第20話 王都冒険者ギルドは職業斡旋会社としてはかなりの格が上なんですよ
―― 王都冒険者ギルド ――
早朝、一通りの依頼を受けて冒険者達が出勤したあとのギルドは落ち着きを取り戻している。
「これぐらい空いているほうが入りやすくていいわね」
「ランス様っ!」
ガタッと立ち上がってランスを迎えたのはギルドの受付嬢ビージンだった。
「あら、ビージンちゃん、お久しぶりね。相変わらず美人よね。」
「そんな! ランス様こそいつもお肌艶々で羨ましいですぅ」
「お、ランスじゃねぇかっ! ちょっと訓練付き合えや」
「ベアーちゃん、元気? 訓練は汗臭くなるから嫌だわ」
「けけけっ、ベアーの奴ふられてやがるぜ」
「女にも男にもモテねぇなぁ!」
「違いねぇっ!」
「「「「 ぎゃははははは 」」」」
「て、てめぇら! だいたい俺はランスを口説いたわけじゃねぇよっ!!」
野次に煽られて熊が暴れている。
──きゅっ
「(大丈夫よ、リルガちゃん。みんな、言葉はアレだけど悪い子はいないのよ)」
少し身を固くしたリルガに優しく教えてあげる。
──ぎぃっ
「へぇ、ここが冒険者ギルドか!」
黒い髪色……、ランスの髪は少し青みがかっているのだが、この少年は真っ黒な髪が乱雑に伸びていて、幼い顔つきを隠している。ただ、髪の隙間から覗く黒い瞳は自信に満ちあふれているようだった。
『マスター、この子は面白いですよ』
(自分だけで鑑定しないでくれる?)
「おいおい坊主、ここはお前みたいな子どもが来るとこじゃねぇぞ?」
「やめとけベアー、ガキにまで嫌われたら立ち直れないだろっ?」
「坊や、道に迷ってんなら騎士様んとこまで連れてくぜ?そこの熊が」
「「「「 ぶははははは 」」」」
「テンプレ乙、うっせぇよ、てめぇら! 俺はここに用があってきたんだよ!」
「あぁ? 坊主は口の聞き方がなってねぇんじゃねぇか?」
少年はベアーの話を無視して受付のビージンに近づく、近くにいるランスの顔を見て一瞬ぎょっとした表情を見せたがすぐに不敵な笑みを浮かべてビージンに話しかけた。
「なぁ? あんた、受付だよな? 冒険者の登録を頼むわ」
「……へっ? あっ、はい。申請書はこちらです。
登録は15歳からです、それと代筆は必要ですか?」
「いや、その辺はだいたい大丈夫だ」
「おい、何を無視して――――」
「やめとけベアー、それにそのガキはまだ未登録だろ、一般人に何かすりゃ騎士が飛んでくるぞ!」
「それより『王都デビュー』かよ、王都の冒険者も舐められたもんだなぁ」
王都に寄せられる依頼は、王族や貴族がお忍びで頼むこともあり、大商人や商業系ギルドの依頼など難易度の高いものが多いため、新人冒険者はまずは近くの町や村で登録してランクを上げてから王都に来ることが多い。
王都デビューとは、なんの実績もなく王都で登録をする冒険者のことをからかって言う言葉であり、類義語として、学園中等部では大人しい真面目な子が高等部を機会に不良ぶる『今日からヤンキー』という言葉がある。
ざわつくギルド内で、少年はマイペースに申請書に必要事項を書き込んでいた。




