青年を追って
ケーニワベレが町を去ってから何日が経ったのだろう。アーセタはホテルのような部屋にいた。何度もケーニワベレを追おうとしたため、外から鍵を掛けられてしまい、軟禁状態だ。
扉がノックされて、鍵が開けられると、様子を伺うようにしながら三人の男性が入ってくる。
食事を届けに来たのだ。最初は女性が一人だったが、押し退けて外に出ようとしたら、男性に変えられてしまった。食事は定期的に日に数度運ばれてくるが、食欲がまったくない。
「また食べてねぇのかい? 体を壊しちまうぞ?」
日に焼けた筋肉質の体格の良い男が、心配そうに声を掛けてくるが答える気にもなれない。
ベッドに体育座りしたままでなにを見るでもなく壁を見つめ、三人が部屋から出て行くのを待った。三人の内の一人が深く溜め息を吐いた。
「あれから三日だ。もう大丈夫だろうって事でなぁ、お穣ちゃんを開放することにしたよ。
この部屋から出るのも、ボロッタに行くのも、もう誰も止めねぇよ。好きにしな」
男の言葉にアーセタは顔を上げた。これでボロッタに帰れる。ケーニワベレに会える。
そう思ったら、いても立ってもいられなくなってアーセタは立ち上がった。
手荷物を掴むとベッドから降りて駆け出した。部屋から出て行こうとする三人の傍らを通り抜けて部屋から飛び出すと、ホテルを走り抜けてボロッタへ向かって駆け出す。
「おい、お穣ちゃん。帰るんだろ? 乗っけて行ってやるよ」
この三日間、部屋に閉じこもっていたため光がやたらと眩しくて、足が縺れる。
軽く眩暈を感じながらも懸命に走っていると、馬車に乗っていた町の人が声を掛けてきた。
「お願いします!」
アーセタは一声掛けると荷台に乗り込んだ。街の人は「任せとけ」と答え、馬車を走らせた。
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