第67話 ランスの帰宅
―― ランスの家 ――
「あー、重てぇなっと!」
──とさっ
乱暴な言葉とは裏腹にゴランはランスを居間のソファーに優しくランスを下ろした。
「乙女に重いとか言わないでよぉ~」
「あー、ランスちゃん、お帰りー♪ ゴラン、宰相様はー?」
「メリッサか、二人のこと助かった。バシャーマ様は久しぶりに熟睡されていらっしゃった」
「二人とも良い子だから楽しかったわー♪
バシャーマ様が熟睡してるなんて何年ぶりかしらねー、うふふっ」
──ぶるぶるぶるぶるっ!
「だから水がこっちにかかるっす!!」
「ちょうどお風呂から上がってきたわねー、二人とも、ランスちゃん帰ってきてるわよー♪」
──しゅたっ!
「……ランス! お帰りっ!!」
「まだ話終わってないっすよ! ランス、戻ってきたっす!」
「ただいま~」
ランスはソファーに横になったまま二人に手を振った。
「疲れてるっすか?」
──がしっ! ぶんぶんっ
リルガはすぐさまアーリーを掴んでランスの頭の近くでふりかけをかけるように上下にぶんぶんっと振りだした。
「やっめっろっすっうっうぅ!!」
「……ふけをかけるの!」
「ふっけっじゃっ! ねっすっうぅ!!」
「リルガちゃん、ダメよー!
鱗粉はアーリーちゃんがかける気がなければ落ちないのよー」
──ぴたっ
「うー! ひどい目にあったっす。ランス、鱗粉かけるっすよ」
「……アーリー、ごめんなさい」
「もういいっすよ。リルガも心配してのことなのはわかるっすから」
「……ありがと」
「あー、そろそろいいか?
ランスなんだが、明日は少し変かもしれんが明後日には戻ってるからな?」
「ゴランの説明だと足りなすぎよー」
「……美徳の反転?」
「おっ! そうなんだ、ほら、リルガには伝わってるだろう」
「アーリーちゃんには伝わらないでしょー!」
「ランスの不思議人格なら知ってるっすよ。」
「そういう理解なら、そうだな。新しい人格に会えるかもな」
「ふーん、楽しみっすね」
「ハードル上げないでぇ~」
「……キンは?」
そういえば念話が来ない。
「勤勉眼なら燃え尽きてるから明後日までいないと思ってていいぞ」
「うふふ、一生懸命に頑張ったのねー。ホント真面目すぎー」
「おかげで、バシャーマ様……、いや王国全体が助かってる」
「なんかよく分からないっすけど、ランスって偉いんすね」
「……ランスすごい」
「まあ、明日までメリッサが来るから心配することはないがな」
「もー、私ここに住みたいー♪」
「メリッサ! ダメだぞ、その、ほらアーたんも俺も寂しがるというか……」
「もー、冗談よー! 惚れすぎー!!」
「……ラブラブ」
「あー、くそ! 俺は先に帰るぞ」
頭をぽりぽり掻きながらゴランは帰っていった。
「嫁を置いてくとかないしー! 私も帰るねー♪ みんな、おやすみー」
「おやすみっす」
「……おやすみ」
しばらくランスが起きないかと待っていたが、いつの間にかリルガはランスのそばで寝てしまっていた。
ちなみに、アーリーはリルガのもふもふしっぽを抱き枕として使っている。