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ノノの実力

ちょっとえっちぃ系が入ってます

「なあノノ。お前の職業って何なんだ?」

暗殺者アサシン

「······マジか」

「マジだ」



 俺は《始まりの平原》を歩きながら、己の職業を言ったノノに少しばかりおののく。まさかそんな珍しい職業についているとは思わなかった。



 冒険者の職業はメジャーなものとマイナーなものに、自然と分かれている。前者なら剣士ソルジャー魔術師キャスター武闘家バトラー治療師ヒーラーなどが特に多い。安定の職業だし、役割がわかりやすいから人気なのだ。


 逆にマイナーなもので言うと、先程ノノが言ったような暗殺者アサシン防盾人タンク弓使アーチャーなどがそれに当たる。駆け出し冒険者は剣士ソルジャー魔術師キャスターに憧れる人が多いので、自ずとこれらの職業はマイナーと化してしまうのだ。



 そしてノノの暗殺者アサシンだが、これはかなり特殊な部類に入る。敵と顔を合わせて戦うのではなく、死角から攻撃する事が多い。集団戦では光る物があるが、身体能力の高い相手には相性が悪いことで有名である。


 彼女も模範のような暗殺者アサシンの格好をしている。武器は腰にぶら下げた、無数の鋭利な極細ナイフのみである。装備は盾や鎧の類は一切装備せず、普通着の上に何やら独特な雰囲気を放つローブを纏っていた。



「そのローブ絶対お前のじゃないよな?」

「拾ったからもう私の物」

「お前なあ······つくづく変なやつだな」



 他愛もない会話をして、未だ鉄仮面のノノに俺が苦笑する。そんな感じで二人で道沿いにしばらく歩いていると、何やら少し離れた場所で魔物達が集まっていた。


 それを見て俺がノノに視線を向けると、彼女はコクリと頷いた。そうして俺達は魔物に気づかれぬよう、静かに近寄った────。





 魔物達から少し離れた場所で、俺達は草むらに身を潜める。足音が立ってしまったが、奴等は俺達に気づいてはいなかったのを確認し、ほっと胸を撫で下ろす。



「まだ安心するのは早い。中々の地獄絵図だよ」

「地獄絵図······?」



 彼女がそんなことを言うので、なんだそれはと思って見ると、そこで繰り広げられていたのは本当に地獄絵図であった。


 具体的に言えば、数十匹のゴブリンが五人の女冒険者達を下卑た笑みを浮かべながら取り囲んでいた。彼女達は武器や防具は壊されたようで、挙句の果てには身ぐるみを剥がされたのか全員が全裸であった。


 彼女達の表情は恐怖と絶望に満ちており、これから自分達がどんな目に遭うのか想像出来てしまっていた。ある者は瞳から涙を零し、ある者は感情を失ったかのようにピクリとも動かない。



「うっ······」



 そんな状況を目の当たりにして、平静を保っていられるほど俺は強くない。思わずそんな声を漏らしてしまうが、幸い気づかれることはなかった。



「どうする?助ける?」

「······」



 ノノが耳元でそう呟くと、俺の中で葛藤が生まれる。



「そりゃ助けたいよ。でも······」

「今ここで行かなかったら、彼女達はどうなるの?」

「それは······けど······」

「彼女達を見逃したら、絶対後悔するよ?」

「············」



 黙りこくった俺を、真っ直ぐに見つめてくるノノ。その瞳にうかされ、俺はとうとう決心する。



「······あいつらを撃退する」

「そう言ってくれると思った。やっぱりシンはシン」



 そうして彼女がふふっと微笑む。彼女の感情らしい感情を目の当たりにして一瞬気が抜けるが、すぐに思考を転換させ、現状の打開策を考える。



「でもどうする·····流石に俺一人であの数は無理だぞ······」

「私が援護する。これでもナイフ投げには自信がある」

「そっか······今はお前の腕と俺の幸運を信じるしかないな」



 そこまで話して、俺達は会話をやめる。体を突撃のために身構え、標的をゴブリンの集団に定める。ノノは両手の指で三本のナイフを構え、姿を消した。



 後方支援してくれると言った彼女を信じ、俺は苦笑いを零した。そして今まさに女冒険者に襲いかかろうとしていた奴目がけて、俺は剣を携えて突進した。



「うおおおおっ!」



 そこにいた全ての者が振り向き、俺に無数の視線が向けられる。しかしそんなものは気にせず、俺は急接近したゴブリン目がけて剣を振り切った。



「ぜあああっ!」

「グギャァッ!?」



 腹を引き裂かれたゴブリンは胴体を真っ二つにして、大量の血を撒き散らしながらその場に倒れ込んだ。一瞬の出来事に気を取られているゴブリンを、突如現れたノノが次々とナイフを投擲して倒していく。



 突然の襲撃に阿鼻叫喚と化しているゴブリンの群れを見ながら、未だ理解が追いついていない女冒険者達に、俺は頷きを送る。



 その意味を理解した一人の女性が、目を閉じ両手を組んで俺に祈った。それで彼女達の意志を理解した俺は、ゴブリン達を倒すべく地を踏みしめ駆け出した。



 女性の全裸を見た事など意識の埒外に放り投げ、俺は初の集団戦闘に身を委ねた────。





 そしてそれから数十分後、俺達は着実にゴブリンの数を減らしていっていた。辺りには魔物の死体であった魔石が無数に落ちていて、その撃破数を物語っていた。



 そして目の前にいた、ゴブリンの棍棒による振り下ろしを躱して、カウンターで俺はその無防備な首に剣を突き刺した。



 完全にそのゴブリンが死んだのを確認すると、俺は一度辺りを見回す。残っているゴブリンは数匹のみで、奴等は現在ノノと戦闘を繰り広げていた。いや、それも戦闘と言えるものではなく、一方的な虐殺のようなものであった。



「あいつ本当にFランクかよ······」



 あまりにも常識外の実力を見せつけるノノに対してそう呟き、俺は血濡れの剣を鞘に収める。残党狩りは彼女に任せ、俺は腕にこびり付いた返り血を拭いながら、長らく放置していた女冒険者たちの元へ向かった。



「大丈夫ですか?」



 そうして俺が怖がらせないように、精一杯の笑みを浮かべながら尋ねると、一人の女性が俺にお礼を言った。



「あの······助けて下さり······本当にありがとうございます」

「ああ。そんな格好じゃあれだから、皆これを着てくれ」



 そう言って俺は収納袋から五人分のローブを取り出し、彼女達に手渡した。それを来てくれたのを見て、俺は安堵する。流石に全裸じゃ視線のやり場にも困るからな。


 ちなみにこのローブ、出発前にノノがを大量に要求してきたのだ。よく理由が分からないまま泣く泣く買わされた物だったのだが、とにかく役に立って良かったと思う。



 そこまで考えたのと同時に、ノノが最後の一匹を屠り、戦闘を終えていた。返り血を拭いながら、俺の元へ駆け寄ってくる。そしてそのままハイタッチを求めてきた。



「ほら、勝てたでしょ?」

「ああ······お前のお陰だよ。ありがとな」



 そう言いながら彼女とハイタッチを交わす。気持ちの良い音が鳴り、彼女がふふっと微笑む。かと思うと、すぐに鉄仮面に戻っていつも通りになった。切り替えが早くて反応に困るものだ。



「それより······あなた達はなんでこんな所に」

「それは······その······」



 ノノにじとーっと視線を向けられ、一人の女冒険者がしどろもどろになる。俺は慌ててフォローに入った。



「とにかく、一旦街に戻ろう。君達もそれでいいか?」

「わかりました······」

「ノノもいいな?」

「依頼はどうするの?オーク討伐」

「後回しだ。今は彼女達を優先しよう」

「ん。わかった」



 こうして全員の了承を得て、俺は《オーク討伐》の依頼を中断して街に戻った。男一人、女六人の集団は相当目立ったが、好奇の視線は無視して冒険者ギルドに寄った。


 それで経緯のあらまし、依頼の中断を報告すると、快く受け入れてくれた。とりあえず受付嬢の人に感謝と謝罪はきちんとしておいた。


 その後、ギルドのお風呂を貸してもらい、全員の汚れを洗い落とした。俺の奢りで皆の空腹を満たした後、そのテーブルで俺とノノ、女冒険者五人が対面する形で座った。









 そして、一人の女性が事の経緯を話し始めた────。

分量少し多めになってしまいましたが、

これくらいが良いよ!って方がいれば幸いです。

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