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登竜門の戦い

 Fランク依頼《レッドウルフ討伐》



 それが俺達の受注した討伐依頼だ。Eランク相当のレッドウルフを単独、またはパーティーで倒すことで、正式にFランクからEランクへ昇格することが出来る。要は登竜門と言うやつだ。


 もちろん俺達もそのつもりで依頼を受けた。ノノは明らかにFランクの器ではないし、新しいパーティーの双星絆ツヴァイも同時にEランクに昇格することが出来る。一石二鳥と言うやつだ。



 だからこそ、俺達は意気揚々と《初まりの平原》へと駆け出した。しばらく探索し、レッドウルフを一匹発見できて内心で喜んだ。


 だが、俺はとんでもないことを忘れていた。レッドウルフは群れで行動する魔物だ。一匹だけ見つけても、必ず周りに仲間がいるというのは冒険者界隈では常識である。



 それを思い出した俺は良かったが、戦闘に秀でていても知識が足りていないノノは、速攻で突っ込んでしまった。



「······覚悟」

「おいっ!待て!?」

「······何?」

「無闇にレッドウルフに近づくな!仲間を呼ばれ────」

「ウォォォォォーン!」



 俺がノノにそう告げた瞬間、俺達の存在に気づいたレッドウルフが遠吠えを上げる。すると瞬く間に俺達の周りを無数のレッドウルフが囲い込んだ。どこから湧いたんだと言いたくなるが、そんな場合ではない。絶体絶命の大ピンチだ。


 俺は未だ状況が掴めず呆然としているノノに耳打ちをした。



「······今は、とにかくこいつらを倒すことに専念するぞ」

「······わかった。足は引っ張らない」

「ああ、頼むぜ!相棒!」



 ノノにカッコつけてそう言うと、彼女は顔に微笑を浮かべて、そしていつもの様に気配を消して空間に溶けていった。そんなノノの姿を見届け、俺は気合を入れ直した。



「よし······いくぜ!」



 こうして俺は、双星絆ツヴァイとしての最初の試練となる、レッドウルフ達との乱戦に身を乗り出したのだった。





「でりゃっ!」

「ギャッ!?」



 突進の勢いそのままに、剣を目の前の標的目がけ振り切る。一瞬で体を真っ二つに引き裂かれたレッドウルフは、短い断末魔を上げて倒れ込んだ。



 間髪入れずに他のレッドウルフが襲いかかってくるが、瞬時に回避は間に合わないと判断し、剣で敵の噛み付きを抑え込む。


 ギリギリと甲高い音が響く中、更に別方向から他のレッドウルフが俺目がけてその大きな爪を振り下ろしてくる。


 しかしそれが俺に到達する直前、幻影より現れたノノのナイフに脳天を撃ち抜かれ、バランスを崩して倒れ伏した。


 突然の同胞の死に、俺と睨み合いをしていた奴が一瞬怯む。牙の力が緩まった瞬間を逃さず、俺は力一杯剣を振り切る。


 その衝撃をもろに受け、体をくの字に曲げたレッドウルフが吹き飛ばされる。それは数度地面に転がった後、静止してピクリとも動かなくなった。



 そうして最後の1匹がその体を魔石に変え消滅するのを確認した後、俺は剣を鞘に収めて大きく息を吐いた。



「本当になんとか······勝てたな」

「んっ······さすがに今のは、私も疲れた」



 互いに肩で息を切らしながら、途切れ途切れに言葉を交わす。魔石はどれくらいあるのだろうと思い、ノノから目を離して辺りを見回すと、そこかしこにレッドウルフの魔石が転がっていた。



 Eランク相当の魔物を、Fランクパーティーが数十体倒す。



 普通に考えたらありえない状況だ。まともに戦っていたりしたら数秒と持たずにひき肉にされていたことだろう。


 しかし今回は、どう考えてもFランク以上の実力を持つノノが援護射撃をしてくれたおかげで、俺は目の前の敵に集中することが出来た。それが逆に功を奏し、一匹一匹確実に標的を仕留めていくことが出来たのだ。


 つくづく不思議な奴だなあと心に思うが、すぐにそれを片隅に置いておいて、俺は一生懸命頑張ってくれた彼女に、労いの言葉をかけた。



「ありがとうな······ノノ。お前のおかげで勝てたよ」

「別にっ······シンだって頑張った······これは二人の勝利」



 俺の素直な賞賛に、頬を赤らめながらノノが答える。その可愛らしい姿を見て、俺はついふふっと笑みを零す。


 それを見たノノも、ニッと小さくはにかんで俺に笑みを返してくる。そうしてしばらくの間互いに笑いあった後、レッドウルフ達の魔石を回収し始めた。



「にしてもノノ······」

「なに?」

「お前そんな強いのに、なんでFランクなんだ?」

「っ······」



 俺がそう聞いた瞬間、急に彼女の顔が曇り、俯いてしまう。その様子を見て、俺は咄嗟にフォローをかけた。



「別に言いたくないならいいんだ。ごめんな」

「······今は言えない。いずれ、話すから」

「ああ。それでいいよ。さっきは悪かった」

「んっ······私も悪かった」



 そうして互いに謝ると、既に先程のような暗い雰囲気はなく、ノノはいつもの様子に戻っていたので、俺は肩をなで下ろした。



「まあとにかく、これだけのレッドウルフは凄いだろうな」

「E······もしかしたら、Dランクまで上がれるかも」

「ははっ。そうだといいけどな」



 俺が冗談交じりにそう返し、またノノが何かを言おうとした瞬間────。



 グルァァァァァァァァァッ!



 《始まりの平原》一帯に、とんでもない大きさの咆哮が響き渡る。その衝撃に一瞬固まってしまった俺とノノは、突如として現れた魔物の姿に目を奪われる。


 見た目は先程戦ったレッドウルフとほとんど同じだが、体の大きさは桁違いに大きい。しかも毛の色は普通の赤色ではなく、どす黒い赤色に染まっていた。


 大粒の涎をぼとぼとと垂らしながら俺達の目の前に現れた異形の存在に対して、俺とノノは同時に呟いた。



「「鮮血之狼ブラッド・サーベラス······」」



 俺達の呟きが聞こえたのか、Cランク最強モンスター鮮血之狼ブラッド・サーベラスは雄叫びを辺りに轟かせながら、低くわなないた。


 そして憎悪と憤怒を瞳に宿しながら、ブラッド・サーベラスは俺たち目がけて痛恨の一撃を見舞わんと、大地を踏みしめ激進してきた。





 その瞳の奥に、死と闇が垣間見えた瞬間だった────。

次回、ボス戦です

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