第2話 ゴリラとキツネっ子の話
―― 変態貴族の屋敷 ――
「なっ!?なんだ貴様はっ……!!この部屋はドラゴンが乗っても壊れない--」
脂ぎっしゅヘッチョンは部屋の頑丈さを説明しようとした。
「うるせぇっ!!物理シッペアタック!!」
ゴリマッチョの2本の太い指がヘッチョンの腕を襲う。
ぺきり、乾いた音が部屋に響いた。
「ひぎゃあああぁぁぁ……!腕がっ!ボクの腕が折れてるよおおぉぉっ!!!!」
「安心しろ、峰打ちだ。」
刀についた血を払う仕草でゴリマッチョは満足そうに言った。
『いや、折れてますよ。残念ながら壁ほど頑丈じゃないようです』
あとでわかるが今は謎の声である。
「……あ……なた…………誰?」
キツネっ子少女はなんとか言葉を発した。
「あーい、おいたんはキミを助けに来たんでちゅよー♪」
ゴリマッチョは変顔……本人的には最大限に優しい顔をしたつもりで、キツネっ子少女に赤ちゃん言葉で話しかけた。
『正直ドン引きですね』
「ひぐうぅっ、おい、ボクにこんなことしていいと思ってるのかっ!!」
脂ぎっしゅヘッチョンは痛みで涙を流しながらも侵入者に抗議を入れた。
「あ? うっせー、天狐族は古の契約で奴隷にしてはならない。って決まってるだろうがっ!!たくっ!こんなところに隠しやがって。命を取らないだけマシと思えっ!!!!」
さっきの変顔に比べると鬼である。圧倒的な威圧感。
「ひぃっ!あ……」
ヘッチョン(脂身)は恐怖のあまり言葉が出なくなった。
『あらら、威圧するから……』
「おっ!壁を壊したから魔力が戻ってきたんでちゅね。でもまだ魔力が回復するまではじっとしているんでちゅよ」
──びくっ
キツネっ子少女は変顔の男に警戒している。
『マスター、天狐族の子がその話し方だと逆に警戒します。もう少し普通に話してくださいよ』
(だから怖がらないように優しい言葉をかけてるんだろうが! もういいキンに任せる)
『……わかりました。それではマスターはそこのお漏らし貴族の処理をお願いしますね』
(うげっ、漏らしてるじゃねぇかぁ。あー分かった、早く話つけろよ)
『お嬢さん、こんばんわ。今、お嬢さんの頭に直接話しかけています。頭の中で返事をしていただければ口を開かなくても大丈夫です』
『……あなたは誰?』
『僕ですか?うーん、その説明は長くなりますので、とりあえず状況説明をさせてください』
──こくこくっ
『端的に言いますと、お嬢さんを助けに来ました。そこのお漏らし貴族はマスターが縛って騎士団に突き出します。あ、マスターっていうのはそこのゴリマッチョのことです』
(うっせぇ、仕方ねぇだろがっ!!)
『……あなたはどこ?』
『あー、えっと。ゴリマッチョの中にいます。ま、難しいことは置いておきましょう』
『……わかった』
『はい。では今からのことですが、まずお漏らし貴族は……今ぐるぐる巻きにしていますね。
次にお漏らし貴族の悪事を暴くため証拠を探します。
最後にお漏らし貴族を証拠と一緒に騎士団に突き出します。
お嬢さんはどうしますか?騎士団であれば保護してもらえますが?』
『……騎士団は嫌だ』
『ふむ、では家族の元までお送りしましょうか?』
『……家族はいない。行くところもない』
『おやおや……、困りましたね。
うーん、時間もあまりないことですし、一旦、マスターの家に来ますか?』
『……………………………………お願い』
『わかりました、では急ぎましょう』
これはマッチョなゴリラと美少女もふもふキツネっ子のハートフルな物語……になるかもしれない。




