101章 秘策!超×超烈将軍を打倒せよ!
「道人、すまない!時間切れだ…!ドラグーンになるタイミングになったら呼んでくれ!」
もう超烈将軍と戦い始めて三分が経ち、ハーライムはスマホの中に戻った。ジークヴァルも元の姿に戻る。道人の前にジークヴァルとヤジリウスが並び立っている。
「ふん、一人減ったか。わしもそろそろお前らの相手は飽きてきた…。忙しい身だからの。さっさと辰治の娘を回収して帰るとするか。」
「はっ、余裕かましやがって…!」
「道人、次のヘッドはどうする?」
道人たちは岩場の陰にいる愛歌と潤奈、流咲を背に前方にいる身長約270cmの超烈将軍の前に立っている。
「二回目のヘッドチェンジはわざと制限時間を考えずにすぐに三回目に切り替えてドラグーンハーライムと合体するまで短縮するのも手だと思うが…。」
ジークヴァルの言う通り、勿体ないが、ハイドラグーン・ジークヴァルクになる事を優先して敢えて二、三回目のヘッドチェンジを時間切れになる前にすぐに変えるという戦術は可能だ。現にデトネイトランドレイク戦での愛歌がダーバラに対してわざとヌンチャクヘッドを解除してダーバラの束縛からトワマリーを脱出させている。
「…いや、でも…。」
道人は十糸姫が自分に語ってくれた過去を思い出していた。永久式神と化した姫は三大将軍を倒す事ができず、封印する道を選んだ。つまり、三大将軍は何かしらの不死性を持っている可能性があると考えられる。迂闊にヘッドを消費するのは危険かもしれない。
「…いや、あいつはまだ隠し玉を持っている可能性がある…。ヘッドを使い切るのはよくないかもしれない…。ここはディサイドヘッドで行こう、ジークヴァル!」
「よし、わかった!」
ジークヴァルの了承を得て、道人はカードを実体化し、デバイスに読み込んだ。
「ヘッドチェンジ!ヴァルクブレードヘッドォッ!」
『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』
ジークヴァルクブレードに姿を変え、右手にヴァルクブレード、左手にヴァルムンクを持つ。ヤジリウスは抜刀の構えを取る。
「ジークヴァル、ヤジリウス、俺がここに留まって流咲さんを守る!だから、二人は超烈将軍の相手を頼む!」
「おう!」「ヒッヒャァッ!」
ジークヴァルクブレードは右、ヤジリウスは左に駆けて二手に別れ、超烈将軍を左右から挟み撃ちにする戦法に出た。ヤジリウスは摺り足で抜刀の構えを取りながら素早く移動する。
「ふん、挟み撃ちというシンプルな手で来よるか。ならば!」
超烈将軍は高く飛び、両足を外して自分元の足に戻す。代わりに両腕を外し、今まで足についていた白いカラクリデュラハン二人を腕に変えた。
「変形!超烈将軍・剛腕の型!更にぃっ!」
地面から新たな白いカラクリデュラハンが二体出てきた。
「何っ…!?まだいるのかっ!?」
「一体何体連れて来てんだっ!?」
「はて、何体じゃったかなぁ?後五…いや、十…。もしかしたら百かもしれんのぉっ。」
「そうかよ、朦朧爺さん!」
ヤジリウスは鞘から刀を抜刀し、超烈将軍に向かって黒の斬撃を飛ばした。
「ふん、剛腕の左腕ならば!」
超烈将軍は飛んできた黒の斬撃を巨大な左手で握り締めた。ワームホールは一瞬だけ槍の形になるが、消滅する。
「はっ、さすがに俺の剣撃は槍には変えられねぇか!ジークヴァル!」
「あぁ!」
ジークヴァルクブレードはヴァルクブレードを両手で持って上に上げ、光の刃を天高く伸ばしていた。
「真っ向、から竹割りっ!!」
ジークヴァルクブレードは力強く伸ばした光の刃を超烈将軍へと振り下ろした。
「見事な太刀筋!だが、それだけだ!ぬんっ!!」
超烈将軍は右腕で光の刃を掴み、そのまま破砕した。
「さぁて、貴様ら。さっき、わしはお前たちを相手するにはこの姿で充分じゃ、と言ったな?…忘れよ、貴様らに面白いものを見せてやろう!来い、我が部下たちよ!」
超烈将軍がそう言うと先程地面から出てきた白いカラクリデュラハンが飛び上がり、足形態に変形。超烈将軍は足を変形させて新たな足と合体を果たした。
「何っ!?五体合体だとっ!?」
「その通り!三位一体ならぬ、五位一体よ!量産型だからこそ、成せる業よ!その名もあ!超×超烈将軍!」
超×超烈将軍は地面に着地した後、右手を前に出して歌舞伎のように見栄を切る。
「そのネーミングセンスと共に散れっ!!」
ヤジリウスは抜刀し、黒い刃を飛ばすが、浮いている一本の剣で防いだ。剣の刀身はワームホールで削られ、使い物にならなくなった。
「そんなに気に入らないか、わしの名付けが…。落ち込むのぅ…。ならば、去ねぇぃっ!」
超×超烈将軍は両拳を左右に広げ、ジークヴァルクブレードとヤジリウスに向かって両拳を飛ばした。
「鉄腕発射、即ち!ロケットパンチである!」
「ぐおっ!?」「ちぃっ!?」
ジークヴァルクブレードとヤジリウスは瞬時に後ろに跳ぶ。地面に大きな拳が激突し、水晶の破片が周りに散らばる。超×超烈将軍は前方にすぐに移動し、両拳をすぐに合体し直した。
「むぅっ、合体したばかりなのにいきなり分離して拳を飛ばす。意表を突いたつもりであったが、無駄に終わったか。」
「悪いが、その手の技は経験済みだ!」
「わざわざ近寄って来てくれてありがとうよ!」
ジークヴァルクブレードとヤジリウスは着地した後、共に並列し、超×超烈将軍に向かって走る。
「貴様らの武器では接近戦を挑まざるを得まいよ!」
「ヤジリウス!」
ジークヴァルクブレードはヴァルムンクを左にいるヤジリウスに向かって軽く投げ渡した。
「おっと、と…! …へっ!なら、お返しだ!」
ヤジリウスは自分の妖刀を鞘に入れたまま右にいるジークヴァルクブレードに投げ渡した。
「お互いの武器を交換しただと?奇策のつもりかっ!?」
超×超烈将軍は地面に左手を当てて巨大なクリスタルの槍を作り出した。ジークヴァルクブレードは右へ、ヤジリウスは左へと分かれて走る。
「へっ!臆したか、爺さん!ビビりの爺さん!」
「ふん、貴様から去ねぇっ!」
超×超烈将軍はヤジリウスに向かって水晶の槍を投擲した。
「よし、俺を狙ってきたか!ならよ!」
ヤジリウスは横に側転し、飛んできた水晶の槍を避けた後、すぐに態勢を立て直す。
「何故ジークヴァルが俺にヴァルムンクを渡したと思う?何故なら、俺にはこの左腕があるからだ!」
「何っ!? …そうか、さっきつけたその奇妙な装置か!」
超×超烈将軍はヤジリウスについている左腕の装置を見た。
「この左腕にはこういう使い方もある!うちの博士舐めんなよぉっ?」
ヤジリウスは両手で持ったヴァルムンクを上に上げ、刀身が電流バリアに包まれる。超×超烈将軍はヤジリウスを警戒し、身構える。
「行くぜ、ジークヴァルが必殺!」
「横一閃!」
ジークヴァルクブレードは伸ばした光の刃を横に降り、超×超烈将軍の左右の足に激突させた。左右の足に電流が走る。
「なっ!?貴様、いつの間に!?」
「別にすごかねぇよ!ただ爺さんの視野が狭かっただけだ!他の奴には通じねぇだろうよ!」
「はあぁぁぁぁぁーっ!!」
ジークヴァルクブレードは両腕に力を込め、超×超烈将軍の両足の白いカラクリデュラハンを真っ二つにした。
「ぐおぉっ!?ぬかったわぁっ…!?」
超×超烈将軍はバランスを崩し、宙に舞う歯車と共に地面に倒れそうになる。
「ヤジリウス!」
ジークヴァルクブレードは光の刀身を消した後、すぐに走り、地面に鞘ごと刺している妖刀を指差した。
「爺さんが地面にヒビを入れてくれて助かったぜ!」
ヤジリウスは前方に跳んでジークヴァルクブレードに向かってヴァルムンクを投げ返した後、自分の妖刀を回収。すぐに片足に思いっ切り力を入れて抜刀の構えを取りながら再び跳んだ。両足を失った超烈将軍は既に地面に倒れていて、元の足に戻して立ち上がろうとしていた。
「その隙は逃さない!行くぞ、ヤジリウス!」
「ヘマすんなよ、ジークヴァル!」
ジークヴァルクブレードはヴァルクブレードとヴァルムンクを両手に持って交差し、ヤジリウスは抜刀し、超烈将軍を斬り裂いた。
「ぬぅっ…!?」
超烈将軍は咄嗟に分離し、両腕をパージ。白いカラクリデュラハンに戻してジークヴァルクブレードとヤジリウスの剣撃を受けさせて盾代わりにしていた。宙に歯車が舞い、周りを浮いていた剣四本がすぐに烈鴉の助けに入る。
「ちぃっ…!」「小癪な真似しやがって…!」
ジークヴァルクブレードとヤジリウスはすぐに烈鴉から離れた。ヤジリウスの左腕についていた装置が爆発し、地面に落ちる。
「ぐあっ!? 結構酷使させたからな…。さすがにヴァルムンクを電流バリアで包んだのは無理があったか…!それ用に調整してねぇからな…!」
「すまない、ヤジリウス。私の策のせいで…。」
「いや、結構楽しい奇策だった。気にすんなよ。」
「ふふっ、なかなかのペテンだったぞ、若僧共…!」
烈鴉は自分の槍を回収し、ジークヴァルクブレードとヤジリウスを見た。
「あぁ、爺さんが単純で助かったぜ。」
「口の減らん奴だ…。良かろう、更なるとっておきを見せてやる…!」
地面の中から六体の白いカラクリデュラハンが出てくる。
「なっ!?今度は六体だとっ!?」
「しかも内二体は形が違くて大きい…!?」
「ふふっ、再び五位一体!」
烈鴉は高く飛び、再び超×超烈将軍に合体した。残りの二体の白いカラクリデュラハンは大砲の形に変形し、超×超烈将軍が両手で抱えた。即時にチャージが始まる。
「あの形は…!?」
「まずい…!散るんだ、ヤジリウス!」
「喰らえ!『業火のぉっ、火閃』!!」
大砲『業火の火閃』は巨大な赤い光線を放ち、ジークヴァルクブレードとヤジリウスのいる地面に弾着した。
「ぐあぁぁぁぁぁーっ!?」
「ちぃぃぃぃぃーっ!?」
ジークヴァルクブレードとヤジリウスは吹っ飛び、地面の水晶に大穴が開き、ドロドロに赤く溶けて熱されていた。
「ジークヴァル!!ヤジリウス!!」
地面に倒れているジークヴァルクブレードとヤジリウスに対して道人は叫んだ。
「あいつ、あんな隠し球を持っていたなんて…!?」
「怯えよ、小僧!わしがお前たちを優良人種と判断しなかった場合、この熱線が貴様らを焼いて傀魔怪堕にまとめてご招待していたところだ!」
「くっ…!」
「さぁて…!」
超×超烈将軍はもう一体の業火の火閃に持ち変え、起き上がっている最中のジークヴァルクブレードとヤジリウスに砲門を向けた。
「さぁ!今度こそ、去ねぇっ!」
「危ない!!逃げて、ジークヴァルゥッ!ヤジリウスゥッ!」
道人が無茶を承知で制服バリアでジークヴァルとヤジリウスを助けに行くべきか決断しようとしたその時、五つの小型リングが超×超烈将軍に向かって飛び、超×超烈将軍の妨害をし始めた。
「ぬぅっ!?何奴!?」
「はぁっ!!」
フォンフェルが飛び蹴りで超×超烈将軍が持っていた業火の火閃を落とさせた。フォンフェルはすぐにジャンプし、後ろに下がる。道人が後ろを振り向くと愛歌と潤奈、トワマリーが立っていた。フォンフェルも瞬時にトワマリーの横に立つ。流咲と友也も愛歌たちの目覚めに喜んでいる。
「…ごめん、道人。お待たせ。」
「って言っても、二十分くらいしか経ってないから、そんなに待たせてないけどね。」
「愛歌、潤奈…!」
無事に目覚めた愛歌と潤奈を見て、道人は安心の笑みを浮かべた。よく見ると愛歌とトワマリーはピンクのオーラを、潤奈とフォンフェルは紫のオーラを漂わせている。
「…何で傀魔怪堕がいるのかわからないけど…。」
「まぁ、いいじゃん。ちょうどいいし。見せてあげよう、潤奈!あたしたちの試練の結果をさ!」
愛歌と潤奈は画面から強い光が放たれたデバイスを構えた。




