13章 謎の少女、再び
「道人、今日こそ決着をつけるぞい!」
大樹はホームルームの前に廊下でまた道人と愛歌を待っていたが、道人は立ち止まって大樹を見るが返事はしなかった。
「お、おい、道人…?どうしたんじゃ…?体調でも悪いんか…?」
明らかにいつもの道人とテンションが違っていたので大樹は心配した。
「…ごめんね、大樹君。今日はそっとしてあげて。ね?」
愛歌も元気がなく、道人と一緒に教室まで歩き出す。
「どうしたんじゃ、二人共…?昨日の用事とかいうのと何か関係あるのか…?」
その後、道人は呆然とし、授業の内容が全く頭に入って来ず、あっという間に放課後になった。道人は愛歌の音楽室掃除が終わるのを待つのを忘れ、通学路を静かに歩いた。
「道人、愛歌を待たなくてよかったのか?」
「…いや…良くない、な…。」
「今からデュラハン・パークに行くのか?」
「…今日はいいかな。…愛歌に悪い事したな、学校に戻ろう。」
「…道人、どこかで座って話さないか?私でよければ相談相手をさせて欲しい。昨日もあまり眠れなかったろう?母上殿も元気のない道人を見て心配されていた。私も元気のない道人を見るのはつらい…。」
「…ありがとう、ジークヴァル。」
道人は移動式トラックカフェのある公園のベンチに座った。
「ごめんな、ジークヴァル…。深也の事がずっと気になってさ…。僕を庇って行方不明に…。」
あの戦いの後、愛歌の報告を聞いた司令たちが何よりも最優先で深也の救助チームを結成し、直ちに海の調査を開始した。が、深也どころかデトネイトランドレイクすら見つからなかった。見つかり次第、直ちに道人たちに知らせると司令たちは言ってくれたが、未だに発見された報告は来ていない。
もし、見つからなかった場合は病気の妹さんや父親にも報告に行かないといけなくなる。聞いたショックで妹さんの体調に影響が出る恐れがあるので慎重な対応が要される。
昨日は深也の捜索、二日連続でデュラハン・パークを襲撃された影響への対応で司令たちは手一杯で道人と愛歌はそのまま家に帰る事になった。道人も愛歌も帰り道の最後に「また明日」と言ったくらいで他に会話をせずに、虎城が呼んだタクシーで帰った。
「道人のせいじゃないさ。あまり自分を責めるな。」
「ごめんな、ジークヴァル…。父さんが行方不明になった日の事も思い出しちゃってさ…。」
「そうか、父親の事も…。」
道人は涙目になり、下を向く。
「それだけじゃない…!デストロイ・デュラハンの事もだ…!もし、敵がまたあれを出してきたら、また人間とも戦う事になる…!僕が深也の腕をガントレットで掴んだ時、僕は深也の腕を折りそうになった…!デストロイ・デュラハンを倒した際、利用された人間の方も傷つけてしまうかもしれない…!それが怖いんだ…!怖いんだよ、ジークヴァル…!」
道人は泣き出しそうな顔を両手で覆った。
「…泣かないで。はい、ハンカチ。」
「うん、ありがとう…?」
道人は右を向いたらあの謎の少女がハンカチを差し出していた。
「…え?えぇっ!?何で!?」
「…君には涙は似合わないよ。」
少女は道人の涙を優しく拭いた。
「じ、自分で拭けるからさ…!」
道人は右腕で両目を拭いた後、もう一度右を見た。間違いなく謎の少女だ。博士たちに調査を頼んだ少女が目の前にいる。
「き…君、今までどこにいたの!?」
「…そこのカフェで本読んでた。」
「ほ、本?」
「…うん。月刊イケてるファッション6月号。」
「月刊イケてるファッション」。長年読者に愛された長寿雑誌であり、中でも有名なファッションデザイナー、グル
「違う違う!君、自動ドア開けた後、急にいなくなったでしょ?それを聞いてるの!」
「…あの時の事?フォンフェルが立て続けにワープとサイバーのヘッドを使ったから、苦しみだしたの。だから、心配して駆けつけたの。」
「ヘッドって…君もディサイド・デュラハンを?」
「…うん。」
少女は黒いディサイド・デバイスを見せてきた。そういえば自動ドアを開けた時に持ってたなと道人は思い出した。
「じゃあ、実験エリアに一瞬でワープしたのは…。」
「…フォンフェルのおかげ。」
「自動ドアのロックを解除できたのも…。」
「…フォンフェルだね。」
「監視カメラに僕達が映ってなかったのも…。」
「…フォンフェル。」
道人は立ち上がり、右手で顔を覆った。
「…大丈夫?ハンカチいる?」
「み、道人。さっきから何なんだ、この子は?」
ジークヴァルはやっと二人の間に言葉を挟めた。少女はベンチに置いてあるデバイスを見た。
「…こんにちは、ジークヴァル。道人にちゃんと会えて良かったね。」
「ん?あ、あぁ、そうか。君が道人を私の所に連れてきてくれた少女か。その節はどうもありがとう。」
「…うん、あの博士に設計図を渡して正解だったね。ジークヴァル、すごく良く出来てる。」
道人は聞き捨てならない事を聞いた気がした。
「ちょっと待って!博士が言ってた突然研究室に置いてあった手紙と設計図って…。」
「…うん、私が置いたの。」
「…? …? ちょっと待ってぇ〜っ?何で君と会話したら滝のように情報が流れてくるかなぁ〜っ…?」
道人は両手で頭を抱えてその場にしゃがんだ。
「…大丈夫?」
「うん、大丈夫なように振る舞う…。」
道人は立ち上がった。この子のおかげでさっきまで悩み、苦しんでいた自分が嘘みたいに感じるくらいに元気になっている自分に気がついた。
「ははっ、もう…。不思議な子だなぁっ、ありがとう。何か元気出たよ…。君に聞きたい事は山ほどあるんだ。順を追って聞いていい?」
「…うん、いいよ。私もあなたに用があって今日来たの。」
「僕に?」
「…うん、また私と怪盗しよ?ついてきて。」
少女は歩き出した。と思ったら、立ち止まって月刊イケてるファッションを突然読み出した。
「ど、どうしたの?急に立ち止まって。」
「…潤奈。」
「へ?」
「…私の名前は真野潤奈。よろしくね。」
葉が舞い、綺麗な銀髪を風で揺らしながら急に自己紹介をして微笑む彼女を見て道人は何故か頬を染めた。
○真野潤奈 年齢不明
血液型 不明
誕生日 不明
身長 155cm 体重 46kg
趣味
散歩 怪盗
好きな食べ物 苦手な食べ物
…もう食べられないもの。…新たに見つかるといいな。
好きな雑誌
月刊イケてるファッション 月刊少女きゃわわ




