」
大神は高い高いし、その後頬をすりすりした。近くにある玩具を手に取って一緒に遊びだす。
「そういえば、ビーストヘッドって成り立ちで言うと0歳みたいなもんなのか…。」
「あぁ、大人びた感じもするがそれはガイアフレームが試練の担当にするためにそうした、って事じゃしな。何だかんだでまだ子供なんじゃな…。」
道人と大樹は大神と楽しそうに遊ぶ狸をしばらく見た。狸が満足し終わり、次の大神の記憶映像アトラクションへと向かう事になった。
「潤奈、もう大丈夫…?」
道人は隣に立つ潤奈を気に掛ける。
「…うん、もう充分だよ…。ありがとう、狸君…。」
「ー喜んでもらえて何よりだよ。さぁ、残るエリアは後二つ!試練の終わりの時は近いよ、大樹、カサエル?」
狸が右手の指を鳴らすと世界が暗転。大神の記憶映像が姿を現した。




