第77話 神話級の槍、その名も『 』
―― キターノの町 郊外 ――
黒ずくめ集団のリーダー格が前に出る。
「頭巾から見える赤い眼、子どものような背丈……ティラだな!」
「そうだよ。だとしたら?」
「死ねっ!」
──ギインッ!!
「ちょっと! まだ私たちがティラちゃんと話してるんだけどぉ」
リーダー格の男の刃を止めたのは銛のような形状の穂先をした赤い槍だった。
「なっ!?」
「リーダーの一撃をとめたっ!?」
「嘘だろ!?」
「槍使いかっ!!」
『それ……久しぶりですね』
(ちょっと待ってね、まだセリフあるから)
「それにこんな小さい子を何十人もの大人が寄ってたかって恥ずかしくないのかしら?」
「そこの槍使い、そいつは見た目と違って獰猛で残忍だ! それに魔族だぞ!」
「魔族かどうかなんて関係ないわね。それに純粋なだけよ」
「ねぇ、おネエさん。この人達は僕のお客さんなんだけど?」
「うーん、ティラちゃんはこの人達を殺しちゃうでしょ?」
「いくら魔族が強いといってもこの人数には勝てんだろう」
「強がりかよ」
「ガキがっ!」
「僕を殺そうとしてるんだから殺さないとダメだよね?」
赤い瞳が血の色に染まる、ティラの体から殺気が膨れ上がる。
「「「「「「 うっ!? 」」」」」」
「ほら、殺気だけで失神しちゃう子がいるくらい弱いんだから……ティラちゃんがやるとオーバーキルしちゃうからダメ」
「えー、やだよ。殺させてよー!」
「今は私がティラちゃんの雇い主よ! 小さい子に殺しなんてさせないわ!!」
「おい! 貴様ら、さっきから好き勝手に言ってるがこの人数でなんで怯まないんだよっ!?」
「「 弱いからっ! 」」
「「「「「「 なんだとっ! 」」」」」」
『二人して煽ったらダメでしょ!?』
「……リルガも殺りたい」
「ぎゃー、リルガまで怖いっす!」
『リルガさん、殺気にあてられましたかね』
「あーもぅ、リルガちゃんまで。
ティラちゃん、ごめんなさい。
うちの子に人殺しはさせられない。
そんなわけでぇ、お先にっ!! お掘りなさいっ『ゲイ・ホルヨ』っ!!」
「おネエさん、ずるいよっ!」
「……あっ!」
ランスが槍を振るうと穂先から棘が飛び出し黒ずくめの集団に襲いかかる。
「「「「「「 アッー!! 」」」」」」
全員がお尻を押さえながら悶絶している。
「お、おネエさん、何をやったのさ!?」
『何ってお尻に棘をさしただけネ、相棒、久しぶリ。もっとワタシ使えヨ』
「武器がしゃべったっす!」
「自我のある武器って神話級だよね? おネエさんって何者なのさ?」
「私が何者って乙女の秘密だから教えないわよ。うふ」
『相変わらズ、相棒はきもいネ』
「ホルヨちゃんも相変わらず言葉にも棘があるわねぇ」
「あ~あ、なんだか殺る気なくなっちゃったぁ。
さすがにお尻を押さえてる人は不憫すぎて殺せないや」
「そお?良かった。さて、リルガちゃんも落ち着いたらこの人達を縛るの手伝ってね?」
「……すぅ、はあぁ~。ごめん、落ち着いた」
「リルガは落ち着いたっすけど、しゃべる武器とか不気味っすね」
『羽タヌキのお尻もホってやろうカ?』
「ひい~! それは嫌っす!」
アーリーはランスの頭に飛び付いた。
『相棒に取りついたってホれるヨ』
「ホルヨちゃん、やめて。教育上も良くないわ」
『ふン、久しぶりにいっぱい人をホれるのなら羽タヌキは見逃してやル』
「もう! そんなに暴れたいんならこのあと好きなだけ暴れていいわよただし、生きて捕まえることっ!! いいわね!」
「なんでおネエさんがそこまで人を殺したくないのかわからないけど、僕のお尻に棘なんて刺されたくないから約束するよ」
「……リルガもお尻はやだ」
「刺さないわよっ!」
とりあえず黒ずくめ集団は縄で縛って外壁にぶら下げて、ランス達は町に戻ることにした。




