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若者  作者: 七峰 幸太郎
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~わかもの~

2017年10月。

彼は悩んでいた。自身の『人生』をこれからどう形成していくべきかを。

彼は現在25歳。この年齢ならば、一般的には『人生』についてそう思い悩むことはないはずだ。

ただ彼自身はそうではなかった。彼自身の性格が、大学を卒業してからのこの2年の社会人生活がそうさせていた。


彼は東北のとある田舎町に生まれた。実家は農家、それも米農家だった。

『お米には八十八の手間暇がかかる』と言われるのは本当で、彼も幼少期から労働力として農作業に駆り出されていた。ただ彼はそれを面白いと思っていなかった。

土を育苗箱に入れ、種籾を蒔く。その上から薬液入りの水を撒く。これらの工程は全てベルトコンベア式の播種機で効率化されていたが、一連の作業には要所で人が介入しなければならず、それは大変な作業だった。

その後種まきした育苗箱をビニールハウスへひとつ一つ人力で移動させ、育苗させる。ある程度成長させた稲を田植え機に積み、いよいよ水田へと植えていくのだ。大人になれば、一から米作りを行う楽しさ面白さを感じるのだろうが、子供には何も面白くはない。彼にとって一連の大変な労働は嫌だったのだろう。


ただ、自然は好きだった。薄桃色のサクラ花弁が、まだ肌寒さの残る山風によって宙を舞う春。容赦なく照り付ける日差しとミドリが色濃く映える夏。カラ紅色に山々が装いを変え、黄金に実った自然の恵みを大いに頂く秋。純白の静けさの中、肌を刺す寒さを感じる冬。はっきりと四季の移り変わりが実感できる。

子供の目にはその一つひとつ風景が水彩パレットの色どりに感じていたのだろう。


特に惹かれたのは、星空だった。日中は四季折々の色変化を楽しむことが出来たが、夜は等しく暗い闇だった。田舎町の夜は特に、一人で窓の外を眺めていようものならば、その夜に引き込まれてしまう感覚に陥る。だからなのだろうか、月や星の輝きはどこよりも力強く感じるのだった。


そんな彼が『研究者』にあこがれを抱くまで、そう時間はかからなかった。

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