ダンジョンの現出
投稿少し遅れて申しわけありませんm(_ _)m
「突然ダンジョンが出現した?」
「ええ。このアラモ王国の近くにね」
「なんて名前のダンジョンなんですか?」
「骸の墓場よ」
「へー。なんか骸骨とかいそうですねー」
「······ああいうの嫌い」
双星絆のパーティーランクをEにしてもらった後、少し間を挟んでからその話題がミハイルさんから告げられた。
なんでも《魔獣の森林》の奥地に新しくダンジョンが存在していたらしい。局地的にダンジョンが出現する事は稀で、俺達の興味関心を引っ張るには十分なものであった。
「それで、肝心の攻略難易度は?」
「Bランク相当。マノンさんやスタリカさんレベルじゃないとキツいわね」
ミハイルさんがため息混じりにそう言うと、俺の横にいたノノがむすっとした表情になる。
「······私とシンが弱いっていうの」
「······ノノ。俺達はまたEランクに上がったばっかりだぞ」
「でもシンは絶対もっと強い。Eランクなんかじゃない」
「そう言ってくれるのは有難いけど、過大評価し過ぎだ」
「······でも」
俺達がそう言い合っていると、わざとらしくミハイルが咳払いをする。それに俺もノノも自重して、彼女の話に耳を傾けようと姿勢を戻した。
「ノノさん、とりあえず最後まで聞いてください」
「······わかった」
そうしてノノが小さく頷くのを確認し、また話し出す。
「ダンジョン攻略で遠征隊を組むのは知ってますよね?」
「もちろん」
「それで、遠征隊に招集する冒険者は勿論そのダンジョンの適正ランク以上の人達に限ることも知ってますね?」
「······うん」
「今すぐに遠征隊を編成するわけではないので、現在ランクが届いていなくても、参加できないことはありません」
彼女がそこまで話して一息つくと、今度はスタリカが頬杖をつきながら呟いた。マノンもそれに話を乗せる。
「確かにそうですね······ダンジョン攻略は莫大な利益を得られることで有名ですし、志願者は多いですものね」
「確かにー。ミハイルさん、魔物雪崩の心配は?」
「幸運な事に今はその心配はないです。長く見積った場合は、恐らく一ヶ月は持つかと」
「一ヶ月······か」
俺はそう呟きながら、頭で考える。冒険者にとってダンジョン攻略は一攫千金の大チャンスだ。簡単に見過ごせる話ではない。
しかし今の俺達では圧倒的に実力が足りない。魔物が溢れ出てくる魔物雪崩が始まれば、すぐさま攻略が開始されるだろう。
つまり、残り一ヶ月で冒険者ランクを三段階上げなければいけないのだ。言うなら簡単だが、実際にやるとなると困難を極める。
「なあノノ······どうする?」
「ん。決まってる。あと一ヶ月でランク上げる」
「······だよな!」
彼女も同じ面持ちだったようで俺は安心する。ノノと顔を合わせてクスリと笑い、俺は唐突に立ち上がった。
「ミハイルさん、マノン、スタリカ、一ヶ月待っててくれ。絶対Bランクまで上がってみせる」
「シン様〜。頑張ってくださいー」
「頑張ってね。シン」
「ノノちゃんも頑張って」
「······ちゃん付けしないで」
そうしてギルド長室が和やかな雰囲気になっている中、俺はノノを連れ、残りの三人にお礼を言ってギルド長室を後にした。そしていつもの様に掲示板から依頼を探し、《グリーヴァスベア》討伐というEランクミッションを受注し、出発した────。
その後俺達はいつものように《始まりの平原》を進み、《魔獣の森林》に入って、《グリーヴァスベア》を探しながら道行く魔物を倒していっていた。
「なあノノ······気づいたか?」
「なにが?」
「体が軽いんだよ。剣も素早く振れるし回避も容易だし」
「それはレベルアップの証拠。昨日の戦いでシンはレベルアップした。身体能力が上がってそういう風に感じてる」
「なるほどなー······そういうノノはどうなんだ?」
「······あんまり聞かないで」
「あ、ああ······悪かったな」
そういえば前にもこんなやり取りをした気がする。レベルに関しての話は彼女の前ではタブーなのかもしれない。今後は少し控えることにしようと思った。
「とにかく、もっと奥に行ってみるか」
「ん。《グリーヴァスベア》はもう少し先にいるはず」
「でも、本当キラーエイプだけには気をつけろよ」
「······うん」
そうして俺達は細心の注意を払いながら《魔獣の森林》を奥へと進んでいく。奥に行くに連れて、段々と魔物も強くなってきていて、歯ごたえのある敵が増えてくる。
しかし勝てないほどではなく、俺とノノの連携プレイで今まで特に危なげもなく全てほぼ無傷で凌げている。
今はしばしの休憩ということで、森の中にあった切り株の上に座って一息ついているところであった。
「いないね。グリーヴァスベア」
「そうだな······そろそろ出る場所だと思うけどな」
そう呟いて俺達は辺りを見回す。周囲全て木に囲まれていて、その気の間越しにまばらに魔物が見える。少なくとも視認できる距離に、討伐対象は存在していない。
「どうする?一旦戻る?」
「うーん······ん?」
俺はその瞬間、小さな振動を感じた。それに反応して注意を払っていると、もう一度、今度は大きく地が揺れた。
俺達は顔を見合わせ、武器を取って襲撃に備える。しかし一向に何かが襲いかかってくる気配もないので、細心の注意を払いながらもう一度辺りを見ました。
すると、少し離れた所に木々を掻き分けてずんずんと進んでいるグリーヴァスベアの姿があった。まだこちらに気づいている様子はなく、普通にゆっくりと歩いている。
「ノノ、俺が突っ込んで奴の気を引く。お前は死角から攻撃してくれ。あわよくば最初の攻撃で倒すくらいで」
「ん。任せて」
そう残して、彼女の姿が消える。俺はタゲ取りをするべく奴目がけて突進する。もちろんグリーヴァスベアの方も気づいて、殺気を近づく俺へ撒き散らしてくる。
そして彼我の距離が零になった瞬間、奴の鋭い右爪が振り下ろされる。俺はそれを身体を屈めて間一髪躱す。
奴の股下を切り裂きながらかいくぐり、すぐさま体勢を立て直す。グリーヴァスベアは突如の痛みに股を抑えながら膝をついていた。
「今だ!ノノ!」
俺がそう叫ぶのと同時に、ノノが突然現れ未だ悶絶している奴の脳天目がけて、無数のナイフを叩き込む。グリーヴァスベアの頭が串刺しになり、奴の動きが止まる。
その勢いそのままに奴は仰向けでドスンと倒れ、額からドクドクと血を溢れさせながら、その身を魔石に変えて消滅した。
終わってみれば呆気なかった戦いだが、二人とも無傷で勝てたのでまあ良かったと思う。無事が一番だしな。
そうして俺は、魔石を回収しながらこちらへ走ってくる彼女と視線を合わせ、互いに小さく頷き、ハイタッチをした。




