教会の青年
高い山脈の麓にある小さな集落にある教会に、長い人の列が出来ていた。
普段は畑仕事を終えた農家のおじいさんやおばあさんの憩いの地になっている場所だが、今日は老若男女問わずに大勢が詰め寄せている。
どういう訳かいつもは家や病院で安静にしている、病人や怪我人までもが参列している。
(あれ? 今日は教会でなにかあったかな? 高名な神父様が来てるとか?)
買い物帰りの、赤い髪をポニーテールにした、グレーのワンショルダージャンバースカート姿の少女、アーセタ・リルイは不思議に思って教会の中を覗き込む。
それほど大きくない教会の最奥、祭壇の前に一人の青年が立っているのが見えた。
金色の髪を腰の辺りまで伸ばした、深緑のズボンに白いシャツを着た長身の青年だ。
体型から見て男性だと判断したが、男性にも女性にも見え、またそのどちらにも見えない。
まるで芸術品のようで、天から舞い降りて来た天使ではないかと疑ってしまうほどだった。
青年が金色に光る手で町の人に触れた。すると、光が町の人に移って強く光り輝いた。
そして光が引いたとき、光に包まれていた人が立ち上がり、飛び跳ねて喜ぶと、何度も青年に深く頭を下げてお礼を言っているようだ。
あれは確か、仕事中の転落事故で脊髄を負傷して立てなくなった大工のカビーだ。
自分では寝返りも打てなかったはずだが、それがなぜか自分の足でちゃんと立っている。
カビーはなんで急に治ったのだろうと不思議に思い、アーセタは教会を覗き込んでいた。
「おいっ! ちゃんと並べよ!」
「あっ、ごめんなさい」
野菜を運んで腰を痛めた八百屋のベルセビアに睨まれて、アーセタは入り口から離れた。
(邪魔にされちゃった。見てただけなんだけどなぁ)
それ以上見ていると、また違う人の叱られてしまうかもしれない。教会の中で起きていることには興味があったが、とりあえず家に帰ることにした。
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