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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第1部 始まりのディサイド
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14章 流す涙、拭く涙

 道人はスマホで愛歌に急用ができた、先に帰ると連絡した後、謎の少女改め、潤奈についていく事にした。潤奈と道人は御頭街(おがしらまち)のずっと東にある十糸(といと)の森の中を歩いていた。


「ねぇ、潤奈。またワープで目的地に一気に行けたりはしないの?」

「…さっきも言ったけど、まだフォンフェルが本調子じゃないの。それにワープヘッドは使う側も使われる側も負担が多いから。」

「例えば?」

「…ワープヘッドは制限時間がなくて、ワープしたらすぐに解除されるの。それに私の行った事のある場所にしか行けない。ワープされた方も一回体を分解してから転移場所で身体を再構成させるから確率は低いけど、そのまま死に至る事もある。」


 道人はそれを聞いてぞっとし、怖っ!と寒気を感じた。


「そ、そんな危険なものをライガの時に?」

「…あの時はああしないと君の友達が危なかったから。あの時の道人は右手が少し再構成がずれてたくらいで大丈夫だったよ。」

「そ、そうか。…ん?」


 道人は右手と聞いて自分のガントレットと潤奈は関係があるのだろうか、と気になったので聞いてみる事にした。


「あの、もしかして僕の右手のガントレットってその時の影響で…?」

「…ガントレット?何?」

「銀色の金属の装甲がジークヴァルとディサイドした時に僕の右手に装着されるんだ。」

「…確かにそれは私の力の影響かも。道人の右手を安定させる際に私の癒しの力を少し与えたから。その時に道人の右手の性質に変化が起きて、ジークヴァルとのディサイドと私の力が合わさってそうなったのかも。」

「そ、そうなの?」

「そうか、私と君の力が…。」


 道人は自分の右手の掌と甲を何度も見た。癒しの力って何だ?と気になったので次はそれを聞いてみる事にした。潤奈との会話は気になる事が尽きない。


「癒しの力って何?」

「…私の治癒能力。死に至る傷や病気は治せないけど、切り傷とかの怪我は治せるよ。」

「えっと、要するに潤奈はゲームでいうところの僧侶とか、ヒーラーみたいな感じ?」

「…よくわからないけど、まぁ、そう。 …もう着くよ。私が道人に連れて行きたい場所その1。」


 潤奈と色々話している内に目的地に着いたらしい。道人は目の前を見ると周りの風景から浮いた、何かの乗り物のような物が林に隠されていた。


「何だ、これ…?」

「…私の家、みたいなものかな。」

「え?家?」

「…行こう。案内するよ。」


 潤奈はデバイスを操作し、乗り物の入り口を開く。開いたら光の板が出現し、階段みたいになった。


「えっ、すごい…。どういう仕組みなんだ…?」

「…大丈夫?入っていいよ。」


 階段を上がっていく潤奈の後を追って乗り物の中に入った。通路を少し歩いたら広い真っ白な部屋にたどり着いた。


「…ただいま、フォンフェル。」

「お帰りなさい、我が主。」


 潤奈の前にいるデュラハンが壁に背をつけ、両足を前に伸ばして両手の力を抜いて座っていた。紫と黒色の女性型のデュラハンでくの一のような姿をしている。


「…フォンフェル、道人とジークヴァルを連れてきたよ。」

「こ、こんにちは。」

「初めてまして、ジークヴァルだ。」


 道人は右手にジークヴァルが映ったデバイスを持ってフォンフェルに見せた。


「よろしく、道人。ジークヴァル。」

「…そこのちゃぶ台の所に座って。飲み物を持ってくるよ。」

「え?あ、うん。」


 道人はデバイスを机の上に置いて座った。近未来的な乗り物の中にちゃぶ台があるのも何か変な感じだ、と道人は思った。


「…お待たせ。麦茶でいい?」

「あ、ありがとう。少し歩き疲れてたから助かるよ。」


 道人は麦茶を少し飲んで、ちゃぶ台に置いた。


「さて、何から聞こうか…。」


 道人はせっかくの機会なので思いついた事をどんどん聞いていこうと思った。


「潤奈はどこでフォンフェルと会ったの?」

「…デュラハン・パークの実験エリアの地下。道人とジークヴァルと同じように、この子が私の事を呼んでいたの。」

「私は動作がうまく行かず、その時は意識も表に出せなかったから欠陥機扱いされていた。動力源も外され、このままじゃ廃棄されるかもしれない…。せっかく命を得たのに消えるのは嫌だ、とずっと思い続けていた時、私は我が主と出会った。その場で私は新たな動力源を主に与えられ、ディサイドして救われたのだ。」 


 道人は似た話を何か最近どこかで聞いた事があるような、と思い出そうとしていた。


「なぁ、道人。ひょっとして、フォンフェルは博士が言っていた消えた0号機ではないか?」


 ジークヴァルの言葉をきっかけにして、道人は思い出せた。昨日格納庫で博士が言っていた0号機の話を。


「フォンフェルが0号機!?じゃあ、0号機を持ち出しちゃったのって、潤奈だったのか…。」

「…うん。この子が可哀想だったから…。勝手に連れてきたのは悪かったかな、やっぱり…。」


 潤奈は罪悪感を感じたのか、下を向いて落ち込んだ。


「あ、いや…確かに勝手に持ち出したのはまずいかも、だけどさ…。」

「主よ、私はあなたに助けられて感謝をしている。どうか、気にしないで欲しい。」

「…でも…。」


 落ち込んだ潤奈を何とか励まそうと道人は自分の脳内に浮かんだ言葉をありったけ選んで話す事にした。


「えと…もし、潤奈がフォンフェルを助けなかったら、その…今、ここにはいなかったかもしれないし。博士もさ、0号機はまだ目覚めていないからって悪い事をしたって落ち込んでたんだ。そうだ、今度一緒に博士と話しに行こう!博士も事情がわかればそんなに責めないと思うよ?僕も一緒に潤奈の事を擁護するからさ!」

「…そっか。ありがとう、道人。わかった、今度博士に謝るね。」


 道人は落ち込んだ潤奈を何とか励ませた、と安心して笑んだ。


「よし、話を続けようか。えっと…。」


 潤奈を元気付けるために頭を使ったため、聞きたい事がすぐに浮かばなかった。 


「道人、私も気になった事がある。話していいか?」

「あ、うん、何?ジークヴァル。」


 道人はジークヴァルが映っているデバイスをちゃぶ台の上に立てて潤奈に見せた。


「君はさっき公園で監視カメラに自分たちが映らないようにしたのはフォンフェルと言っていた。だが、博士の研究室に設計図と手紙を置いた話とフォンフェルに呼ばれて実験エリアに来た時の話はフォンフェルと会う以前の出来事…。」

「そうか、博士も0号機を持ち出したと思われる人物は監視カメラに映っていなかったと言ってたね。」

「…その時はこれを使ったの。」


 潤奈は黒いマントを取り出して見せた。


「それは?」

「…お父さんの形見…。」

「えっ?お父さんの…?」

「…お父さん、科学者でね。これは姿を透明にできるマント。ほら。」


 潤奈はマントを着てみせて道人の目の前で透明になった。


「わっ!?本当だ、すごい!」


 潤奈はマントを取ってまた座った。


「…お父さんがね、ディサイド・デュラハンの設計図を作ったの。死ぬ前に私に託してくれた…。」

「そっか、お父さんが…。」


 道人は豪の事を思い出したが、潤奈やライガたちの発言によると父はバドスン・アータスにいて、生きている事はわかっている。この子のお父さんはもう亡くなっているのだから、自分よりもつらいよな、と道人は何とも言えない感情を持った。


「…あの時はバドスン・アータスから逃げるのに必死だったから…。お父さんは…私を守るために…逃げながらも、私のために…色々作ってくれたの…。でも、ディサイド・デュラハンだけは…完成が、間に合わなくて…。」

「あっ、の…潤奈、えっと…。」


 道人は話の途中から潤奈がつらそうに涙を流しながら父の事を語っていて今の話が全然頭に入ってこなかった。道人は立ち上がり、潤奈の横にしゃがんだ。


「あ、ほら。泣かないでよ。ね?困ったなぁっ…。」


 なかなか涙が止まらない潤奈を見て、道人は幼い頃、愛歌がジャングルジムから落ちて大泣きした事を思い出した。


(あの時、泣き止まない愛歌に僕がしたのは…。)


 道人は潤奈を自分の方に向かせ、優しく抱きしめ、頭を撫でた。


「ほら、大丈夫だから。泣かないで、ね?よし、よし…。」


 道人の胸元が潤奈の涙で濡れていく。しばらくすると少し落ち着いたのか、潤奈はまだ涙を流しながら道人の顔を見た。


「ほら、潤奈。もう泣かないで。さっき公園で僕に言ってくれただろ?君に涙は似合わないって。それは君もだよ。」


 道人はそっと潤奈の涙を指で拭った。


「君の過去に何があったのか…詳しい経緯はわからないけどさ、バドスン・アータスの奴らから、ここまでがんばって逃げてこられたんだろ?潤奈はすごいし、偉いよ…。ここまで逃げてこられたんなら、後は大丈夫。僕が…僕たちが君を守るから。奴らからもうこれ以上、君を悲しい目になんか合わせない、絶対だ。」

「…本当?」

「うん、約束。」

「約束…。」


 道人は自分の小指と潤奈の小指で指切りをした。潤奈は指切りを知らないみたいで珍しそうにしばらく見ていた。

 色んな情報を知っていて、何を考えているのかわかりづらい子だと今まで思っていたけど、亡き父を思って涙を流す姿を見ると、この子も普通の女の子なんだな、と道人は潤奈に対する認識を改めた。


「…ごめん、取り乱しちゃったね。次の目的地に行こ。遅くなってごめんね。」

「私も同行します。」


 フォンフェルがその場から立ち上がった。


「フォンフェル、大丈夫なの?」

「えぇ。何故だかわかりませんが、さっきお二人が抱き合っているのを見たら、私も元気になった気がするのです。護衛させて下さい。」


 フォンフェルの発言を聞いて道人と潤奈は照れて下を向いた。


「わかる、わかるぞ、フォンフェル…。確かにさっきの抱き合いはどこか感動的で私も見入ってしまった…。」

「もう、ジークヴァル!茶化さない!ほら!もう行こう、潤奈!」


 道人は自然と潤奈と手を繋いで歩いた。潤奈は柔らかな笑みを浮かべていたが、前を向いていた道人は気づかなかった。

○虎城白子 24歳

血液型 A型

誕生日 11月2日 蠍座

身長 165cm 体重 内緒

趣味

登山 算盤 デュエル・デュラハン

好きな食べ物

グラタン ヘルシーサラダ

苦手な食べ物

こんにゃく


○大神天音 24歳

血液型 B型

誕生日 8月13日 獅子座

身長 167cm 体重 秘密

趣味

ネットサーフィン 育成ゲーム デュエル・デュラハン

好きな食べ物

ポップコーン 唐揚げ

苦手な食べ物

ピーマン

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