表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
100/288

71章Side:潤奈final 無礼なBLAVE

 ディレクトリグラシスが再現したトップランカーのデュラハン三体が襲い掛かる。その内の一体が大剣を持った両手を上に上げた後、地面に叩きつける。

 サイバーフォンフェルたちは散り散りになって跳んで避ける。B(バスター)C(キャノン)ルートタスはキャタピラで下がって避ける。続けて二体目が空中で身動きが取れないサイバーフォンフェルたちにダブルマシンガンを撃ち、弾をばら撒いた。

 何とか銃撃を防御するサイバーフォンフェルたち。


「くっ、大剣は囮だったって訳…!しかも…!」


 グルーナがラピッドキャロルナたちの着地場所を確認すると既に三体目が控えていた。周囲に多くの空中機雷を浮遊させている。


「次の攻撃に繋がってるって訳…!?」


 B(バスター)C(キャノン)ルートタスは助けに入ろうにも高火力が仇となり、機雷を破壊すると味方をフレンドリーファイアしてしまうので手が出せない。

 ダブルマシンガン持ちデュラハンがラピッドキャロルナが着地する付近にある機雷を先に撃ち抜いて爆発させてダメージを与える。


「ひゅ〜っ…!やるじゃん、やるじゃん!よし、あちしも真似よ!」


 ディレクトリグラシスも真似してサイバーフォンフェルの落下地点の機雷を狙おうとする。


「させん!」


 サイバーフォンフェルは頭部から無数のレーザーを発射し、先に爆発させた。何とか地面に着地した後、身体が消えかける。


「くっ、ここで時間切れとは…!ならば…!」


 サイバーフォンフェルは残りの機雷を素早く日本刀で斬り、仲間たちを安全に着地させた。


「後は頼みます、皆!」


 サイバーフォンフェルは筐体内から消え、現実世界にいるフォンフェルは元の姿に戻って意識も戻った。


「申し訳ない、主…。」

「…ううん、元々フォンフェルの役割はデストロイ・デュラハンをこちらに誘導する事だったんだから、よくやってくれたよ。」

「そうじゃ!後は俺らに任せるんじゃ!」


 潤奈は自信に満ちた表情を、大樹は右手でサムズアップをしてフォンフェルを(ねぎら)った。


「あ〜ん!あちしの運命の忍者様、帰っちゃったの?寂しい…。じゃあ、もういいや!さっさとやっつけちゃえ、トップランカーたち!」


 トップランカーデュラハン三体は武器を構える。


「くっ、どう攻略すればいいんじゃ…!?」

「みんな、落ち着くんだ!」


 司令が焦る大樹たちに冷静さを取り戻すように声を掛けた。


「この筐体にあるレコードデータは全国データではない!確かに猛者ではあるが、あくまで社内での強さのデータだ!恐れる事はない!」

「そうか、全国データだったら深也のオルカダイバーが再現されるはずじゃもんな!」


 潤奈はあまりデュエル・デュラハンに詳しくないが、深也が全国大会準優勝者なのは知っている。司令もこのパークの管理者なのだから、言っている事に間違いはないはずだ。


「強がりを言っちゃって!それでも強者には変わりないんだから!」

「…いや、それはどうかな?立場上、普段遊ぶ暇がなく、筐体で遊びたくても遊べない強者がここにいるとしたら…?」

「な、何ですって…?」

 

 ディレクトリグラシスとトップランカーデュラハン三体は警戒して司令たちのデュエル・デュラハンを見る。


「…ちょうど良かった。私はこの筐体を遊びたくて、遊びたくて仕方がなかった…!それが今日、まさかこんな形で叶うとはな…。今、この瞬間を私は感謝しよう…!」


 司令はネクタイを緩め、上着を脱ぎ捨てた。


「あ、あの真面目な司令が制服を着崩すなんて…!?初めて見たぞい…!」

「そうなの?」

「…う、うん!」


 潤奈はグルーナの質問に一生懸命何度も頷く。確かにいつもの大人の静けさを感じさせる司令とは何かが違う。


「限りある休日の中で、息子や妻と鍛え上げた我がデュエル・デュラハン『グリムス』の実力、その身で味わうがいい…!」

「な、何なの?この哀愁(あいしゅう)は…?」


 ディレクトリグラシスは司令とグリムスに恐怖を感じて後ずさる。グリムスの紫のボディが怪しく光る。


「行くぞ、名だたる我が社のトップランカーたちよ!ヘッドチェンジだ!」


 司令はスマホを操作し、グリムスにブレイブレードヘッドを装着する。王冠がついた頭に、黄金に輝く剣を右手に持ち、白いマントがつく。


「行くぞ、グリムス!我が眼前の敵を討つのだ!」


 B(ブレイ)B(ブレード)グリムスはディレクトリグラシスのいる場所まで高速で駆ける。


「な、何やってんの!ランカーたち!やっておしまい!」


 ランカーデュラハンはダブルマシンガンを撃ち、機雷を前に飛ばす。B(ブレイ)B(ブレード)グリムスは軽やかな動きで回避しながら前進をやめない。大剣持ちのデュラハンに接敵し、互いに剣を交えた。


「遠距離攻撃が有利なこの対戦ゲームの中で、大剣でトップ3となったこのデュラハンを私は強者と見た!私とグリムスが相手だ!」


 B(ブレイ)B(ブレード)グリムスと大剣デュラハンの激しい剣のぶつかり合いが続く。大剣デュラハンが押され気味になる。 


「嘘っ!?口だけじゃないって事!?な、何やってんの!?ボサっとしないで援護しなさい、援護!」


 ダブルマシンガンと機雷のデュラハンが行動しようとすると王子の格好をしたデュラハン『エリンツ』がレイピアを刺しに来た。


「…司令の邪魔はさせない!虎城さんから託されたエリンツの力、見せてあげる!」

「借り物で意気がらないでよ!」

「いや、あんたがそれ言う!?」


 グルーナの突っ込みが入った後、ディレクトリグラシスは羽にウィルスを纏わせようとする。が、ラピッドキャロルナがスケッチブックに描いた狐二匹を実体化させ、羽にしがみつかせた。


「なっ!?こいつら、この…!どけって…!」


 ディレクトリグラシスは羽を動かそうとするが、動かせずに地面に膝をつく。


「…やっぱり、トップランカーデュラハンを三体も実体化させたのは負担が大きかったね…。あなたは自分の能力に見合わない事をしたから、身体に負担が掛かったんだ…。動きが鈍くなってるよ。」

「くっ、あちしはそんなやわじゃない…!立ち上がってあんたの言う事を否定してやるぅーっ…!」


 ディレクトリグラシスは何とか立ち上がるが、エリンツのレイピアによる高速突きをまともに喰らって吹っ飛んでしまう。羽にしがみついていた狐二匹は即座に離れた。


「ぐあっ…!?」


 ディレクトリグラシスは岩に激突し、背中を強打する。グリムスと大剣デュラハンの闘いが目に入る。先程と変化はなく、大剣デュラハンが押されていた。


「馬鹿なっ!?こいつら、本当にトップランカーと互角に…!?」

「いや、違うな。」


 司令がディレクトリグラシスの見解を即座に否定した。


「確かにこのデュラハンたちはトップランカーの実力で間違いない…。」

「それなら、何故っ!?」

「だが、このデュラハンたちは彼ら単独でトップになれた訳じゃない。パートナーの存在だ。パートナーの指示や息の合った連携があったからこそ、彼らはトップになれたのだ。」

「そんな、パートナーと協力…?」


 ディレクトリグラシスは司令の言葉を否定したかったが、下を向いた。


「だが、最初に三体での大剣、マシンガン、機雷による連携攻撃は見事だった。あの時は三機による連携ができていたな。だが、その後だ。分散して一人で戦うと途端に弱体化してしまった。このようにな!」


 B(ブレイ)B(ブレード)グリムスは剣で大剣デュラハンの大剣を弾いて飛ばした。そのまま地面に刺さる。


「この三体はこの筐体の記録で再現されたデュラハンだ。だから、記録された事以上の事ができない…。」


 剣を失った大剣デュラハンはどうすればいいかわからずにおろおろしていた。


「君が今はこの三体の統率を取るべきなのだが、それができていない。これでは宝の持ち腐れだ。」

「この無礼者めっ!言わせておけばぁ〜っ…!」


 ディレクトリグラシスは司令の発言を何としても否定したいが一心で立ち上がった。


「パートナーの有無ですって…?ふざけないで!あちしは自立行動型デストロイ・デュラハンとして生まれた以上、それを認める訳にはいかないのよ!あちしにも矜持(きょうじ)があるわ!あんたの意見を叩き潰してあげる!」

「待て、私は…。」

「問答無用!」


 ディレクトリグラシスは高く飛翔し、羽を大きく広げる。


「否定してやる…!あちしはどうせ短命の身!貴様らもろともここら一帯をバグまみれにしてあげるわ!」


 ディレクトリグラシスは羽にウィルスを集め始める。


「させんぞぉっ!行けぇっ、キャノンルートタス!」


 ルートタスはバスターキャノンが時間切れになったため、キャノンヘッドの姿となっていた。右手にマシンガン、右肩にキャノン、両足がキャタピラになる。


「ウィルスを集める前に撃ち落としてやるわい!」

「くっ!?あちしを守れ、お前たち!」


 キャノンルートタスの砲撃を避けながら何とかウィルスを集めようとするディレクトリグラシス。機雷のデュラハンとダブルマシンガンのデュラハンはエリンツとキャロルナに足止めされ、援護には行けなかった。


「行くわよ、潤奈!」

「…はい、グルーナさん!」


 ラピッドキャロルナはスケッチブックに馬を描き、実体化させる。エリンツは馬に跨り、機雷とダブルマシンガンデュラハンの元へ駆ける。機雷のデュラハンは前方に空中機雷をばら撒いた。


「主、あの機雷は爆発するまでに時間が掛かります!迷わず突っ込んで下さい!」

「…わかった!」


 エリンツは機雷を足場にして馬と共に駆ける。ダブルマシンガンデュラハンがマシンガンを撃ち、周囲の機雷を次々と爆発させる。爆発の中を馬で駆け抜けるエリンツ。


「…行くよ、ヘッドチェンジ!ビームピッケル!」


 エリンツにガードヘルメットのような頭が装着され、両肩に巨大なフックがつき、左手にビームピッケルを新たに持つ。ダブルマシンガンと機雷デュラハンの周りを何度も回りながら、巨大なビーム刃を生成したピッケルで二体のデュラハンを何度も削り、斬り刻む。どんどんスピードが上がり、二体を宙に浮かせる。


「…これで、終わり!」


 ビームピッケルエリンツは馬と共に二体のデュラハンの下に潜り込み、下から何度も右手に持ったレイピアで高速突きを繰り出し、二体をデリートした。


「よし、私たちもとどめと行こう!グリムス!」


 大剣デュラハンは剣を失っても何とかB(ブレイ)B(ブレード)グリムスの剣撃を何とか防いでいた。B(ブレイ)B(ブレード)グリムスは黄金剣を一旦宙に投げると大剣デュラハンは投げられた剣の方を目で追ってしまった。

 B(ブレイ)B(ブレード)グリムスは小太刀を二本両手に出現させ、逆手に持って大剣デュラハンを刺す。よろけた大剣デュラハンを蹴り上げて宙に浮かせた後、キャッチした黄金剣を二つに割って双剣に変形させ、大剣デュラハンを叩き斬ってデリートした。


「くっ…!?おのれぇっ…!」


 ディレクトリグラシスは三体のトップランカーデュラハンを消滅させられ、油断した所をキャノンルートタスのキャノンを直撃してしまい、地面に落下した。


「がっ…!?まだよ、まだまだぁ…っ!」

「もうやめろ!勝負はついた!」

「うるさい!あちしと一緒に消え去れぇっ!」


 ディレクトリグラシスはウィルスを纏った羽を地面に当てる。どんどん地面がバグり出し、ディレクトリグラシスは沈んでいく。


「…ははっ…!あれ、おかしいな…?あちし、変になっちゃったのかな…?今更になって、死ぬのが怖くなってきた…。嫌だよぉっ、今日生まれたばかりなのに…。自立行動型の良さも発揮できずにここで果てるなんて…。」


 潤奈たちはディレクトリグラシスの悲惨な姿を見て顔を歪める。


「…あのさ…もし、生まれ変わ…。」


 言い終わる前にディレクトリグラシスは沈んでいった。デュエル・デュラハンたちは強制ログアウトし、無事だった。


「…何じゃ、この後味の悪さは…?デストロイ・デュラハンが意思を持ったら、こんなに胸糞悪いんか…?」

「えぇ、私のルレンデスはディサイドしたから死ななかったけど、同じ結果になっていたのかもしれないと考えると…。何だか嫌ね、こういうの…。」


 グルーナは腕を組んで下を向いた。


「こちらの罪悪感を(あお)るのが奴らの目的なのかもしれないな…。」


 大樹たちは勝ったのに沈んだ表情をし、機能停止したデュエル・デュラハンの筐体を寂しそうに見た。


「…マーシャル、これはあなたが望んでやっているの…?」


 潤奈は嬉しそうにお好み焼きを食べる妹の姿を思い出す。


「…ううん、私にはわかる…!あの子の本当の姿がわかるから…!だから、私は止めるよ…!絶対止めてみせるからね、マーシャル…!」


 潤奈は新たな決意を胸に秘め、みんなと共に司令室に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ