12章 無限の永遠
デトネイトランドレイクの変化はまだ止まらず、悪魔のような羽根も生え出した。ダーバラとマーシャルも邪悪な笑みを浮かべ、深也は無表情で立っている。
(どうする、道人…?考えろ、道人…!見るからにさっきよりパワーアップしているデトネイトランドレイクを相手にしながらダーバラの相手もして、海原君も救い出す方法…!)
道人は左手を額に当てて必死にこの状況の打開策を考えた。
(ジークヴァルもトワマリーもヘッドチェンジは後ニ回…。海原君のデバイス、あれを奪取または破壊できればデトネイトランドレイクは止まるかもしれない…!でも…!)
何を考えてもしっくり来ない道人は左手で自分の髪を搔きむしった。
「フフッ、良い気味さね!紛い物!あたいの身体に傷をつけてくれた礼は高くつくよ?」
ダーバラが困っている様子のこちらを見て挑発してきた。
「あんたら、もう諦めなよ?そんな紛い物は捨てて、ラックシルベを差し出しな!そうすれば道人たちの命は今日だけは見逃してやるさ。ただ、あたいは見逃してもこのデストロイ・デュラハンはどうするかはわからんけどねぇ!なぁ、マーシャル?」
「えぇ、リミッターが解除されたデトネイトランドレイクはその内自滅しますが、もう止まりません。自滅するまでの間にここら一帯を焼き野原にするでしょうね。」
それを聞いてダーバラは高笑いをした。
「さすが自分の故郷を捨てた女だよ、やる事が過激だねぇっ!」
「…ふざけないで。」
愛歌が静かに怒りを込めた声を発した。道人は愛歌のその様子を見て「愛歌?」と心配する。
「あたしたちはトワマリーとジークヴァルを差し出したりなんかしない!大事な友達を見捨てたりなんか絶対しない!」
「ハッ、小娘が何を言っ…!?」
ダーバラは愛歌の涙を溜めた目力に圧倒され、恐怖を感じて黙った。
「デュラハン・パークをこれ以上壊させもしない!司令や博士、大神さんや虎城さん、大切なみんなを殺させもしない!海原君の事もそう、妹さんを大切に思う気持ちを悪事に利用したあなた達をあたしは絶対に許さない!人の大切な繋がりを大事にしないあなた達なんかに、絶対負けたりなんかしないんだから!!」
愛歌が涙を周りに散らした時、愛歌の強い決心に反応し、デバイスが強い光を発し出した。強くはあるが、どこか優しさと暖かさを感じる輝きを。
「何だい、この不快極まりない光は…!?」
ダーバラは羽に変化した右腕で顔を隠した。
「何…?これって…?」
デバイスに新たなヘッドパーツが表示され、カードが実体化した。
「エタニティアヘッド…。」
「愛歌、今すぐ私ニそれヲ!」
「…! わかった!行くよ、トワマリー!」
愛歌はカードをデバイスに読み込ませた。
『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』
トワマリーに両耳に羽が生えた頭、新たな白い胸・肩・膝パーツに天使の翼が装着された。弓を右手に持ち、周りを飛び交う小型リングが∞の形に変化した。漆黒の夜を白夜に変え、天使の羽根が舞う。
「綺麗…。」
まるで天使のような見た目になったトワマリーを見た愛歌はつい感想が口から出てしまっていた。
「トワマリーのディサイドヘッド…!ジークヴァル、これなら…!」
「あぁ!希望が見えてきた!」
デトネイトランドレイクも変化が終了し、エタニティアトワマリーに目を向けた。
まるで天使と悪魔が相対する絵画のような幻想的な風景になっていた。
「何だい、何だい!?そのあたいより美しい姿は!?許さん、汚してやるぅっ!!」
デトネイトランドレイクが飛んでエタニティアトワマリーに攻撃を仕掛けに行くと同時にダーバラも突撃した。
「トワマリーがあのような姿になるとは…。ふふっ、面白い…!」
マーシャルは敵の中でただ一人、この状況で喜んでいた。
「愛歌、一緒に放とウ!」
「うん!」
エタニティアトワマリーが弓を構えると光の矢が自動的にセットされ、放つ。周りの∞リングを愛歌がデバイスで操作し、二十ものビームを一緒に放ってデトネイトランドレイクとダーバラに光の雨を浴びせた。
「小癪なぁぁぁ〜っ…!?」
ダーバラとデトネイトランドレイクは地面に落下した。
「…よし、決めた!愛歌、ストリングスヘッドを僕に貸してくれないか?」
「ストリングスを…?わかったよ、道人!はい!」
愛歌はストリングスのカードを実体化し、道人に投げた。道人はキャッチし、すぐにデバイスに読み込ませた。
『あなたは決して切れない繋がりを求めますか?』
「愛歌に、って事?うん、求める!」
『素敵。』
ジークヴァルの胸の顔がエンブレムに変形し、頭パーツを新たに装着。背中に巨大なリングが二つ装着された長い紐を持った形態に変化する。
「ストリングスジークヴァルになれたぞ、道人!」
「よし、ストリングスで今倒れているデトネイトランドレイクを捕縛するんだ!」
「心得たぁっ!」
両手に持った長い紐でデトネイトランドレイクの両足に結び付けた。
「そのまま上に思いっきりぶん投げてぇっ!」
「おおう!!」
ジークヴァルが力一杯ぶん投げ、デトネイトランドレイクを宙に上げた。エタニティアトワマリーがそこを待ち受ける。
「感謝するヨ、道人!ジークヴァル!」
∞リングの一つを左手に持つと光の刃が出現し、剣となって連続突きをデトネイトランドレイクにお見舞いした。最後に胸をVの字に切り裂いた後、弓で頭を打って地面に叩きつけた。
「今だぁぁぁぁぁーっ!!」
「おう!!」
ジークヴァルはストリングスから手を離し、道人を抱えてデトネイトランドレイクの落下地点まで駆け、二人でデトネイトランドレイクの左右の羽を掴んだ。
「これでもう、お前は飛べない!!」
道人のガントレットの力とジークヴァルの力でデトネイトランドレイクの羽を引きちぎった。デトネイトランドレイクは身体を振ってジークヴァルと道人を払い、何とか立ち上がった。足のストリングスを取ろうとするが、ジークヴァルはストリングスをまた手に取る。
「両手がハンマーじゃ不便だな!」
ジークヴァルはストリングスを思いっきり引っ張ってデトネイトランドレイクをまた地面に倒した。
「今だ!愛歌、トワマリー!」
「ありがとウ、道人、ジークヴァル!愛歌、とどメを!」
「うん!行くよ、エタニティアトワマリー!」
エタニティアトワマリーは四つの∞リングに光の剣を出現させ、照射。デトネイトランドレイクの両肩両足を串刺しにした。ジークヴァルはストリングスをデトネイトランドレイクから外す。エタニティアトワマリーは弓を構え、強力な光の矢を装填する。
「そうは…させるかい!」
ダウンしていたダーバラが飛翔し、エタニティアトワマリーの妨害をしようとするが、ジークヴァルのストリングスがダーバラの足に巻きつく。
「見るからにスピードが落ちているな。簡単に捕らえたぞ。」
「よし、凧揚げをするぞ、ジークヴァル!」
ジークヴァルはダーバラをぶん回した後、また地面に叩きつけた。
「ニンゲンがぁぁぁぁぁーっ!!」
ダーバラの叫びが虚しく響いた後、エタニティアトワマリーは矢を放つ。
「エタニティアアロー!」
激しく光を放つ矢はデトネイトランドレイクの胸を貫き、機能停止した。トワマリーは頭が消え、周りの背景は白夜から暗闇の夜へと戻った。深也のデバイスが粉になって消滅し、深也は正気を取り戻して地面に座った。
「…? 俺は、何を…?」
「海原君!」
深也のデバイスと邪悪なオーラがなくなった事を確認した道人は深也の元へと走った。
「良かった、元に戻ったんだね。」
「俺は、確か…。そうか、お前たちが俺を助けてくれたのか…。すまなかった…。」
「良い余興でした。」
マーシャルが拍手をしてダーバラの左に立っていた。道人は深也の前に立ち、マーシャルを睨んだ。
「デストロイ・デュラハンの初戦としては十分でしょう。思いがけぬデータも取れましたし…。シユーザー様に良い土産話ができた。帰りましょう、ダーバラ様。」
「くっ…!今、ライガの気持ちがわかったよ…!愛歌、トワマリー!覚えておきな、この借りは必ず返す!首を洗って待っときな!」
愛歌とトワマリーは一緒にダーバラを見た。マーシャルはダーバラの左肩に手を置き、その場から消えた。道人と愛歌は緊張の糸が切れ、ため息をついた。
「疲れたぁ〜っ…!ジークヴァルもお疲れ!」
「あぁ、道人もよく頑張ったぞ。」
ジークヴァルもストリングスヘッドが消えていて頭無し形態に戻っていた。
「トワマリー、お疲れ様。大活躍だったよ。」
「ううん、ディサイドヘッドが使えたのハ愛歌の強い決心のおかげヨ。ありがとう。」
「うん、こちらこそありがとう! あ、そうだ。博士たちに連絡しないと…。」
愛歌はスマホで博士に連絡を取った。
「…俺が奴らの誘いに乗ったばかりに大変な事しちまったな…。」
「大丈夫だよ、海原君。海原君は騙されてたんだし、僕も司令たちと話してみるからさ。立てる?」
「あぁ。」
深也が道人の手を取ろうとした瞬間、デトネイトランドレイクの近くで何かが着地し、土煙が舞った。
「な、に…?」
胸と頭にカブト虫の顔をつけ、一本のでかい角が目立つ巨人が出現した。
「マーシャル、カタヅケシナイ、ヨクナイ。オマエラ、ダーバラヲキズツケタ。イガイトヤル!」
謎のカブトムシ巨人はデトネイトランドレイクを持ち上げて、道人と深也に向かって投げつけた。
「道人、危ねぇっ!」
深也は道人を庇い、横に投げた。深也はデトネイトランドレイクと共に吹っ飛び、海に落ちた。
「深、也…?」
「貴様、よくも…!」
ジークヴァルは剣を取り出し、謎のカブトムシ巨人に向けた。
「オレ、アトソウジシタダケ。カエル。」
謎のカブトムシ巨人は高くジャンプし、去った。
「待て!くっ…!」
「深也…?深也ぁっ!」
道人は深也が落ちた場所まで走り、手摺りを掴んで海を見渡したが、深也の姿はない。連絡中の愛歌は急いで深也の捜索を博士たちに頼んだ。
「深也ぁぁぁぁぁーっ!!」
道人の叫びは虚しく、静かな夜の海に響いた。
○式地悟 65歳
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○卒間塔馬 33歳
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そんなものはない!




