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セイント  作者: 未来路
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奇跡の光

 アーセタは青年を連れて自宅へ戻った。

 ただでさえ古い町の、その中でも一、二を争う古い家であり、床は踏み締めるだけで軋みを上げるほどだ。床板が割れているところや、壁や柱には棘が出ているところもある。アーセタは家に着いてから、こんな綺麗な青年を連れてきたことが恥ずかしくなった。

「姉ちゃん、お医者さんは?」

 母親の寝室に行くと、アーセタの言いつけを守っていたスダヌーが、言いつけを守って母親の手を握り締めたままで振り返り、不安そうな表情で問い掛けてきた。

 母親は発作が止まらず、苦しそうにしながらソファーからベッドに移って横になっている。

「ごめん。お医者さんには断られちゃった」

 ちゃんと言われたことをやっていた弟に対して、姉なのに薬も医者も用意できなかったことで、合わせる顔がなかった。

「そんなぁ……。かぁちゃんはどうするんだよ? おれ、言われたことちゃんとやったよ?

 なのに、どうしてお医者さん連れてきてくれなかったの?」

 スダヌーは瞳に涙を溜めて必死で訴えてくる。

「ごめんねぇ。お姉ちゃん頼りなくて。だけど大丈夫。この人が助けてくれるって」

「え?」

 アーセタが言うと、スダヌーは顔を上げて青年を見つめた。青年は優しく微笑み返した。

「任せて。君のお母さんは僕が助けるよ。そこで見ていて」

 青年がスダヌーの髪を撫でながら澄んだ声で言うと、母親の手を握り締めた。

 青年の体から淡い金色の光が溢れ出し、流れるように母親の体に移っていく。

 そして、母親の体を満遍なく満たすと、一際強い光を放って蛍火になって飛び散った。

「けほっ」

 青年が小さく咳をした。アーセタは心配になって青年を見つめたが、青年は立ち上がるとベッドから離れて、二人に微笑みかけると小さく頷いた。

 母親の発作はいつの間にか治まっていて、瞼をぴくっと小さく震わせると、ゆっくりと瞳を開いて二人を見つめてくる。

「アーセタ、スダヌー」

 母親がベッドに横になったままで二人を見上げて名前を呼んだ。

 薬を飲まずに発作が治まったのは始めてのことで、二人は嬉しくなって母親に抱きつく。

「おかあさん!」

 母親は優しく抱き返してくれ、三人は抱き合いながら喜びを分かち合っていた。

 その時、扉が閉まった音がした。

アーセタが母親から離れて部屋を見回すと、そこに青年の姿はなかった。

 喜ぶ三人に気を使って黙って行ってしまったのだろう。このまま行かせてはだめだ。まだお礼も言っていない。青年に会うためにアーセタは慌てて家を飛び出した。

みなさんこんにちは

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