第66話 ゴランとタケトリの異世界式ブートキャンプ
―― ザナイト騎士団 訓練場 ――
異世界式ブートキャンプ 初日
「よっし、早速はじめるか!」
「はい、よろしくお願い致します。ところで訓練は私だけなんですか?」
「ああ、タケトリのスキルを最大限に活かすにはマンツーマンがいいと判断した」
「団長直々にご指導くださるとは恐縮です」
「いいんだ、俺の仕事はランスがやってくれるから恐らく3日ぐらいか、この間に騎士達の訓練に参加できるように鍛えてやる。
では始めるが……、タケトリ、お前の強みはなんだ?」
「強み……ですか。毒に強い、空腹でも大丈夫、死なない。
努力はしていませんが、努力が実になりやすいですかね」
「そうだ!継続は力なり、このスキルは素晴らしい。
これから3日間、死ぬことのないタケトリには色んな状態異常耐性をつけてもらう。と同時に体力増強の走りこみ、騎士としての心得、タンクとしての大楯の使い方、この世界の知識、言葉遣い、全て叩き込む。
いいか? お前はこれから戦士だ、泣き言は許されない、これからタケトリが使っていい言葉は『オーイエスっ!』だ!!」
「あの? 私、おっさんなんでもう少しソフトな――――」
「黙れ! もう返事を忘れたかっ!!」
「ひいぃっ、…………おーいぇ……」
「声が小せぇっ!!」
ゴランが腰に差していた見るからに禍々しい魔剣を抜く。
「この剣はな、斬られると毒、麻痺、石化、痛覚強調、眠り等の状態異常になる。次、返事を忘れたら……斬るっ!!」
(あああ……、ランスさん……これって怨んでいいですか?)
据わった目で睨み付けられたタケトリはちょっぴりお漏らししている。
「返事が聞こえんな……」
「(ひっ!)オーイエスっ!」
「いざ……参る!!」
スペシャルメニューが始まった。
異世界式ブートキャンプ 2日目
初日に聞こえていたタケトリの悲鳴や泣き声……そしてか細いオーイエスっ!の声は次第になくなり、2日目の昼頃には元気なオーイエスっ!!に変わっていた。
「麻痺しなくなってきたか?」
「オーイエスっ!」
「この世界の成り立ちだがな?」
「オーイエスっ!」
「走れええぇぇぇっ!!!」
「オーイエスっ!」
「騎士の心得とはっ!!」
「オーイエスっ!」
「飯を食ええぇっ!!!」
「ふがっぶぇす!」
「ウォーターバインドっ!」
「ぐぼぼ……ぇず!」
「石化をはじけえぇ!!!」
「オーイエスっ!」
「走れえぇぇぇっ!!!」
「オーイエスっ!」
「大盾構えっ! 突撃ぃ!!」
「オーイエスっ!」
「飯を食ぇっ」「ぼっぶぇす!」
「ファイアウォールっ! 突っ込めえぇ!」
「んばぁ、あづぇす!」
「走れぇっ!!!」
「オーイエスっ!」
「眠りはいらないなぁー!?」
「オーイエスっ!」
「また飯を食えぇっ」
「ふごっべぇす!」
「それじゃ走れええぇぇぇっ!!!」
「オーイエスっ!」
タケトリのチートを最大限に利用した異世界式ブートキャンプ食事付き、三日間で立派なゴリラに成長できます。
異世界式ブートキャンプ 3日目 夕方
──コンコン!
「なんだぁっ!!?」
殺気がみなぎっているゴランと怪しい目をした筋肉ぱっつんぱっつんのゴリラが同時に騎士を見た。
「ひっ!団長、宰相様がお呼びです!」
「んなぁっ、そうか、すぐ行く。それとグンソを呼べ」
「はっ!」
「タケトリっ、この3日間、よく耐え抜いた!!」
「オーイエスっ!」
「この地獄の訓練に耐え抜いたお前ならこれから先、どんな地獄でも耐え抜けるだろう!!」
「オーイエスっ!」
「よし、俺は用事が出来た。これからは応用トレーニングについてはグンソに任せる!返事は同じだ!!」
「……オーイエスっ!」
「なんだ! 今の間はっ!?」
「オーイエスっ!」
「よし、グンソが来るまで走れええぇぇぇっ!!!」
「オーイエスっ!!」
──ドドドドドドっ
ひたすらグンソが来るまで走り続けるタケトリの心にはランスへの感謝の気持ちが芽生えていた。
精悍な顔つき、年齢を感じさせない肉体、健全な精神、もうオセロを売ることはないだろう。
この後、タケトリはザナイト騎士団の副団長となりゴランの右腕として活躍していくことになるかもしれない。
名前:【タケトリ】
年齢:41歳
称号:異世界人 勇者候補 Gorilla
欲しがり屋
能力:異世界共通言語
収納(体重×3倍)
大盾の才能
自然回復(強)
自己再生(弱)
野生の感
威圧(弱)
状態異常無効 ※複数の耐性が統合されました。
継続は力なり
不死身
加護:女神ガデス 男神マッスル