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第6話 一緒にごはんを食べよう

(き、気を取り直して調理開始!)


 幸いにも台所は水回りや魔導具で火を調整できるコンロ、まな板や包丁、大きめの冷蔵庫もある。とりあえず冷蔵庫に入っていた肉の塊を取り出した。この世界の食獣種の肉質、脂肪色は最悪で《等外》レベルだ。


(この世界の生態系って幻獣種、魔獣種、聖獣種、最後に食用の食獣種に分けられているけれど、食材にできそうな肉が食獣種しかない……。魔獣種は八割方体内中の肉が毒だから解毒するだけで莫大な費用がかかるし、聖獣は尊き生物として、幻獣種は乗り物として狩猟禁止。まあ、食獣種も元の世界の肉と比べたら、硬いし、脂身も最低ランクだけど……)


 それを美味しくするのは『料理の腕』と『下拵(したごしら)え』と『調味料』だ。

 この世界と比べて元の世界の食事は天国の味に近しい。ぶっちゃけ食事文化のレベルは紀元前レベルで、古代エジプトの方が創意工夫をしていた気がする。


 固すぎるパン、肉や魚の味付けは塩とコショウオンリーで焼くだけ。野生か!

 野菜は基本生、あるいはスープ、ただし出汁(だし)って何それって感じで、つまり──超まずいのだ。

 菓子に関してはフルーツと、甘くてとても硬いパン。生クリームやチョコレートもない。ケーキもクッキーも存在しない世界。異世界転生者としては絶望したのを覚えている。


(まぁ、この世界での食事って魔力(マナ)を補充するだけで、食に関心があるのって本当に極一部の美食家ぐらいだもんな)


 ほとんどの人たちは石のような硬いパンや、深みのないスープ、塩で丸焼きにした肉──という原始的な食事で満足している。

 むろん私もギルもそんな生活は無理だ。


 等外のハズレ肉をひき肉機でミンチにして、オニオンとナツメグなど必要な植物を魔法で生成。炊飯器はないのでとりあえず鍋で前に生成しておいたお米を三合分炊く。スープも作りたいが時間が無いので魔導具の湯沸かし器でお茶の用意をする。


 台所の隅で私に邪魔にならないように見ていたギルは「もしかして──」とか「あの料理ね!」など小さな子供のように目を輝かせている。あまりにもお腹の音がうるさいので、同じく植物魔法で生成したもぎたてのリンゴを剥いて食べてもらっている。可愛いウサギさんの形で出したら喜んでくれた。今度は薔薇を作ってあげようかな。


「ん~、甘い。五臓六腑に染みるわ。幸せ~(これからは毎日エステルの料理が食べられるのね。ああ、幸せ。夢かしら)」

(リンゴ一つで大袈裟な。……これからはギルの食生活も私がちゃんと見なきゃ! 好きな人の胃袋をがっしり掴んで見せる!)


 オニオンを細切れにして軽く油で炒めた後、冷やしたのちひき肉と混ぜ香辛料としてナツメグの粉末を少し、塩、この世界では貴重なコショウも惜しみなく使う。軽く混ぜた後冷蔵庫で寝かせている間に、ご飯が炊きあがった。


 この魔導具コンロと鍋は時間短縮ができる優れもので、圧力鍋の機能も持っている。それゆえハンバーグを焼くのも少しの時間で、中まで火を通してくれる。時間短縮最高!

 ソースはトマトソース。醬油があればシソと大根おろしを使いたいが、ないのはしょうがない。

 通常なら下拵(したごしら)えを含めて一時間以上かかるものを二十分ぐらいで出来上がった。


「これって、ハンバーグよね! しかもこれ紛れもない白米じゃない!」

「そ。本当は色々持ってきたかったけれど転移魔法を使う際、鞄の数が合わないと怪しまれると思って持ってくることができたのはこれだけ」

「もしかして、鞄の中には味噌や醤油とかがあったの?」

「うん」

「嘘……でしょ、嘘だと言ってぇええええ!」

「大豆は植物魔法で作れるからいいけど、味噌と醤油は工程が複雑だから半年は難しいかも?」

「いやああああああああああああああああああああああああああ。五年前から楽しみにしていたのにぃいい」

「うん、まあ。そうなんだけど、私が生きているってバレたら面倒でしょう」

「そうね。うん。エステルの安全確保が第一だもの、仕方のない犠牲だと思うわ」


 「くっ」と涙を呑み込んでギルは料理を運ぶのを手伝ってくれた。

 テキパキしていてなんとも手際がいい。料理は壊滅的に駄目だけど、それ以外は普通っぽいので少し安心した。

 リビングは簡素なカーテンが申し訳程度にかけられているのが気になったが、調度品やテーブルなどはとてもお洒落だ。「あー、スクショしたいわ」と言いながら、さっそく実食することに。


「ん、肉汁がジューシーで美味しい。そう、これ、この深みのある味わい。Aランクの牛肉並みよ」

「この世界は魔力で肉体の栄養を補充しているから、『食』に関してこだわらなかったんだろうね」

「違うわ、エステル。美味しい物を食べたことがないから現状で満足しているだけ。食に対して関心が向けられていないだけで、美味しい食べ物を味わったら人生変わるわよ」

「そう……かな?」


 少なくとも攻略キャラ相手にクッキーや、他の食べ物を提供して仲良し作戦──は全部失敗している。私からというのを伏せてもあまり効果はなかった。だから私の中ではこの世界人たちは一部を除いて食に関心がない──という結論に達したのだが、ギルはその仮説を否定する。


「エステルの作るものはなんでも美味しいわ。それは私が五年間食べ続けてきたから保証する。家族や攻略キャラに対して効果がなかったのは──なにか、ううん、()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「介入……?」

「ほら、貴女悪役令嬢でしょう? シナリオ補正があったのか、あるいは貴女が攻略キャラと仲良くするのをよしとしない第三者が作為的に関わっていたとか」

「私が攻略キャラと仲良くして困るのは、ヒロインのソレーヌだよね?」

「んー、その子も確かに怪しいけれど、私的には従者のイアンというかあの腹黒フェリクス第二王子とか怪しいんじゃない?」

「え」


お読みいただきありがとうございました(*’∀’人)

最終話まで毎日更新していきます。お楽しみいただけると幸いです。

ハンバーグはデミグラスソースが好きです( *´艸`)

次は19時過ぎに更新予定です。


下記にある【☆☆☆☆☆】の評価・ブクマもありがとうございます。

感想・レビューも励みになります。ありがとうございます(ノ*>∀<)ノ♡

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