魔王・チートン
俺はチコから送られてきた資料を見ながら思う。
この引退魔王・・・メチャクチャ典型的なチート魔王だなあ、と。
仮の名前を魔王チートンとしておこう。チートとはいえ人権がある。仮名にしておくのは優しさというものだろう。
このチートンが過去の世界で勇者(数百人ほどいたらしい)にボコボコにされて、なんとか逃げ出したもののこのままこの世界にいたら危ないってわけで200年後の未来に本来の力を維持したまま転生したという事らしい。
らしい、というのはこれはチート監視官側の調べでかなり正確なはずなんだが、本人が言っている理由と少し違うのだ。
チートン本人が200年後の未来の世界で再会した元部下(魔族はとても長生き)に話したところによると、
「いつものように勇者どもを軽くあしらって蹴散らしていたのだが、たまたま空いた時空のゆがみに吸い込まれてしまってな。気付いたらこの世界に子供として転生してしまったのだ」
という事になっている。チート監視官の調査の信頼性は99.99%なのだが、のこりの0.01%のなのだろうか。チートンが見栄を張って嘘をついてなければ。
ちなみにこの未来の世界では魔王が突如として消えた事で、初めのうちは魔族たちは人間に追い詰められてが200年たった今ではなんとか折り合いをつけて人間たちとうまくやっている。
ただ、それは魔族が人間を支配しているのが当たり前の200年前から来た魔王チートンからしたら人間たちに魔族が支配階級から蹴落とされたように見えた。
魔族が支配していたはずの人間たちと対等にしていることが、逆に人間に魔族が虐げられているように感じたのだ。
「俺がいない間に魔族の者たちには迷惑をかけたようだな。すまなかった」
と元部下に頭を下げたチートンに「いえ、意外と人間もいい奴らが多いですよ」と元部下は魔族は現状に満足していることを素直に伝えたのだが何を勘違いしたのかチートンは「元四天王のおまえでさえ誇りを失うとは・・・人間め、少々調子に乗っているようだな」と逆恨みをする始末。
元部下はなんとか魔王を止めようと頑張ったらしいがチートンは「心配するな!俺が戻ったからには今の魔族の現状を変えて見せる!もう、人間どもに頭を下げる必要はないぞ!やつらには目にモノ見せてくれよう!」と完全に変なスイッチが入ったらしい。
このままでは魔王がチート化してしまう・・・思い余った元部下からの通報でチート監視官の知る事になったのだ。
・・・チートン、こいつ実は魔族からも嫌われてたんじゃないのか。
まあいい。とりあえずチートンが今いるという勇者学園とやらに行ってみよう。
どうせロクな事になってないだろうがな。