プロローグ
これは失われてしまった物語。
今から1500年ほど前、滅龍によって世界は1度滅びかけた。全ての木々が焼かれ、家屋は倒壊し、命は奪われていった。数多くの人々が絶望した、だが2人の魔術師だけは諦めなかった。その2人の魔術師は自らの命を以てして滅龍を封印した。
時は流れ、現在魔歴1492年。世界は平和になった、魔物は絶滅してはいないし、被害が無いわけではないが昔に比べてしまえば無いに等しい。
ある屋敷の中、少女はそんな平和な世界へ導いた立役者である魔術師について勉強していた。
「じいや、この人は本当に滅龍なんてものを封印したの?」
少女は近くで待機していた初老の男性にたずねた。
「そう言われております」
「そう。なにか可哀想ね」
「何故そう思ったので?」
「この人は1人で命を捨ててまで封印したんでしよ?つまり1人ぼっちじゃない」
そう言うと少女は少し寂しそうな顔をした。
その少女に男性はこたえた。
「ですが、その英断によって世界は救われました。だからこそ、白の魔術師アリンは英雄なのです」
少女は未だ寂しそうな顔をしていた。
???side
どれくらい逃げてきたんだろう。もう方向が全くわからない、けど足を止めたらダメだ。じゃないと意味が無くなっちゃう。◻◼◻◼と◼◻◼◻が逃がしてくれた意味が。
「あれ?」
そこで僕は気がついた、何か大事なことを忘れてる。絶対に忘れちゃいけないことを。
周りを見渡してみると、森の中にいた。気づかないうちに相当深くまで潜ってしまったようでかなり暗い。
「ここはどこ?」
すると、近くで物音がした。気になって音のした方へ向かってみると、同じような鎧を来た人達がいた。
その人達も僕に気づいたみたいで、少しびっくりしている。そして何か話し合いを始めた。
「何故ここに子供がいるんだ」
「分からないが、とりあえず隊長に報告しよう」
話し合いが終わったのか鎧を来た人達のうちの1人が僕に話しかけてきた。
「君、ここは危ないところだからこっちに来て」
僕は少し怖かったけど1人でいる方が嫌だったから頷いて鎧の人の方へ行った。
そこへローブを着た女の人がやってきた。
「この子が報告にあった子?まだまだ子供じゃない、なんでこんな森の奥に」
女の人はどうやら鎧の人達が呼んできたみたいだ。
「君、家はどこ?家族は?」
そう聞かれて答えようとした時、僕は何も言えなかった。それを女の人は恐がっていると思ったのか
「安心して、私達はアリシア王国の魔術騎士団よ」
と言った。だが、そうじゃなかった。ただ何も覚えてなかった。大事な事があったはずなのに、楽しかったこと嬉しかったことがあったはずなのに、何もおぼえてなかった。
それに気づいた時、僕は泣いてしまった。
「わからない。何もわからないよ」
急に泣き出した僕に女の人はびっくりしたけど、優しく頭を撫でてくれた。そして、そのまま抱きしめてくれた。その温もりに安心して僕は寝てしまった。
「この子は私が育てるわ」