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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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101章Side:愛歌 覚醒!リベルテ=イーグルトワマリー

「…ん…? どこよ、ここ…?」


 気がつくと愛歌は真っ白な空間に浮かんでいた。目の前にはデュラハンの姿のトワマリーが浮かんでいた。


「目が覚めたのネ、愛歌…。」

「トワマリー…。良かった、また会えて…。何だか不思議…。さっきまであなたの記憶を追体験していたのに、大分会ってなかったような気がする…。」


 愛歌はトワマリーの姿を見たら、さっきまで見ていた悲惨な過去を思い出し、自分の胸が苦しくなった。右手で制服の胸元部分を握る。


「そう…。愛歌、見たのでしょウ?私の過去ヲ、前世ヲ…。私も思い出しタ、思い出してしまっタ…。」

「うん…。」


 愛歌とトワマリーは気まずい雰囲気になり、お互いに下を向いた。

 

「何だか、かっこ悪い所を見せてしまいましたネ…。それにあなたにはつらい経験もさせてしまっタ…。誠に申し訳ありませン…。」

「う、うん…。」


 トワマリーはお辞儀をし、深々と頭を下げた。


「愛歌、私は今、困惑していまス…。前世の私と今の私、混ざったような感覚が私の存在を揺るがしまス…。」


 トワマリーは自分の震えてる両手を見る。


「まるで二重人格になったよウ…。私は自分の事がわからないのでス…。このままでハ、あなたと今までと同じ関係ではいられないかもしれませン…。」

「トワマリー…。」


 愛歌は上半身を少し前のめりにして、トワマリーの近くに寄る。トワマリーの胸の顔に軽くデコピンを喰らわした。


「あいタッ!?ちょ、ちょっと愛歌っ!いきなり何するノォ〜ッ!?」


 トワマリーは両手で自分の胸元の顔の額に手を当てる。


「痛くはないでしょ、痛くは!痛覚はないでしょうに!それにあんたのボディにデコピンしたのは今のが初めてだしさ!普段はあんたが生意気言ったらデバイスの画面越しにデコピンしてんだし!」

「痛いもン!その行為自体ガ、心に刺さって痛いもン!」

「「…ふふっ!」」


 愛歌とトワマリーはつい笑ってしまった。


「そう、それでいいの!昔を思い出したからってあたしに対して敬語で喋るのやめてよね!調子狂うし!前世を思い出したからって何よ?トワマリーはトワマリーでしょ?」

「愛歌…。」


 愛歌は自分の両手を胸に当てた。抑えなくていい、普段通りでいいと自分のハートを励ますように。


「前世を思い出したから自分がわからない?そりゃっ、いきなり適応するってのは無理なものよ。前世の事を思い出すなんて、滅多にない経験なんだから…。」

「そウ、なんだけド…。」

「それは仕方ない。けどさ、あたしには普段通りに話してよ。気取らなくていいんだから!今はさ、あたしに対しては『あたしにとって』のトワマリーで振る舞っていいの。その方が楽でしょ?お互いさ!」

「…うン。うン、そうだネ!そうだヨ!愛歌は愛歌だもン!馬鹿だなァッ、私…。自分が女王だって知ったからっテ、変に背伸びしテ…。」

「大丈夫、あたしはトワマリーのパートナーなんだから!さぁ、あたしに思いの丈をぶつけて来なさい!あなたのつらい経験だって耐えてみせたんだから!さぁ、ど〜んと来いっ!」


 愛歌は満面の笑みを浮かべ、トワマリーに対して両手を前に差し伸べた。

 

「…ありがとウ、愛歌…!」


 トワマリーは愛歌の両手を手に取り、ゆっくりと宙を流れる。


「…私は前世だト、ほんの少しの間しカ女王でいられなかっタ…。」

「それは…仕方ないよ、あのルアンソンって奴が悪いんだからさ!」


 愛歌は自分の両手を握る。トワマリーが愛歌の絡めた両手に上から触れる形になった。


「ううン、警戒心を怠った私にも責任はあル…。私がルアンソンの事を受け入れてあげてたラ…。」

「それは違うよ、トワマリー!あたし、フォンフェルの視点で見たんだから!あいつの本性を!あなたのお父さんを殺すように仕掛けたのもあいつのせいなんだよ?」

「ルアンソン、ガ…?」

「そっか、トワマリーはフォンフェルの見たものは知らないんだね…。なるほど、読めた!あたしと潤奈が与えられた二人の視点による情報で如何にパートナーを説得できるか…。それも試練の一環って訳…!にゃろう、やったろうじゃない…!」


 愛歌は眉を強め、握った拳を更に強く握る。


「前皇帝はルアンソンの自作自演で殺されたんだよ?あなたと付き合うのに父親が邪魔だ、って言ってさ!あいつの家は闇市をやってて、ドラゴンをたくさん飼ってたの!あなたが倒したドラゴンたちもあいつのペット!」

「そんな事ガ…。でモ、だからって全部ルアンソンのせいにはできなイ…。ルアンソンの本性を見抜けなかった私にもやはり責任はあル…。」

「トワマリー…。」


 愛歌は強く握った両手を少し緩めてしまう。


「私は女王であった以上、責任からハ逃れられなイ…。私はこの手で同族ヲ、民ヲ、孤児たちヲ、最後にハ国すらモ守れなかっタ…。」

「責任、責任って!もう現代にかつてのトワマリーの事を知ってる人はいないし、問い詰める人もとっくにいない!なのに前世のしがらみを、あなた一人でずっと抱え続けて一体何になるって言うのよっ!?」

「それは…!それでも、私ハ…!」


 愛歌はついカッとなって自分の意見を押しつけてしまった。これからトワマリーがどうしたいかは、トワマリー自身が決めないといけない事。危うくトワマリーの『自由』を否定してしまうところだった。


「…ごめん、そうだよね…。トワマリーが前世の記憶を捨てたくないって言うんなら、それを尊重しないといけないよね…。 …よし、トワマリー!探そう!あたしと一緒に!あなたが罪の精算がしたいって言うんなら、あたしもとことん付き合ってあげる!」

「愛歌、でモ…。」

「そもそも今この場で解決しようがない問題だもの、時間が必要な事だもの!だったら、トワマリーが納得する答えをあたしも一緒に探すし、手伝う!それがあなたが前世を思い出した後に初めて得る『自由』だと思うから!」


 愛歌はやっとトワマリーに言いたい事が見つかった事を喜び、目を輝かせ、トワマリーに微笑み掛けた。愛歌のポケットの中のデバイスが強くピンクに光り出す。


「…私ノ、自由…?」

「そう、今のあなたは女王ではなくて、私の大事なパートナーのトワマリー!その関係で得られる『自由』の中であなたの未来の在り方を見つけよう!一緒に探そう!その結果で前世の事を引きずるならそれでいいから!どんな結論を出したとしても、あたしも付き合う!あたしの自由はあなたを絶対に裏切らない!後悔なんて絶対にさせないんだからっ!!」

「愛歌…!」


 デバイス自体がピンクに輝き、愛歌とトワマリーも全身からピンクのオーラを放ち始める。白い空間は消え去り、現実世界に戻ってきて、トワマリーと共に立っている。いきなり存在する場所が変わったからか、流咲と友也は呆然と愛歌とトワマリーを見ている。


「戻ってきたの、あたしたち…? …あっ…!?」


 愛歌の視線に最初に入ってきたのは道人の背中だった。遠くでジークヴァルとヤジリウスが倒れている。何故か傀魔怪堕(かいまかいだ)烈鴉(れつあ)と交戦している。烈鴉(れつあ)は見た事のない姿になってジークヴァルとヤジリウスに大砲を向けようとしていた。


「とりあえずピンチなのはわかったぁっ!トワマリー!」

「えェ!」


 トワマリーは五つの小型リングを飛ばして烈鴉(れつあ)が大砲を撃つのを妨害する。


「ぬぅっ!?何奴!?」

「はぁっ!!」


 フォンフェルが飛び蹴りで烈鴉(れつあ)の大砲を蹴り落とした。

 

「潤奈!」


 となりに潤奈が立っていて愛歌の喜びに対して頷いた。フォンフェルも戻ってきて、トワマリーの横に立つ。


「…ごめん、道人。お待たせ。」

「って言っても、二十分くらいしか経ってないから、そんなに待たせてないけどね。」

「愛歌、潤奈…!」


 道人が無事に目覚めた愛歌と潤奈、トワマリーとフォンフェルを見て微笑みかけてきた。愛歌も久々に道人の顔が見られた気がしてほっとする。


「…何で傀魔怪堕(かいまかいだ)がいるのかわからないけど…。」

「まぁ、いいじゃん。ちょうどいいし。見せてあげよう、潤奈!あたしたちの試練の結果をさ!」


 愛歌と潤奈は画面から強い光が放たれたデバイスを構えた。


「よくぞ戻られた!さぁ、あなた方の答えを聞かせてもらおう!」


 イーグルが飛んできて、愛歌とトワマリーの背後に着地した。


「あたしは決めた!あたしにどんな未来が待ち受けていたとしても、あたしはずっとトワマリーと一緒!永遠不変に変わらない!『自由』を歩み続ける!」

「私も決めタ!愛歌と共に自分の今後の在り方を探したイ!例え今後どんな答えを得たとしとモ、二人の『自由』は絶対無敵ィッ!」

「試練、合格っ!!あなた方の『自由』を求める姿勢が、私を真なる姿へと変化させる!ふんっ!」


 イーグルは高く上昇し、光に包まれた。


「むっ!?いかんぞ…!これはいかん流れだ…!阻止せねば…!」

「させるかよぉっ!」「ふんっ!」

「ぬぅっ、おのれらぁっ…!」


 妨害しようとした烈鴉(れつあ)に対し、ジークヴァルクブレードはヴァルクブレードで右から、ヤジリウスは鞘に入れたままの刀で左から烈鴉(れつあ)に斬り掛かった。イーグルは羽を大きく広げて自分の身に纏っていた光を辺りに散らばした。


「我、今ここに真なる姿を得た!我が名は『リベルテ=イーグル』!愛歌とトワマリーが夢見た自由の翼!さぁ、受け取られよぉっ!」


 リベルテ=イーグルは生物の見た目から機械の鳥の姿へと変化し、愛歌に向かって小型のイーグルメカを飛ばした。


「これって…?」


 愛歌の右肩に小型イーグルメカが止まる。すると、愛歌の脳内に新たな力の知識が流れ込んできた。


「…なるほど、わかったぁっ!行くよ、トワマリー!!」

「よしなニ、愛歌ァッ!」

「ビーストヘッド、レディ!」


 愛歌がそう言って右手の指を鳴らすとリベルテ=イーグルデバイスが宙に浮かんで鳥型からデバイス型に変形。愛歌がその場で横に一回転した後、右手でキャッチする。


「ビーストデバイス、セットォッ!」


 スマホと合体させたディサイドデバイスから更にリベルテ・イーグルデバイスを下からはめ込んで合体。羽飾りがついたディサイドビーストデバイスへと姿を変える。


「ビーストヘッド・エヴォリューション!!」

『ビーストヘッド、承認。イーグルver. Liberta.』


 愛歌がディサイドビーストデバイスを前に出すと一筋の光が掃射され、トワマリーの背中に当たる。


「行くヨォッ、リベルテ=イーグル!」

「はい!」


 背中に受けた光通信で合体シークエンスを理解したトワマリーは天高く飛び、リベルテ=イーグルはトワマリーの上を優雅に飛ぶ。


「リベルテ=フォーメーション!」


 リベルテ=イーグルがそう叫ぶと空中でバラバラになり、トワマリーの背中に大きな翼がつく。その後、鉤爪付きの右腕と左腕、鳥爪の右足・左足と順にパーツがついた後、最後に胸にイーグルの顔、イーグルの意匠が施された頭部を装着して両目を発光させた。宙に出現したフェザーグレイブを右手で掴む。


「私たちが得た、初めの自由の形!私は今、鳥となる!リベルテ=イーグルトワマリー、ここに飛翔っ!!」

「さぁ、見せてあげる!苦難を乗り越えて得た、あたしたちの最高の翼を!」

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