第3話 ゴリラはとりあえず騎士団に丸投げる(物理)
―― 変態貴族の屋敷 ――
──ドカーン ズゴーン バキーン
現在、ヘッチョンの屋敷の壁はゴリラの形の穴が空いている。
ゴリラが扉ではなく、壁を突き破っているからだ。
ちなみに、護衛を含む使用人達は既に玄関口です巻きにされている。
「これかっ!!」「んじゃ、ここかっ?」「証拠は一体どこなんだよっ!!」、ゴリマッチョの探し物は続く。
『マスター、このままでは屋敷が崩壊しちゃいますよ』
しかし、頭の中の声、キンがマスターと呼ぶゴリマッチョは聞く耳を持たない。
「うっ!ボクはいったい……づぅっ!腕が痛いっ!」
脂身が目を覚ましたとともに痛覚もカムバックだ。
「うっせぇ!ああ、ちょうど良かった。お前が隠してる裏帳簿はどこだ?命が惜しければさっさと話せ!!」
「うう……、なんでボクが……いだだだっ!わかった!!話すから。えっと、二階に書斎の隠し扉、右から二番目の本を引くと……」
「めんどくせー、物理ジャーンプ!!!!」
──ゴガンッ! ズゴンッ!!
「ああっ!ボクの屋敷がぁ。さっきそこに階段があったじゃないか……」
「時間ねぇんだよ!ここか……、えっと本棚をなるほどっそいっ!!」
「もう!、せっかくのギミックが!棚ごと壊すなんてズルいぞっ!!」
「あった、あった。ん?、まあ、見つかったからいいんだよ。それじゃ、次いくぞっ!!」
『やりっぱなしですね、屋敷が崩れそうです。先に蓑虫達を安全な場所に転がしてください』
(わかったよ!)
「お譲ちゃん、今から騎士団のところに行くけどついてこれる?」
──こくっ!
「んじゃ、このまま行くぜっ!!おらおらおらおらおら……」
わっ!きゃあっ!!ゴリラっ!!キツネっ!?
近所の住民は大騒ぎだ。
『マスター、もう少し周囲に気を配ってください』
(細けぇことが苦手なんだよ!知ってるだろうが!!)
『はあ……、あとでゴランさんに嫌み言われても知りませんからね』
(ぐぬぬっ!そうだ!ゴランに会わないで騎士団に渡す名案を思いついたっ!!行っくぜぇ、物理バシル●ラっ、うりゃあっ!!)
──バヒューン バヒューン バヒューン
『……やめた方がいいですよ。って、やっちゃった!』
「……飛んでいく」
『はぁ、お嬢さん、どうやら用事が終わったようです。今からマスターの家に案内しますから、ついてきてくださいね』
「……星になった」
さて、話は二人が家路に向かう少しだけ前にさかのぼる。
―― ザナイト騎士団 ――
うわーっ!ゴリラだっ!!またゴリラが出たぞぉー!!
きゃー!危ないっ!!
「ゴラン団長、失礼します!少しご報告が……」
若い騎士が団長の執務室を訪れた。
「それは、外が騒がしいことと関係しそうだな、はぁ……」
団長と呼ばれた壮年の男性ゴランは、がっしりした体型に精悍な顔つきで王都でも一部の男性に人気があるのだが、今夜は一段と疲れていて少しやつれていた。
「はっ! 謎のゴリラがヘッチョン様のお屋敷を襲っていると現場の見張りから報告がありました!」
「おぅ、謎のゴリラ……ねぇ。それで?」
「はっ、我々も秘密任務中でしたので踏み込むわけにもいかず、様子を見ておりました。しばらくするとゴリラが屋敷からヘッチョンを担いで飛び出してきまして……」
なるほど、それでこの騒ぎか。
ゴランは納得すると同時に苛立ちを感じた。
「それで……、そのゴリラはヘッチョンをどうしたんだ?」
「その……、それが…………」
「いいから、言ってみろっ!!」
「はっ!我々の詰所に向けて投げたと報告がっ!!」
「はぁ?おいっ、防護結界を柔らかめに張れ!それから治癒術の長けてる奴を集めろっ!!急げっ!!!!」
「はっ!!」
はぁ、ランス……てめぇ、やりすぎだろ。
団長のぽつりと呟く声は誰にも拾われなかった。




