呼び出し
カーテンの隙間から差し込む光で僕は目が覚めた。
寝ぼけた頭をどうにか覚醒させ昨日のことを振り返ってみる。
「思い出したことは、名前とアレだけか」
アレというのは龍に故郷である村を破壊されている光景だ。
だが、肝心の村の名前が分からない。村の名前が分かれば親が見つかるかもしれないのに。
「それは考えても仕方ないか」
そう呟いて僕は寝巻きから部屋着へ着替えるとリビングへ向かった。
そこにはもうリーゼさんがいた。
リーゼさんは僕に気づくと少し心配そうに話しかけてきた。
「大丈夫?急に倒れたものだから心配したわ」
曰く、魔物を倒した後僕は糸が切れたように気を失った様だ。
寝巻きになっていたのはリーゼさんが着せてくれたらしい。別に嫌という訳では無いが、恥ずかしい。
「それで、昨日のことについては教えてくれるの?」
「はい、それはもちろんです。ただ…」
「ただ?」
「僕も教えられるのはほんの少しです」
そして僕はリーゼさんに記憶がほんの少し戻ったことを説明した。もちろんあの光景や魔術のことも。
「つまりあの魔術は何となく思い出したから使った、ということかしら」
「はい」
「はぁ、まったくとんでもない魔術を持ってるものね。しかもあの感じだとあれと同じようなのがまだありそうね」
そう言うとリーゼさんは手を頭にあて再びため息をついた。
「それであの光景についてなんですが」
「分かってるわ、色々と調べてみる」
「ありがとうございます」
そこで玄関のドアがノックされる音が響いた。
僕とリーゼさんは2人してしかめっ面で玄関の方を見た。
それに気づいた僕とリーゼさんは微笑んだ。
「出てきてくれるかしら」
「はい」
玄関の方へ向かってドアを開けると、昨日の兵士と同じ格好をした人がそこにいた。
「こんにちは、なにかご用で?」
兵士は軽くお辞儀をするとこういった。
「リーゼ様はおられるでしょうか」
「リーゼさんなら「なにかしら」来ましたね」
結局来るなら僕に頼まなくてもいいではないかとは思うけど口には出さないでおく。
「それでなんのご用?」
「国王陛下よりリーゼ様ならびに…その「アレンです」アレン様の召喚命令が出ていますので、そのお迎えにまいりました」
ある程度予想できていたからなのかそんなに驚きはしなかった。
それはリーゼさんも同じようだ。
「わかりました。準備が出来次第向かうとします」
そう言ってリーゼさんは自らの部屋へと向かった。
対する僕はと言うと、準備と言っても何もないのでその場に残った。
少しするとリーゼさんが戻ってきた。
「では行きましょう。外に馬車を待たせてあります」
そして兵士の先導で馬車へ乗り込むと僕達は王城へ向かった。
しばらく経つと大きな壁が見えた。
「リーゼさん、あれはなんですか?」
僕が尋ねるとリーゼさんは答えてくれた。
「あれは外壁ね。街に魔物が侵入するのを防いでいるの」
「ですが僕達の家にはそのようなものはありませんでしたよね?」
僕とリーゼさんが住んでる家は小さな丘の上に建っていて周りには野原以外なかったはずだ。
「あそこは特別魔物が寄り付かない場所だもの」
「そうだったんですか」
壁のすぐ下につくと門があり、そこで兵士が何かしらの検査をしていた。
「はい、止まってください。身分の証明できるものはありますか?」
そう兵士が尋ねると、馬車の御者をしていた兵士の人は書状を取り出して見せた。
「これは失礼致しました」
そう言って兵士は僕達を通してくれた。
今まで見たことない景色に僕は目を奪われた。
「そう言えばアレンはここに来るのは初めてね」
「はい」
「なら帰りにでも散策しましょう」
そして、少し経つと立派な城に着いた。
「到着致しました。ここからの案内は必要でしょうか?」
「大丈夫よ」
「それでは失礼します」
リーゼさんはこの城に何回も来たことがあるようで案内無しでも迷わずに進んで行った。
僕はリーゼさんから離れないようにその後をついて行った。
しかし、まだ時間があるようで控え室の方へ向かってみるとメイドさんがいた。
「お久しぶりでごさいます、リーゼ様」
「久しぶりねサラ」
「まだお時間の方がありますのでここでごゆっくりしてください」
「それだけど、わたしは魔術騎士団の方へ行ってくるわ。その間この子を任せたわ」
「かしこまりました」
そんなやり取りの後リーゼさんは部屋を出ていった。
何もすることがない僕はメイドのサラさんが出してくれた紅茶とそのお茶請けを食べて適当に時間を潰してた。
少しすると、ドアがノックされた。
サラさんがこちらを見ていたので、通しても良いと伝えるとドアが開いた。
「あの、はじめまして」
そう言い出てきたのは綺麗なシルバーのロングヘアーの女の子だった。