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サイコパス学園~道化師達の楽園へようこそ~  作者: 深淵の道化師
第一章 『にゅうがくへん』
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第三話 『きょうふのじゅぎょう』


 羅無多から手厚い洗礼を受けた後、俺は次の数学の授業を受けていた。

 数学担当はあの雛森先生だ。先生は黒板に数式を書き並べながら、俺達生徒に向けて熱弁をふるっている。着ぐるみの割には、意外に器用だと雀の涙程度感心した。


「だからぁ~aにぃ~cのぉ~値をぉ~入れればぁ~必然的にぃ~――」


 ……だめだ。先生の話が全然頭に入ってこない。授業についていけない。


 まさかこの学園に来て、得意分野だった数学がこんなに難しくなるとは思わなかった。この学校は、俺が考えるより遥かにレベルの高い学校だったようだ。

 父さんごめんよ。俺勘違いしていた。何もかも父さんが正しかったよ。


「と言う訳でぇ~この問題をぉ~影山(かげやま)くぅん、解いてぇ~」


 うぉっと絨毯爆撃(じゅうたんばくげき)だ! この先生、のんびりしているようでいて、いざと言う時には当ててくるのか!


「はい。答えは先生の頭の中にあります」


 影山と呼ばれた金髪の男は、特に気にした様子もなく、しれっととんでもない発言を繰り出した。


 おいおい。なんだその英語を日本語に無理矢理訳したような回答は。


「あらあらあらぁ~――」


 ほらみたことか。先生も頬に左手を当てて唖然としてるじゃないか。


「正解ぃ~。良くぅ~予習ぅ~してますねぇ~」


 え? マジで? 今の正解になるの? と言うか、予習でわかることなのそれ?


「じゃぁ~次はぁ~この問題をぉ~久山くぅん、解いてぇ~」


 え? 転校初日なのに俺に当てるの?

 しかも、周りからはめちゃくちゃ期待の眼差しを向けられてるんですけど。

 そんな物珍しそうな目で俺を見ないで。いや、マジで。めっちゃ困っちゃいますん。


「えっと……正解は先生の頭の中にあると思います」


「ん~? 正解はぁ~私のぉ~頭の中にはぁ~ありませんよぉ~?」


 俺の回答に対して、思いっきり不思議そうな顔をしながら、首を傾げる雛森先生。


 そんな馬鹿な! さっき影山とやらが言った回答と、全く同じ回答をそのまま言っただけだぞ! お前らさては『できてる』だろ!

 それともあれか! 影山の奴がイケメンだからか! やっぱり顔が大事なんだな! こんちくしょう!


「悪いけどぉ~そのままぁ~立っててねぇ~。次はぁ~羅無多ちゃぁん、答えてぇ~」


「はい。ルート三分の一だと思います」


「正解ぃ~。さすがぁ~羅無多ちゃぁんねぇ~。久山くぅんもぉ~座ってぇ~」


 こっちは普通に回答しないと駄目なのかい!

 あーもう! 穴があったら入りたいわ!


「すまないな羅無多。わざわざ俺の代わりに答えてもらって」


 俺は着席する時に、斜め前の席にいる羅無多に耳打ちする。

 すると羅無多はちらりと俺を一瞥し、いつもの意味ありげな笑みを浮かべた。


「ん~別に気にしなくて良いですよ。その代わり……先程も言いましたが、後で私に付き合ってください……ね?」


 んんん? また前と同じような、いじわるな顔つきになってますよ羅無多さん。今回は何を企んでいるんですか?


「フフフ。そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。少なくとも私は、久山さんを取って食ったりはしません」


 幼げながらも、どこか妖艶な雰囲気を醸し出しながら、ニヤニヤと危ない笑顔を見せる道化師さん。


 ――なぁ。本当にあんた十二歳なんだよな? こんな十二歳いたら、普通にご両親ビビるだろ。

 俺が十二歳の頃なんか、テレビで話題の特撮ヒーローごっこして友達と遊んでいたもんだ。懐かしい、懐かしい。

 そう言えば、あいつらどうしてるんだろうな。久しぶりに会いたいな。なんつって。


「ちなみに両親は、私がこの学校に飛び級したことをひどく喜んでくれましたよ。我が家の誇りだなんだと言ってましたかね」


 何故か心読まれてるし! 俺は何もしゃべってないはずなのに、なんで貴方は分かるのですか?


「いえいえ。久山さんの顔にしっかり書いてありますよ。本当に――久山さんは見ていて飽きませんね」


 それすらも読まれてるし! この子本当に怖いよ! 誰かわしを助けてくんろ。


「ちょっとぉ~羅無多ちゃぁんとぉ~久山くぅん。私語はぁ~謹んでねぇ~。次はぁ~容赦ぁ~しないからぁ~ねぇ~」


 雛森先生が授業を妨害した俺達に対して、にこにこと笑いながら注意してくる。

 強く怒られない分、逆に凄味が出ている。彼女の背後に、金棒を持った鬼が立っているように思えるのは、俺の錯覚だと信じたい。いや。怖すぎだろ。ほんと。


「失礼しました。以後気を付けます」


 注意されたピエロさんと言えば、先生の小言を聞いてもどこ吹く風。相変わらずの愛想笑いを顔に張り付けながら、わざとらしく一礼をお見舞いする。どうやら先生の扱い方に慣れているようだ。


 羅無多さんや。お父さんとしては、本当に君の将来心配だよ。将来悪い大人になりそうで。いろんな人を手玉に取りそうだよ。まったくね。


「じゃあ後でお願いしますね。ひ・さ・や・ま・さ・ん」


 そんなことを呟きながら、こちらを振り返って、またしても片目をつぶって誘惑してきた。



 ――本当にこの子、今すぐにどうにかしてくれ。俺の理性がこれ以上持ちそうにない。

ご意見、ご感想、評価等々何卒宜しくお願い申し上げます。

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