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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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95章Side:大樹 三つ首の帝王シャクヤス

「…さて、ここは私たちが開演する大道芸大会としてはいささか狭い…。外に出ましょうか!」


 そう言うとシャクヤスはヘッドパーツでのお手玉を続けながら廃工場から外へぴょんぴょん後ろに飛び跳ねていった。


「大樹、追うさ!」

「おう!」


 大樹とカサエルは共に外へと走り、シャクヤスと対峙する。


「それじゃあ、早速行きますよぉっ!」


 シャクヤスは四本のナイフの角がついた頭を装着し、両手の指の間全てにナイフを持ってすぐに投げた。カサエルは宙に浮いた三つの三度傘を操作して防ぐ。


「カサエル、ヘッドチェンジじゃ!」


 大樹は錫杖ヘッドのカードを実体化させ、デバイスに読み込ませた。


『錫杖は決して左手で持ってはなりません。わかりましたか?』

「もうわかっとるわい!」

『よろしい。』


 カサエルは虚無層傘をつけた錫杖カサエルに姿を変える。


「ここには物がいっぱいあるさぁっ!」


 カサエルは放置された工具箱を見つけ、箱を開けて錫杖を振る。中に入っていた何本もの釘やネジ、ドライバーが一時的に意思を持ち、シャクヤスの周りを飛び回る。


「フフッ、何のぉっ!」


 シャクヤスは自分に当たりそうな釘やネジだけをナイフで弾きながらステップを踏む。


「三度傘も追加さぁっ!」


 錫杖カサエルが左手を横に振ると宙に浮いていた三度傘もシャクヤスの元へ飛んで行った。


「にっしっし!ここでとっておきの秘密兵器『大樹のドキドキ!子瓶』じゃぁっ!カサエル!」


 大樹は両手にニ本の小瓶を持ち、カサエルに向かって投げた。


「ほいさぁっ!」


 錫杖シャクヤスは錫杖を振ると二本の小瓶も意思を持ち、飛んでいった。


「ん?その小瓶、怪しいですね…。」


 シャクヤスは小瓶だけはナイフで壊さずに無視する。


「そうじゃろう、そうじゃろう!怪しいじゃろう?」

「でも、怪しんでも無駄さぁっ!あっしが割るからさぁっ!」


 錫杖カサエルは三度傘を操作し、シャクヤスの頭上で小瓶を二つ割った。


「おぉっ…!?これはこれはぁ〜っ…!?」


 小瓶の中に入っていたのは『ラインパウダー』。学校の校庭に白線を引く際に使われる粉である。ラインパウダーがシャクヤスの頭に当たり、視界を奪った。


「決まったぁっ!今じゃ、カサエル!」

「任せるさぁっ!」


 錫杖カサエルは近くにあった多数の鉄パイプの近くで錫杖を振り、シャクヤスに向かって飛ばさせた。視界が奪われたシャクヤスに鉄パイプは全て直撃し、シャクヤスは地面に倒れた。


「やりますねぇ〜っ!まさかこんな手で来るとは!いいでしょおぉ〜っ!」


 シャクヤスはすぐに起き上がり、ラインパウダーがこべりついた頭を取って四角いヘッドパーツを装着する。


「トラウマを思い出させてやりますよ、大樹ぅっ!」


 カサエルの身体に三体、大樹の身体に三体の爆弾頭の小さなピエロが身体にしがみつこうとした。


「無駄じゃぁっ!」


 小人爆弾ピエロは大樹にしがみつこうとすると制服バリアで弾かれ、地面に落下した。


「ひひぇぃっ!」

「進歩がないのぉっ!爆弾ピエロ戦法、破れたりぃっ!」

「ほいさぁっ!」


 錫杖の力では初めから意思を持っている爆弾ピエロは操作できないが、錫杖カサエルは三つの三度傘を自分の元へと戻す。戦島(いくさじま)の時と同じ方法を取り、三度傘をノコギリのように高速回転させて三体の爆弾ピエロの上半身と下半身を真っ二つにして地面に落とした。


「素晴らしい…!私をこんなに追い詰めるとは…!?いいですよぉっ!」


 シャクヤスはもう効かないとわかった四角い頭を投げ捨て、額や耳にトランプが張り付いたピエロの頭を装着する。両手にトランプをたくさん持ち、大樹とカサエルに向かって投げまくる。


「無駄さぁっ!」


 錫杖カサエルは錫杖を振りまくりながら前進。投げられたトランプに意思を持たせ、シャクヤスに送り返した。


「俺にも効かんぞぉっ!」


 制服バリアだけでは保たないかもしれないため、大樹は護身用の折り畳み式棒を展開し、向かってくるトランプを制服バリアと護身棒で弾く。


「素ン晴らしいぃ〜っ…!あなたたちは最高だぁ〜っ…!」


 シャクヤスは自らが投げたトランプ、釘、ネジ、ドライバーの雨を浴び、後ろに倒れた。シャクヤスはピンクの煙を発生させ、その場から消えた。


「む、奴お得意の変わり身か。」


 大樹とカサエルの前に縦長い箱二つが出現した。


「…見事です…!私との戦いからあなた方は進歩している…!」


 縦長い箱の右の方からシャクヤスの声が聞こえる。


「当然じゃぁっ!もう二度とカサエルをボロボロな姿にはしたくないからのぉっ!」


 大樹が用意したラインパウダーの小瓶は錫杖ヘッドの性能を更に活かすため。護身用折り畳み棒は制服バリアを得た上で更に自衛手段を持てないか、という思案の結果。色んな人に協力を得て、作り上げた戦法。大樹の戦いが苦手というカサエルをサポートしたいという願いの表れだった。


「カサエル、箱は二つ共壊すぞ。よいな?」

「わかったさぁっ、大樹!」

「…なるほど、面白い余興だ…。」


 縦長い箱の左の方からシャクヤスとは別の声が聞こえてきて大樹の身体に悪寒が走った。


「…な、何じゃ…?シャクヤス以外に誰かおるのか…?」

「…ふむ、どれ…。…少し遊んでやろう…。」


 二つの縦長い箱は爆発し、中からぐったりしたシャクヤスが宙に浮かぶ。右肩に仮面の竜面、左肩に仮面の鳥顔の長首がついた肩パーツがつき、悪魔さを更に増したピエロの頭を装着。両手・両足に追加装甲をつけた凶悪な姿に変わる。


「な…何さぁっ、その姿は…!?」

「き、気をつけるんじゃ、カサエル…!何か、様子が変じゃ…!」


 カサエルと大樹はじりじりと後ろに下がり、三つの三度傘と唐傘を周りに展開して警戒する。


「ふむ?」


 シャクヤスが首を右に傾けた後、仮面の竜の顔の口が開き、一瞬光る。大樹の横を何かとてつもなく速いものが通り過ぎていった。


「…えっ…?」


 大樹とカサエルが後ろを見ると地面が(えぐ)れていて、熱で真っ赤に加熱していた。


「い、今…何が起こったんじゃ…?」

「…ふむ、もう一度見せてやろうか…?」


 再び仮面の竜が口を開く。


「大樹、危ないさぁっ!?」


 また一瞬光ると大樹の制服バリアが粉々になり、鉄でできた三度傘の表面が真っ赤に加熱し、ドロドロになって溶ける。


「じょ、冗談じゃないわい!?こんなの当たったら…!?」


 錫杖カサエルは急いで大樹を抱えて他の倉庫の屋根へと跳んだ。深也たちのいる廃工場に当たったらまずい、カサエルと大樹は深也たちを巻き込まないように遠くへ移動する。


「…くっくっ、逃さん…!」


 シャクヤスもジャンプし、錫杖カサエルを追う。今度は鳥の頭が口を開き、竜巻を飛ばす。錫杖カサエルは屋根を飛び跳ねるのを止め、そのまま落下。着地してすぐに走る。


「…くくっ、どうした…?」


 鳥の顔が竜巻を乱射。建物の壁や柱に当たると一部が削れて消滅する。


「あの竜巻は威力は熱線程じゃないが、連射性能が高いようじゃの…!」


 大樹は逃げ回りながらも冷静に現在のシャクヤスの武装を分析する。錫杖ヘッドが時間切れになり、カサエルは元の姿に戻る。


「カサエル、何とか策を考えたい…!ひとまずどこかに隠れるんじゃ…!」

「合点さぁっ…!」


 カサエルは大樹を下ろして使われていない倉庫内に隠れた。


「…あ、あれは本当にさっきまで戦っていたシャクヤスと同一人物なんか…!?まるで別人じゃ…!?」

「…いや、シャクヤスは自分の芸風に自信や拘りを持っている猛者さぁ。だが、今の奴の攻撃には全くそれを感じないさぁっ…!」

「じゃあ、本当に別人に…?本当のあいつはどこに消えてしまったんじゃ…?」


 その時だった。大樹の耳に急に不愉快な重音が聞こえ始める。大樹は思わず両耳を塞いだ。


「た、大樹!?ここにいたらまずい気がするさぁっ!急いで外に出るさぁっ!」


 カサエルも何か(おぞ)ましいものを感じたのか、急いで大樹を抱えて走る。外に出て、空を確認するとシャクヤスの姿が嫌でも目に入った。シャクヤスは右手を上に上げていて、重音を鳴り響かせるとてつもなく巨大な黒い球体を頭上に出現させていた。


「な、何さぁっ…!?あれは…!?」

「ひ、一つわかる事がある…!あ、あいつはあれをここに投げて…ここいら一帯を吹き飛ばす気じゃ…!?」

「み、見境なしさぁっ!?」


 大樹とカサエルは逃げようと思ったが、とても避けられそうにない。それでも二人は恐怖を拭い去り、全力で駆けた。


「…()()()…!」


 シャクヤスは右手を下ろすと巨大な黒い球体はゆっくり落下する。


「「うおおおぉぉぉぉぉ〜っ…!?」」


 大樹は咄嗟にカードを実体化し、デバイスに読み込ませた。


『ディサイドヘッド、承認。この承認に問いかけは必要ありません。』


 カサエルに顔全体に白い布が巻かれたヘッド【奇跡自在】の姿になる。


(一か八か、この場は奇跡に懸ける…!カサエル、頼む…!俺と同じ事を思ってくれぇっ…!)


 黒い球体がどんどん地面に近づいてくる。


()()()ぉぉぉぉぉーっ!!」

()()()さぁぁぁぁぁーっ!!」

『奇跡実行。』


 大樹とカサエルが同じ言葉を発した時、カサエルの頭が虹色に輝き出し、黒い球体は一瞬で消えた。


「…何…?」


 シャクヤスは自分が放った黒い球体が突然消えて不思議に思い、息を荒げている大樹とカサエルの前に着地した。


「…貴様ら、何をした…?…何か妙な術を…。…ぬ…?」


 シャクヤスがそう発言した瞬間、右手で頭を抱えた。


「ジュ、ジュンナ…!ラックシルベ、デバイス…!ち、違う…!私が本当にしたいのはジュンナを、見つけて…守り…。」

「な、何じゃ…?潤奈ちゃんがどうかしたのか…?」


 急に苦しみ出したシャクヤスを見て大樹とカサエルは唖然とする。


「あ、あの子はまだ小さい…!わ、私は約束したんだ…!ジュンナを…!」

「…ふんっ…!!」


 シャクヤスは全身からオーラを出し、気を引き締め直した。


「…ふん、人格制御がおかしくなったか…。…思ったより不快だな、この感覚は…。」


 シャクヤスは頭を取り、元の姿に戻った。


「…おや?私は、どうしてぇっ…?」


 シャクヤスは周りを確認すると同時に全身から火花が散り始める。


「お、おやぁっ…!?これは、まずいですねぇっ…!早く、修理せねばぁっ…!?」


 シャクヤスは高く飛び、建物の屋根の上に立って大樹とカサエルを見下ろした。


「今日はあなたたち二人の成長が見られて良かったですよぉ〜っ?また競い合いましょぉっ?それでは、チャオ!」


 そう言うとシャクヤスは姿を消した。


「な、何だったんじゃ、一体…。」


 大樹は緊張の糸が解れ、その場に尻餅をついた。しばらく呆然としたが、首を横に振り、カサエルと共に深也たちのいる廃工場へと走った。

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