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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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96章 出航、宇宙へ!

「おい、道人。起きろ、おい。」

「ん、んん…?」


 道人は身体を揺すぶられたので目を擦ってゆっくりと上半身を起き上がらせた。ヤジリウスがまた勝手に実体化している。目覚まし時計を確認すると六時四十五分だった。


「…まだ七時にもなってないじゃないか…。もうちょっと…。」


 昨日はジークヴァルたちと話し合い、泣き疲れたからか今夜は久々にぐっすり眠れた気がする。こんな機会は今の状況じゃ滅多にない。道人はまた布団を被って寝た。


「この機械が急に振動し始めたんだ。何だ?緑野郎、何とかできないのか?」


 ヤジリウスはスマホの画面を人差し指でつんつん突いた。


「何?貸して…。」


 道人は起き上がり、ヤジリウスからスマホを受け取った。博士からメッセージが来ていた。道人はジークヴァルとヤジリウスにもわかるように読み上げる。


『朝早くにすまない。突然だが、今朝から速攻でフランスに向かってもらう事になった。こちらの都合で急かしてしまって申し訳ない。大神君を車で迎えに行ってもらったから準備してくれ。準備と言っても明日には日本に戻れるからトランクケースはいらんぞ』…待って。どこから突っ込んだらいいの…?」


 道人は左手で顔を覆った。寝起きのため、うまい突っ込みが思いつかない。とにかく、道人は立ち上がって私服に着替えた。


「明日には日本に帰って来られる?フランスから?何を言ってるんだ…?」


 博士の事だ、何かとてつもない事をやろうとしているのはこの文章からでも伝わってくる。道人は下の階に降りて洗顔を済ませた。


「あら、道人。今日も起きるの早いのね。」

「あ、おはよう。実は…。」


 道人が秋子に言いかけるとインターホンが鳴った。


「あら?こんな朝早くに誰かしら?」


 秋子は玄関まで歩き、ドアを開けると大神が立っていた。


「おはようございます、奥さん!デュラハン・パークの者です!道人君、ごめん!急いで!七時半にはパークに着いて欲しいの!朝ご飯はこっちで用意するから!」


 大神は両手を合わせて申し訳なさそうに道人に焦りながら話す。


「えぇっ?ちょ、ちょっと待ってよ、大神さん!リュック、持ってくるから!」


 道人は急いで階段を上がり、自室に戻った。


「道人、リュックとデバイスと財布とスマホだ。着替えも既に一日分入れといたぞ。」


 ヤジリウスが全て準備していてくれた。

以外な几帳面さに少し驚いた。


「あ、ありがとう。」

「おう。」


 そう言うとヤジリウスは歯車付きの布に戻り、道人のポケットの中に入った。急いで下の階に降りて大神と秋子の元へ向かう。


「な、何か慌ただしくてごめん、母さん!朝ご飯の支度手伝えなくてごめんだけど…。」

「いいのよ、気にしないで。事情は大神さんから聞いたわ。気をつけて行ってらっしゃい。」


 秋子も急な出来事なので少し慌て気味だ。


「何か明日には?帰って?来られる?らしいから?それじゃあ、いってきます!」

「とにかく、帰ってきたら連絡入れて。晩御飯作っておくからね。」

「奥さん、道人君は我々が責任を持ってお預かりします!どうか、ご安心を!」


 道人は秋子に手を振ると大神についていき、車の前に立った。


「道人、おはよっ!お待たせ!」


 愛歌もリュックを背負って慌てて走ってきた。


「道人、どう?髪のセット慌ててしちゃったんだけど、変なとこない?」


 愛歌は右手で髪をかき上げて道人の近くに寄る。近づいた途端、良い香りが漂ってきてドキッとする。眠気覚ましにはちょうど良かったのかもしれない。


「だ、大丈夫。普段通りの愛歌だよ。」

「そう、良かった…!」


 愛歌は安心し、柔らかな笑顔を道人に向けた。昨日の夜の事もあってか、少し目を合わせづらい。


「潤奈ちゃんも来たようね。」


 鞄を持った潤奈がフォンフェルに抱えられ、道人と愛歌の近くに着地した。


「…おはよう。」

「おはようございます。」


 潤奈もまだ眠そうだった。


「さぁ、みんな!乗って乗って!行くわよぉっ!」


 道人たちは車に乗り、大神はエンジンをかけて車は発車した。


「あの、大神さん。明日には日本に戻れるって本当なんですか?」


 道人は操縦中の大神に尋ねた。


「えぇ、博士が言うにはね。すごい性能の飛行船らしいわ。楽しみにしてて、って博士が言ってたわ。」

「そ、そんなに凄い飛行船なんですか…。」


 一体どんな形なのか、道人には想像出来なかった。


「詳しい事は船内で話すらしいわ。あ、船内はシャワールームもあるみたいだから身だしなみが気になるんだったら後で浴びるといいわよ、愛歌ちゃんに潤奈ちゃん。」

「あ、そうなんだ。やったね、潤奈。」

「…うん。」


 シャワールームまであるとはますますどんな飛行船なのか、道人は気になって仕方がなかった。宇宙船の事を腕を組んで考えている間にパークの実験エリアに到着した。博士が駐車場で待っていた。

 

「おぉっ、待っておったぞ、みんな!すまんな、突然!時間がない!早速行こう!」

「えっ?ちょっ、ちょっと博士ぇっ!?」


 道人たちは急いで張り切る博士の後を追う。フォンフェルも姿を現し、道人たちについていく。格納庫まで行くと飛行船が姿を現した。


「こ、これが飛行船…。」

「結構大きいね…。」

「…うん…。」


 飛行機と言うよりは丸くて、ガシャポンのカプセルに近い。高さは大体ビル三階建ての建物くらいの大きさだろうか。


「潤奈君の宇宙船を参考にした対バドスン・アータス用高速強襲船のプロトタイプじゃ。」

「…そっか、私の宇宙船を…。」


 潤奈は飛行船を笑みを浮かべて見ていた。自分の宇宙船を調べてもらった成果が見られたのと、役に立てたので嬉しいようだ。


「さぁ、みんな!早速乗るんじゃ!既に流咲君は乗っておるぞ。」


 博士がそう言うと道人たちは博士に案内され、飛行船の入口から船内に入った。


「わしはここまでじゃ。やる事が山積みでな。後の説明は通信でするから中で待っとくれ。それじゃあ、良き船旅を!」

「あっ、ちょっと!博士!」


 扉が閉まり、博士は急いで走っていった。仕方ないので道人たちは奥に進む。内部構造は旅客機と似ている。右に二つ、左にも二つの座席が縦に六つ分並んでいた。既に整備スタッフの方が十五人座っていた。


「おはようございます&ようこそ、道人君たち!デュラハン・シップはあなた方を歓迎します!」


 流咲の姿が目の前のモニターに映った。どうやら操縦席にいるようだ。隣に操縦士らしき人も少し映っている。


「デュ、デュラハン・シップ?」

「はい、シンプル・イズ・ベストじゃろう?…って博士が申してました!」


 流咲が博士の物真似をして楽しそうに話した。


「さぁさぁ、空いている一番前の席に座って下さい、道人君たち!フォンフェルさんは下の階にジークヴァルさんたちのボディが置いてある格納庫がありますのでそこに。シートベルトをちゃんとつけて下さいね。もうすぐに出発しちゃいますから!」


 道人は左、愛歌と潤奈は右の座席に座った。空いた席に道人はリュックを置く。シートベルトを罰の字に身体につけた。フォンフェルは言われた通りに下の階に向かった。


「座りましたね?お手洗いも大丈夫ですね?」

「は、はい。大丈夫です。」

「あたしも。」「…うん。」


 道人たちは目の前の壁にもついている小型モニターに映っている流咲に返事をした。


「それじゃあ、もう出航しちゃいます!いざ、行かん!フランスの大地へぇ〜っ!」


 ノリノリの流咲を見て隣の席に座っている操縦士が静かに笑った。一旦通信が切れ、モニターは暗転した。


「おっ、と。何…?」


 少し揺れたので道人は窓から外を見た。エンジン音が鳴り響き、飛行船が徐々に浮き始めている。飛行船の前のシャッターが開いていく。実験エリアの外が変形していき、滑走路が出来上がる。


「何かすごい事になってるんですけどっ!?」


 宇宙船は移動を開始し、物凄いスピードで前進し、上昇を開始する。


「大丈夫か、道人?」

「う、うん。思ったより…というか、揺れが少ない…?」


 ジークヴァルに返事した後、道人は窓を見るが窓はシャッターが降りて外が見られなくなった。しばらく静かな時が流れる。本当に飛んでいるのか?まだ離陸してないのでは?というくらい静かだった。しばらくするとモニターに流咲が映る。


「よし、第一段階完了しました!これより第二段階、大気圏突入フェイズに移行します!船内に異常がないかチェックしますのでしばしお待ちを!道人君たち、窓のシャッター開けますよ?きっと驚いちゃいますから!」


 流咲がそう言い終えるとシャッターが開いた。


「えっ…!?嘘っ…!?」

「何、何?どうしたの、道人?」


 道人は外を見て驚いた。道人の目の前に

広がっているのは一面の青、「地球」だった。


「ち、地球…!?えっ!?だ、だって、Gとか全然、なかったのに…!?」

「ふふん♪そうでしょう、そうでしょう!この船の中には球体型コクピット『スフィアフィールド』を採用していて、どの角度から飛んだとしても乗組員は角度を感じる事なく、快適に過ごす事ができるのです!」


 何かさらっとすごい事言ってる、この人。


「今なら、シートベルト外していいですよ。シップ君にお願いして、動きやすいように重力も調整しますね。地球を見る機会なんて滅多にありませんから、存分に楽しんで下さい!」

「わぁっ、マジかっ!?スマホ、スマホ…!」

「み、道人!私にも見せてくれ!」


 道人は興奮してスマホを取り出し、地球を撮ろうとする。整備スタッフたちも窓から地球を見て賑わっている。


「あっ、道人、ずるい!あたしたちの窓だと真っ暗だし!あたしも、あたしも…!」

「…あっ!愛歌、その状態じゃ…!?」

「ん?わぁっ!?」


 愛歌の驚いた声が聞こえて道人はスマホを構えたまま愛歌の方を振り向いた。


「いぃっ…!?ピnk…!?」


 愛歌がスカートをひらひらさせて宙に浮いている。


「ちょっ、ちょっと!?道人、今…そのスマホで撮ったんじゃないでしょうねっ!?」


 愛歌が頬を染めてスカートを両手で抑えている。


「えっ!?あっ!? …いや、と、撮って…ないよ…。うん…。」

「嘘つけぇっ!」

「…ど、どうしよう…!?」

「しっ…!?」


 潤奈もスカートなので抑えてどうしたらいいか焦っていた。


「全く…。大丈夫か、愛歌の(あね)さん。気をつけな。」


 ヤジリウスが実体化し、愛歌を着地させた。


「あ、ありがとう、ヤジリウス…。」

「…愛歌、制服にチェンジしよう。制服のスカートは見えても大丈夫なようにコーティングしてあるから…。」


 潤奈の提案で愛歌と潤奈は右肩のエンブレムにタッチし、制服姿に変わった。


「もう、最初から制服姿になっとけば良かった…。後、道人、スマホ貸して?」


 愛歌さんの笑顔が怖い。道人は大人しく愛歌にスマホを渡して例の画像を消して返してもらった。


「ごめんなさい、愛歌さん!悪気はなかったのです…!」


 モニター越しに流咲が両手を合わせて謝罪した。気を取り直して道人は地球を愛歌、潤奈、ヤジリウスと一緒に見る。愛歌もデバイスを持ってスマホ越しにトワマリーにも見せている。


「わぁっ…!綺麗…!」

「…うん。私、地球に来た時は余裕がなかったけど、こんなに綺麗だったんだね、地球って…。」


 潤奈は託された設計図を地球に届けるために必死だったから無理もない。潤奈は嬉しさと寂しさが混じったような顔をしていた。


「うん、これが宇宙飛行士の父さんが見ていた光景なんだ…。」

「…あ、そっか。豪も…。」

「こんなに早く父さんが見ていた地球を間近で見られるなんて思わなかったなぁ〜っ…。」

「そうだね…。良かったじゃん、道人。お父さんと同じものが見られてさ。」

「うん…。」


 その後、道人はしばらく無言で目を輝かせて地球を見ていた。


「さぁ、皆さん!機体に異常はありません!本艦はこれより、フランスのエトテワールにある遺跡近くに着陸できるように座標調整をします!朝食に宇宙食を用意しました!これも貴重な経験です!是非堪能して下さい!」


 流咲が通信を一旦切るとスタッフが宇宙食を運んできた。


「栄養ドリンクみたいなチューブと色んな食べ物がプリントされてる袋詰めのパン?あっ、ハンバーガーもある。へぇ〜っ…!」

「道人、あんまり食べ過ぎるなよ?」


 ジークヴァルの忠告を守り、道人はハンバーガーと板じゃがを食べる事にした。


「道人、これ美味しいよ?それ!」


 愛歌はクッキーを横に投げると道人の前まで漂ってきた。早くも愛歌は無重力に慣れてきている。


「みんな、宇宙を満喫できているようだな。」


 司令が正面のモニターに映った。


「あ、司令。もう、驚きの連続ですよ。急かされて大変だったんですから。」

「すまない、明日以降のスケジュールを考えると道人君たちには早めに日本に帰ってきてもらう必要があってな。急ピッチになってしまった。」


 道人たちは緩んでいた気を引き締めて司令の話を真剣に聞く。


「実は海音君から連絡があってな。キャルベンの兵士が水縹星(みはなだせい)海岸で目撃されたらしいのだ。」

「キャルベンが…?」


 確かにキャルベンはクラーケン戦以来動きを見せていない。そろそろ行動を起こしてもおかしくはないだろう。


水縹星(みはなだせい)海岸にまた行ってもらう必要があるかもしれん。それと近々博士が参加する必要がある会議があってな。それの護衛役も必要なのだ。」

「遺跡の試練も今回だけって訳じゃないですしね…。本当、やる事がいっぱいだ…。」

「あぁ、君たちには本当に苦労を掛ける…。」


 司令は申し訳ないように下を向いた。


「道人君、海音君からもらった十糸(といと)姫の糸はその艦に保管してある。遺跡に行く際は持っていくといい。」

「そうですね、誰かが適応するかもしれませんから…。」

「それとフランスに着いたらガイド役が待っているから、困ったらその人に頼ってくれ。デュラハンの事情は伝えてあるから、安心して頼ってくれ、以上だ。わからない事があったらいつでも連絡してくれ。みんな、健闘を祈る!」


 司令が敬礼すると道人たちも敬礼した。司令との通信は終え、流咲が映った。


「皆さん、シップ君が座標計算を終えました。これより大気圏突入に入ります。と言ってもご安心を。Gはあまり感じないはずですから。」


 流咲の通信が終わった後、みんな食事を終え、再び窓にシャッターが降りた。シートベルトを付け直し、デュラハン・シップは大気圏突入を開始した。

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