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セイント  作者: 未来路
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彼と……

 町を追い立てられた時に、一晩だけ二人で過ごしたアーセタの祖父の丸太小屋。

 アーセタはケーニワベレの行くべき場所とは、絶対にここだと思っていた。彼なら最後にここにきてくれると根拠のない自信があった。

 しかし、アーセタの思いを断ち切るように、丸太小屋を隅々まで探したが、彼がここを訪れた痕跡は見つけられなかった。

「自惚れだったのかな?」

 丸太小屋の入り口に腰掛けて深く溜め息を吐いた。所詮自分などその程度の存在だ。

 前髪を掻き上げて立ち上がると、ゆっくりと立ち上がった。

 久々に気持ちを落ち着かせるために丘へ向かった。嫌なことがある度に来ていたあの丘だ。

 あの日、ケーニワベレと並んで立ち、いいところだと気に入ってもらった場所。

 丘へ向かって行き、アーセタは瞳を見開いた。そこにケーニワベレが立っていたのだ。

「ケーニワベレ!」

 アーセタが名を叫んで駆け寄ると、ケーニワベレが振り返って微笑んだ。

 だがアーセタが近付くに連れて、ケーニワベレの姿はどんどん透けていき、最後は透明になって消えてしまった。

 そして、そこには、一本の樹木が立っていた。

その枝にはあの日、町で買ったお揃いのネックレスが樹皮から生えているように、挟まっていた。

「ケーニワベレ?」

 アーセタは樹木に近付いてそっと触れた。

 樹木が微かに金の光を放って周りを浄化している。

『僕が守るよ。例え抱き締めることも話すことも見つめることさえ出来なくても』

 別れ際に言ったケーニワベレの言葉が脳裏に蘇った。

アーセタは胸の奥から熱い衝動が込み上げてきて、瞳から留まることのない涙を溢れさせて樹木に抱きついた。

「約束……守ってくれたんだね……」

 アーセタは樹木を力一杯で抱き締めると、嗚咽混じりに言葉を洩らした。

 優しい光がアーセタを包み込んで、ケーニワベレに頭を撫でられているような気がした。

みなさんこんにちは

更新しました。よろしくお願いします。


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