第85話 私が貴方をどれだけ愛しているか貴方は知らない
―― 孤児院 テイコクダイカンゲイ ――
「……ですから、ビーツ様はこの町の発展のため帝国の技術を取り入れたり、町の税収を上げるために帝国と交流をしているのです。
もちろん、奴隷の密売や麻薬等はビーツ様も禁止しているはずなのです。
まさかヒートがビーツ様に隠れて帝国と取引をしているなんて許せませんよ。
でもあの人は身内には優しいから許しちゃうんだろうなぁ。
知ってました? ビーツ様って照れると頭を掻いちゃう癖があって可愛いんですよ。
でもそれを指摘すると『ダンカン、バカヤローっ』て笑いながら怒るんです。
私はダンカンじゃないって何回も言ってるのに直してくれないんです……だけど、私が落ち込んでるときとか、気づいたら近くで見守ってくれたり、相談に乗ってくれたりしてすごく優しいんですよ。
ビーツ様って時空魔法?が使えるみたいでこの孤児院って外から見ると2階建なんですけど、実は内部は4階か5階くらいまであるんです。
それから部屋の中なのに美しい風景を作り出してそれを映像の魔道具で撮影して物語を作れるんです。
暴力的で怖い話も多いんですけど夏をモチーフにした物語のときとか私、泣いちゃって……。
ねっ、すごいでしょ、ビーツ様は違うって言ってたけど絶対、時空を操れるんですよっ!! あっ、時空魔法のことは二人の秘密でした。えへへ。
だから町長の執務室にいるときもあれば院長室にいることもあるのですよ!
まさに神出鬼没っ!それから……、あ、着いちゃいましたね」
『ここに着くまでの間、ずっと止まりませんでしたね……』
「さっきの受付の男をランスと会話しながらワンパンしてたっす」
(まあ、おかげで町長は話せば分かる人かもって思えるくらいには理解できたわ)
「えと、ユーナちゃんはどうして今日は町長が院長室にいるってわかるの?」
「えっと……愛のなせる業ですかね。えへ。」
「ビジネス彼女が何を言っ――これはもう愛のなせる業っすね。」
ユーナはアーリーにだけ器用に殺気をぶつけたが、アーリーが素早く言葉を軌道修正したため気を取り直してにっこりと笑いかけた。
「(アーリーちゃん、ギルドの受付してる女の子って元冒険者とか暗殺者とか腕っぷしの強い子が多いんだから言葉には気をつけてね)」
「(そういうのは早く言って欲しかったっす)」
「この世界で乙女発言を否定することは万死に値するのよ」
「ひぃ、ランスまで厳しいっす!」
「あ、それと今日は大事な用があるから院長室に行くって言ってました」
「(そっちの情報……何でもないっす!)」
ユーナはただアーリーににっこりとしただけだ。
『大事な用で院長室に行くのはなぜでしょうか』
「忘れ物かしら? うーん、分かんないわね。
それで……ユーナちゃん、院長室に行くには本当にここから入るのね?」
「はいっ! ビーツ様はフリーパスで行けますけど私たちが入るためにはいくつかの試練を越える必要があるんです。」
『どれだけ来てほしくないのか……』
ユーナの案内でランス達は2階にある扉の前に来ていた。
『院長室はこちらから』という矢印と、扉にかけられているプレートに一文が書かれている。
―――― 風雲ビーツ城へようこそ! ――――
天を突きそびえ立つこの城を、人は『ビーツ城』と呼ぶ!
今まさにこの城をめぐって壮絶なる戦いの火蓋が切って落とされようとしていた!!
『やるんですか?』
(やらないわよっ!)




