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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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89章Side:ジークヴァル D会合

 みんなで記念撮影をした後、道人たちはまだ食事を楽しむ事になった。ジークヴァルたちは道人たちの許可を得て、パーティ会場近くの人気が少ない休憩広場に集った。簡易台の上にジークヴァル、トワマリー、カサエルのデバイスをフォンフェルは置いた。その後、ランドレイクとルレンデスと共に座る。


「よし、みんな集ったな!これより、D(デュラハン)会合を開始する!」

D(デュラハン)会合、ですか?」


 フォンフェルが真っ先にジークヴァルに尋ねた。


「あぁ、昨日スランとの交流を深めるためにデュラハン同士で会話して閃いたのだ。我らもこういう場を設けて話す機会があってもいいんじゃないか、とな!」


 ジークヴァルは右手で握り拳を作って自分のアイディアがナイスな提案である実感を得る。


「ちなみにディサイドをつけなかったのはいずれ、デュエル・デュラハンたちにも会話に参加して欲しいと思ったからつけなかったのだ。」

「なるほど、名付け理由は理解しました。」

「でも、ハーライムやオルカダイバーたちが参加するのは難しくねぇか?ハーライムはともかく、他のメンバーは三分しか実体化できねぇしな。」


 ランドレイクが右手の三本の指を立てて三分である事を表し、デバイスに映るジークヴァルたちにわかりやすく見せる。


「確かにそうだが、諦めたくはないな。いずれはデュラハンみんなで話し合ってみたい。この名付けは言わば、験担(げんかつ)ぎなのだ。」

「なるほど、良い心掛けさぁ。」

「永久の題目(だいもく)だね。」


 カサエルとルレンデスが頷いてジークヴァルに共感する。


「では、早速問題が…。今日入った新入りの彼がどこにもいません。パークの外へは出ていないようですが…。」


 そう、今日は突然、道人の新たなデュラハンとなったヤジリウスの歓迎も兼ねていたのだが、ヤジリウスは勝手に実体化した後、


「パーティ?酒盛りとかそういう類いのやつか?なら、馴れ合いはごめんだ。」


 と言ってどこかへ行ってしまったのだ。


「え?そんな事言ったノ?感じ悪ッ!」

「付き合いの悪い新人君だねぇ…。今まで俺らの中じゃいなかったタイプだ。」

「うむ。だが、道人から聞いた話だと彼は今日生まれたばかりの式神デュラハンだと聞く。まだ意思ある者との距離感が掴めないのだろう。次第に慣れていけば良い。それに無理に強要はできないからな。」

「まぁ、生まれて間もないのは俺とルレンデスもそうか。しかし、心が広いねぇっ、ジークヴァルは!よっ!さすがは我らがリーダー!」


 ランドレイクは自分の弾んだ心を表すために両手を一回軽くタッチする。


「待て。道人はリーダーと任命されたが、私もリーダーとは限らないぞ。」

「そういう謙虚さガ、ジークヴァルの美徳よネェ。」

「よし、せっかくの機会だ!今日はとことん語り合おうぜ!」


 ランドレイクは背後に置いてあった木箱を目の前に移動し、蓋を開ける。オイルがたくさん入っていた。


「あ、ずるイ!私たチ、デバイスの中だから飲めないのニ!」

「なるほど、さっき遅れてやってきたのはそのためか…。」

「へへっ!博士に許可を得てもらってきたのよ!悪ぃな、フォンフェルとルレンデス

も飲むだろ?」


 ランドレイクはオイル缶を二つフォンフェルとルレンデスに差し出した。二人は受け取る。


「かたじけない。」

「これ年代もの?僕は永久を好むから、成分変質が起きてるのはごめんだよ?」

「大丈夫、大丈夫。未開封の五年ものさ。」


 ランドレイクは早速蓋を開けて飲む。


「良いなぁッ、デバイスに戻れない組ハ。自由に歩き回れるんでしょ?」

「いや、そうでもねぇよ。なぁ、ルレンデス。」

「うん、基本的に格納庫でぽつりさ。グルーナも動き回れない立場だし。あ、でも、グルーナ、割と通信してくれるけどね!」

「うちの船長はあんま通信して来ねぇのよ。寂しい、寂しい。俺らとしちゃデバイス組の方が羨ましいぜ。ほとんど道人や愛歌、大樹と一緒だろ?」

「それこソ、そうでもないヨ?学校だとあんまり喋れないかラ、授業中は退屈だシ。お風呂や勉強時間もあっテ、常に一緒って訳じゃないんだかラ。ねぇ、ジークヴァル、カサエル?」


 ジークヴァルとカサエルは腕を組んで頷く。


「だが、道人の鞄の中で聞く授業は面白いものがあったぞ。歴史の授業の先生は教え方が上手だった。」

「理科の授業も面白いさぁ。芸のネタが増えるさぁ。」

「案外授業楽しんでたのネ、二人共…。わかっタ!つまリ、デバイスに戻れない組な上ニ常に潤奈と一緒にいられるお姉ちゃんが最強って事ネ!」

「やはり私の立場に目をつけましたか…。」


 フォンフェルはもうオイルを飲み干して机に置いた。おかわりをランドレイクからもらう。


「確かに主の世話をするのは楽しい。料理もできるようになって、料理の師匠もできた。しかし、私には発作がある…。いつ身体を壊して主に迷惑をかけないか恐れながら暮らしている面もある。」

「…あッ。ごめン、お姉ちゃン…。私、無神経だっタ…。」


 トワマリーは失言だったと気落ちした。フォンフェルは左手でトワマリーのデバイスを手に取る。


「いえ、いいのですよ、トワマリー。私こそ、この場にそぐわない湿っぽい話をしてしまった…。気を落とさずに、ね?」

「うン、ありがとウ、お姉ちゃン…。」

「良いねぇっ、仲良し姉妹を(さかな)にオイルを飲むってのも…。」

「美しい姉妹愛さぁっ…。」

「君たちは永久の姉妹愛に最も近いと見たね。」

「そこォッ!私たチ、姉妹は見せ物じゃなイ!」


 トワマリーはビシッとランドレイクを指差す。フォンフェルはトワマリーのデバイスを机に置き直した。


「しかし、俺らは念話って形でパートナーと会話できるけどよ。逆はできないのは不便に感じるとこだよな。」

「あぁ、そうだな…。」


 そう、ジークヴァルたち、ディサイド・デュラハンは念話でパートナーと会話する事ができる。ただし、それはこちらからでしか送信できない。送信してパートナーが受信する事で繋がって、念話が成立する。道人たちからは念話は送信できないのだ。だがら、デュラハンたちはパートナーが何に悩んでいるのか、わからない時がある。


「…ライガ戦の後の道人は明らかに…。」

「ん?どうしたノ、ジークヴァル?道人がどうかしタ?」

「あ、いや…。」


 トワマリーがジークヴァルの様子を気に掛けた。ジークヴァルは良い機会だから話してみようと思った。


「…ライガ戦の後、道人はどこか変わったような気がしたんだ…。」

「変わった、とは?」


 フォンフェルが詳しく聞いてくる。


「何と言うのか、いつも以上に人や物を大事にしようとしているというか…。失う事を恐れながら行動しているように見えた。」

「何かを守れないかもしれないって恐怖は常に付き纏うものさぁ。それは仕方ないさぁ。」

「永久を保ちたい、って気持ちは僕は賛同するけどな。良い心掛けじゃないか。」


 カサエルとルレンデスが道人に共感する。


「あぁ、人や物を大事にしたい…それ自体は問題ないんだ。道人が何故そうなったのか、わかってはいるんだ…。傀魔怪堕(かいまかいだ)十糸(といと)姫を助けられなかった事が相当ショックだったのだろう…。それに地球の意思にも疑念を持ったようだし…。」


 司令室で道人は傀魔怪堕(かいまかいだ)で何を体験したのか、話してくれた。だが、傀魔怪堕(かいまかいだ)にジークヴァルはついていけなかった。道人の身に何が起こったのかをジークヴァルは言葉でしか理解できていない。その場にいなかった者に経験談を伝えるのは難しい。ジークヴァルは地球の意思とも、十糸(といと)姫とも面識がない。道人と認識の差がどうしても生まれてしまうのだ。


「私のこの悩みはいずれ道人にも伝わるだろう…。そうなったら…。」

「何だよ、そこまで理解できてんなら、本人にぶつかって来いよ。」

「…! ランドレイク…。」

「その傀魔怪堕(かいまかいだ)にいた時ハ、ハーライムが常にいたんでしョ?ハーライムにモ相談した方がいいんじゃないかナ?」

「…もう一人の方は話に応じるか分かりませんが…。」


 フォンフェルの言う通り、ヤジリウスは素直に話してくれなさそうだ、とジークヴァルは思った。


「ジークヴァルたちはあっしが大樹とうまくいかなかった時、親身になって手助けしてくれたさぁ。だから、今度はあっしが恩を返す番さぁ。」

「永久に仲良しはいいけど、永久に仲悪くなるのは良くないです。」

「ぶつかるのに勇気はいるけどよ、お前と道人はそれくらいで崩壊する程の玉じゃねぇよ。俺が保証する。だから、思い切ってぶつかって来な!」

「みんな…!ありがとう…!今日は話せて良かった…!」

「…フォンフェル、どこ?」

「トワマリー、ここにいるんでしょ?」


 潤奈と愛歌の呼ぶ声が聞こえてきた。


「はい、主!どうかしましたか?」

「…あ、そこにいたんだね。もう八時だからそろそろ帰るよ!」

「んじゃま、今日はここらでお開きか…。」


 ランドレイクは立ち上がり、オイル箱を片付け始める。


「片付けは俺とルレンデスがやるからよ。早く帰んな。待たせちゃ悪いだろ?」

「ありがとう。みんな。今日は良き会合だった。またやろう。フォンフェル、最後は私が湿っぽい話をしてしまったな、すまない…。」

「オチが良かったからいいですよ、ジークヴァル。」


 フォンフェルはジークヴァル、トワマリー、カサエルのデバイスを持って潤奈と愛歌の近くまで跳んだ。そのまま会場まで歩き、道人たちと合流する。会場はもうほとんど片付けられている。


「道人、ジークヴァルのデバイスをお返しします。」

「ありがとう、フォンフェル。」


 道人はデバイスを受け取り、ジークヴァルを見た。


「ジークヴァル、みんなとの話し合い、楽しかった?」

「あぁ、最高の会合だった。 …道人、後で話したい事がある。…いいか?」

「…わかった、いいよ。俺も話したい事あったから、ちょうど良かった。」


 ジークヴァルは何とか道人と話す約束ができて安心した。道人はリュックを背負い、ホルダーにデバイスをつける。今回は大神が家まで車で送ってくれる事になっている。大樹と深也は虎城が送る。道人と愛歌、潤奈は大神と共に駐車場へと向かった。

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