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理不尽なパーティー追放

新連載開始です!

 軽い倦怠感を感じながら、俺はふと目を覚ました。



 視界に入るのは木目の天井。眺めていると変な気分に陥りそうになる。俺は視線を外し布団をどけて体を起こした。そして己の思考を活性化させる。



「そう言えば······何があったんだっけ······」



 こんな朝っぱらから爆睡をかましていた理由を、自分でも考える。するとだんだんと意識が覚醒して、同時に昨日の出来事を思い出していく。



「ああ······確か俺は······あいつに······」



 そう呟きながら、俺は昨日の出来事を頭で反芻した────。







「悪いが、お前にはパーティーを抜けてもらう」

「······は?」



 開口一番に、リーダーのグラノが俺にそう告げた。俺は彼の言ったことが理解出来ず、瞬間的な硬直に陥る。俺の動揺を見据えながらグラノは続けた。



「お前も······少しは心当たりがあるんじゃないのか?」

「心当たり······俺がこのパーティーから追放される······?」

「そうだ」



 そう言われ俺は頭の中でそれについて考える。何なのだろうか。戦闘に参加しないことか?作る料理が不味いことか?俺一人分の食費が無駄とかか?


 そこまで考えるが、全部違うなと俺は考えを断ち切る。


 よくよく考えれば俺はただの荷物運びだから戦闘に参加しないのは当たり前だし、料理だって皆美味しいと言ってくれていた。最後に至ってはもはや論外だろう。



「いや、そんなのないな」

「······本気で言ってるのか?」



 なぜかグラノが苛立ちを顔に浮かべて聞いてくる。そんな表情されても、心当たりがないのだから困る。俺は苦笑いしながら彼に返事を返した。



「本気だ。全くもって心当たりがない」

「······ふざけるな!」



 そう言ってグラノが自分の前にあった長机をダンッ!と叩き、座っていた椅子を蹴飛ばして立ち上がる。そして俺に詰め寄り唾を飛ばしながら怒鳴った。



「お前が碌に戦闘に参加しないせいで、俺達はいつも苦戦を強いられているんだ!マノンもスタリカも、いつもお前に愚痴を言ってたよ。あのウスノロがってな!」



 グラノに言われ、俺は他の二人のパーティーメンバーを思い浮かべる。




 マノンは女魔法使いだ。類まれなる魔力を持っているが、使える魔法に偏りがある。極端な話、火魔法が使える代わりに氷魔法が使えないという感じだ。


 笑顔を絶やさない朗らかな性格で、彼女はグラノに誘われこのパーティーに参加したらしい。



 スタリカも女で、職業は武闘家だ。超人的なスピードと体力を持っているが、一発の威力は軽い。一番得意な戦法はラッシュ&アウェイと言っていた。


 彼女は基本的に冷静沈着だが、時折見せる笑みや恥ずかしがっている顔は途轍もなく可愛い。案の定この勇者に誘われて俺達のパーティーに入ってきた。



 補足するなら、マノンはペったーんでスタリカはぼいーんだ。······何がとはあえて言わないけどな。そして今も俺の目の前で怒りを露わにしているこの男勇者は······



 率直に言うと屑野郎ゴミだ。どこら辺が屑かと言うと、まず俺と他の二人に対する態度が明らかに違う。俺には罵詈雑言を浴びせてくるくせに、マノンとスタリカにはめちゃくちゃ甘い。というか全て許容している感じだ。



 それだけならまだいいが、彼は戦闘時以外、ずっと彼女達の体をチラチラジロジロと見ている。特にスタリカに向かって、下卑た笑みを浮かべながら。



 それに気づいた時、俺は「ああ、こいつはそういう奴か」と思った。実際に被害者二人マノンとスタリカに何度も相談されたことがある。勇者の視線が気持ち悪いので、注意して欲しいと。



 その度に頼まれた俺は奴に言ったが、まるで聞く耳を持たなかった。その時点でもう俺はグラノに対する関心を失った。ほかの二人も失望して、自分からグラノに話しかけなくなった。




 本気で奴の屑さを語ろうと思えば一時間は語れるが、この辺りで割愛しておこうと思う。俺はグラノに向き直り反論を口にした。



「俺は元々戦闘能力は高くないし、だからこそ皆と相談して荷物持ちになったんだ。それなのにその言い方はないだろ」

「黙れ! 戦闘にも参加せず飯にありついてる奴を役たたずと言って何が悪い!」


「その料理は俺が作ってるんだけどな」

「戦闘で疲れる俺達の為に作るのは当たり前だ!その飯だって不味いのを渋々食ってやってるんだぞ!」



 ああ言えばこう言う。このままでは平行線だなと思い、俺はもううんざりしてきたので奴に言ってやった。



「そこまで言うんだったらこっちからやめてやるよ」

「ああそうしてくれ!このゴミ!役立たず!」



 グラノにそう言われながら、俺は部屋を後にしようとする。すると奴から再度声がかけられた。



「衣類とその安っぽい袋以外、全部置いていけよ?」

「······防具も金もか?」

「当たり前だろ。さっさとしろ」



 フンと鼻を鳴らす奴を尻目に、俺は身につけていた防具、持ち合わせの銀貨銅貨しょじきんを全て部屋の床に置いた。それを見てグラノが満足そうに満面の笑みを浮かべる。



「お前の仕事は終わった。さあ出てけ!」

「······わかったよ。じゃあな」



 そう言って俺は部屋から出て、扉を閉めた。ギィと音がなり、直後にバタンと閉まる音がし、カチャリと鍵のかけられる音もした。その瞬間に俺はもう歩きだし、宿泊していた《青の羽根宿》を後にした。



 そして俺は、所属していた《戦火の誓い》から脱退した────。







 意識が現在に戻り、再び宿泊している部屋の光景が目に入る。そして俺はふと心に浮かんだことを呟いた。



「あいつ······マノンとスタリカを独り占めしたかっただけか」



 よくよく考えればそうである。そもそもあの二人が俺に対してウスノロなんて言うはずがない。多分。


 結局はグラノが自己中だったという事だろう。まあもう俺には知ったこっちゃない。二人には申し訳ないと思うが、俺もあんな居心地の悪いところにはいられないしな。



 そうして思考に区切りをつけ、俺は朝の支度をして、美味しい泊まっている宿屋の朝食を食べることにした。



 ちなみに有り金を奪われたが、なんとか一日分の宿代だけはグラノに頼み込んで確保することが出来た。もちろん彼等とは違う《赤の鱗亭》という宿に止まっていた。


 それなりに施設の整った宿で、一人で俺が尋ねてきた時も受付の女の子は、怪訝そうな顔もしないで案内してくれた。その当たり前の好意に昨日の俺は泣きそうになっていたことも思い出す。



「さて······とりあえず今日は冒険者ギルドに行くか」








 そして後払いの宿代を払って《赤の鱗亭》を後にし、生活費を稼ぐ為に俺は冒険者ギルドに向かった────。


自分にとっての2作品目スタートしました!

処女作での失敗や反省を生かしてより良い作品に

していきたいと思います!よろしくお願いします!


今日は23時頃にもう1話投稿します。

基本的に隔日投稿になるかと思います。

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